第3話 もう、怒ってよ。
食事を終え、せめて後片付けはさせてと水無月は言うので任せた。神楽坂
ここで、お皿数枚くらい割るだろうと期待したが、期待外れ。
いや、ここは何枚か割れよと思うのは俺だけだろうか。
そういう意味でも残念彼女なのかも。いや、なに方面で期待してるんだ。
リビングでテレビを見ながらソファーに座る。
我が家は生活環境がバラバラ。家族全員がリビングに揃うのは週に数分。
仲が悪いわけではない。生活の時間帯が違うのだ。なので、ソファーも小さめの二人掛け。
そこに水無月と座るものの、近いし彼女の芽衣と比べて中々ボディータッチが多い。
膝をくっつけたり、肩を触ったり、ちょんちょんみたいな。
あの、気軽に童貞にそういうのやめてください。
スキなのかって思っちゃいます。彼女はいる。でも、女子とか恋愛に免疫あると思わないでね。
油断したら水無月のシャワーシーンを妄想してしまう。なのに会話がきわどい。
「ねぇ、ねぇ〜〜優斗。白鳥とチューとかする?」
「えっ?」
「チューよ、チュー! キス! この場合ベロチュー推奨なんだけど……」
「べ、ベロチューですか?」
何故に敬語。いや敬語にもなる。
チューなんて上級市民が許されることで、ベロチューに至っては天上人もしくは都市伝説に過ぎない。
ロマンスではない、童貞にとってはむしろオカルトに近い。
「どう、どう、どうなの?」
「いや、してると思うの?」
「うん!」
「してないですが」
「隠してる?」
「残念ながら」
「そうなんだ〜」
「そっちは」
「えっ⁉ うち? いやそれ個人情報っていうか……ないです。してないですが? したことないですけど? だからなに?」
なんかわからんけど、半ギレ風に答えられた。そして最終語尾強め!
「優斗、じゃあ誰かとならある? だまってるから白鳥以外で!」
「ないよ、芽衣としか付き合ったことないし、中3からだから」
「中3からでなんでチューしてないのよ! チュー3回くらいしなさいよ! 中3なんだから!」
「ダジャレ⁉ しかもなんで怒ってる?」
「いや別に怒ってないけど、ごめん。ちょいムキになったわ(笑)実は経験ないし、聞きたいけど、誰に聞いたらいいかわかんないし『優斗ならやってんじゃね? チュー!』みたいな?」
「なんで俺が人選された」
「えっ、だって白鳥の彼氏だよ?」
「だから?」
「白鳥めちゃくちゃ人気あるじゃん! その生存競争を勝ち抜いた優斗さんがキスのひとつやふたつやってんでしょ! になんない?」
確かに芽衣は人気がある。
ダウナー系とでも言おうか。愛想があそこまで悪いのに、どうやって人気を獲得してるのか。
いや、本人は全く人気を獲得しようなんて気ない。実際知れば知るほど、愛想が悪い。
付け加えると取っ掛かりが最悪なくらい悪い。
ワザとじゃないにしても、そこまでつっけんどんにしないとなの? と正直思う。
話が
いや、何がってそりゃ胸なんだけど、実際のサイズより大きく見えた。
それはそこそこやせ型だからだと思う。ちなみに実際のサイズとか偉そうに言ったが、見たことがあるワケじゃない。
勇気を振りしぼって聞いたら案外簡単に教えてくれた。
「一応『D』だけど?」
それが中3の話。もしかしたら、それから育っているかも知れない。
確か俺はその時いいリアクションをしたはずなんだけど「どこがいいの?
肩凝るだけ。体育とか見られて嫌なんだけど……」走ったら揺れるワケね。とこれまた、つっけんどん。
まぁ、そこもいいんだけど。
そういえばその時、芽衣が言った。
「どれだけ重いか持ってみる? 笑うよ」と。
もちろんお言葉に甘え持たして貰った。重いというより感無量? 重量感は確かにあった。
服を着ていたとはいえ、背中から持ち上げる感じで。芽衣は「重いでしょ、嫌になっちゃう……」と溜息をついた。
そんなに重いならしばらく持ってようかと言うと「瀬戸くんもそんな冗談言うんだ」と一笑。
「まぁ、なんにしても水無月のご期待には沿えないよ。経験ないもんはないから」
そう答えたと同時に『まいん』の着信を知らせる呼び出し音が鳴った。俺のケータイじゃない。水無月のケータイだった。
画面をチラ見すると神楽坂からだった。言わずと知れた水無月の彼氏で、俺の友人、そしてサッカー1年生エース。
(どうすんの?)
(任せて!)
まだつながってないのに小声にする意味が我ながらわからない。ここは水無月に任せよう。
「もしもし〜〜お疲れ〜〜部活終わった? うん、あっ、断られた〜〜冷たいよね、瀬戸君! いや、中学ん時の友達んち。明日? 練習試合でしょ? 応援? パスパス〜〜あっ、ごめん。その……人んちだから切るね? 明日頑張って〜〜また来週~~」
チン。
ふぅ〜〜とため息をつく水無月がチラ見してくる。
「い、息を吸うくらいにウソついてる(震え)」
「い、いいじゃない! 優斗のためだよ! 今になって流石にヤバいかもってなって機転効かせたんだから!」
今頃ですか? 今の機転ですか? いや、何よりシャワーも浴びたし、ご飯も食べたんだから帰らない?
そんな提案をしようとしたが――
「さあ、問題解決! 優斗、お部屋案内してよ、優斗の!」
「まさか」
「何がまさかよ。人の彼女にウソまでつかせて帰らせる気? なんなら今から『まいん』で優斗んちでシャワー浴びてるとか言う?(笑)さあさあ、レッツお部屋!」
ノリノリですけど、お部屋にはベットありますが……お
「あっ……」
今度は俺のケータイが鳴った。
着信画面を見ると芽衣。それを水無月に見せたら、気のせいかなんか悪い顔した。
これは出ない一択だな。そう考えていたらいきなりつながった。
俺が出ないと読んだ水無月が横から画面をタッチしやがった。
「もしもし、瀬戸君?」
「あっ……うん」
「なに、今の間(笑)他の誰かだと思った? 浮気か?(笑)」
「いや、そうじゃなくて、いきなり通話とか
「うん、ちょっとね~~なんか、さっさと帰ったでしょ、私。それでなんか悪いなぁ~って反省」
「それで家の用事はどうなの?」
「ん……一大事って言うから帰ってみたら、お父さんがぎっくり腰で。今ね、病院から帰ったとこ」
「大変だなぁ」
「ホントそれ。もう、かさ高いったら……あれ取ってくれ、これ取ってくれって」
「そうなんだ、入院とかは」
「ありがと、そこまでじゃないみたい。態度はデカいけど(笑)週末なのに瀬戸君怒ってない?」
「大丈夫、怒ってないけど」
「もう! 怒って。今ね、部屋だから平気。ねぇ、怒ってよ」
ちなみにスピーカー。水無月に筒抜け。ついでに言うとこれも水無月の
そして、キョトンとした顔を横目に何時ものをやる。
そう、いつものだ。
「お前さぁ……なに勝手に予定とか入れてんの? もうマジないわ」
「ごめんなさい、そのお父さんが大変で……」
「いや、別にそれ、俺関係なくない?」
「ごめんなさい……その次からね、ちゃんと相談する、だからねぇ? 今度何でもいうこと聞くから……許して」
「いいよ、お前みたいなクソビッチ。いうこと聞かせてもつまんねぇし……」
しばらくの沈黙。俺のいきなりの怒声に水無月は完全に固まる。いや、無理もない。
「はぁ~〜瀬戸君、ありがと……あぁ……なんかいい! 大好き……愛してる、逢いたいよ」
「うっせぇバーカ」
「あぁ……早く逢いたい……あ、明日会いたい。結婚とかしたい」
「なに勝手言ってんだよ、無理だよ、ムリ! また、学校でな! 切るぞ!」
通話終了。場所は俺の部屋。固まりまくる水無月。そらそうだ。ちょっと説明が面倒くさい。
「あの……なんか機嫌悪い? その……私のせい? ムリ言ったよね、そのそんなに白鳥に当たらなくても……」
「いや、そういうんじゃなくて……怒ってもないし……」
「いや、今めっちゃキレてたじゃん、大きな声では言えないけど、私少しチビッたかも。でも白鳥だよね、白鳥『大好き』とか『愛してる』とか『逢いたい』とか『結婚したい』とか言う子なんだぁ……でも、なんかヘン。なんで怒鳴られて『愛してる』なの?」
「なんと申しましょうか……」
「うん」
「そういう性癖なんだ、芽衣は」
「性癖……?」
「なんかね、大人しい俺にキレられて、言うこと聞かされてるのが、堪らんらしい」
水無月はもちろん言葉を失った。
□□□作者よりのお願い□□□
読み進めていただきありがとうございます!
「次回投稿が楽しみ!」
「芽衣ちゃんの性癖が気になる!」
「このまま泊るの⁉」
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