第2話 ぽんこつ新人正社員と、下請けの私。
わたしは派遣社員として、とあるIT企業で働いている。
厳密には派遣社員というわけでもないのだが、
正社員ではないという意味では、わたしがどういう立場であろうとあまり関係ない。
とにかく「下請け」の身分だ。
わたしの「下請け人生」はもう20年にもおよぶ。
フリーライターも「下請け」なのだろうが、
派遣先に所属してライティングをしても「下請け」だし、
正社員として企業にいても、
企画や編成ではなく、決められたルーティンだけをこなすだけなら
「下請け」と言えなくもない。
結局のところ上流工程にいないと「下請け感」というものは出てしまう。
何事も考えようだ。
「下請け」と思わないことが幸せに仕事をするためのコツだとは思う。
三浦しをんの『舟を編む』のように
たとえルーティンであれ、自らの発想を信じ、
言葉の力を信じて仕事に打ち込むことができれば
それは本望というものだろう。
「下請け」ではなく、なんと呼ぶべきか・・・あれ?
こうしたことを考えているとき、
最近あたまに「ASD」という言葉が思い浮かぶようになってきた。
そう最近、自らがそうなのではないかと疑っている
「ASD自閉スペクトラム症」だ。
ASDのひとは「こだわり」が強いのがひとつの特徴らしい。
そういわれると「こだわり」とは何か、とつい考えてしまう。
「こだわり」とは何かを考えてしまう「こだわり」・・・。
とてもややこしいので、いったん考えるのを強制的に停止することにした。
ひとまず仮に「下請け」としておこうではないか。
*
そんなわたしが働く、とある企業の編集部署に新人社員がやってきた。
仮にAくんとしておこう。
彼はどうやら、わたしがいる編集部署にやってくるまで、
幾つかの部署をたらい回しされ、
この度IT企業内の文書作成をする部署に配属になったらしい。
しばらく仕事を見ているが、
出来上がった文章をみている限りでは
新聞や本を日常的に読んでいないのが分かる。
文書作成は完成品に1つでもミスがあれば、
その文書はゴミも同然と
界隈では言われるものだが、
もともと書くことに興味がない人にありがちな、
「とりあえず500文字書いてあればいいですよね」的な内容で
一文ずつに誤字脱字があり、
日本語なのに文法も適当、
一番問題なのは、実際のことを調べて書いていないので
記述内容に嘘がある、
といった状態で
これはAくんを「ぽんこつ認定」せざるを得なかった。
※言わないけど
しかし、意外と、世の中にこういう人は多い。
こういうときに「ASD」としてはどう対処するのが正しいのだろう。
そう、考えられるようになったのは、
この病気を知ったことのメリットだと思う。
まだ、診断したわけではないけれど。
事前にトラブルを回避できるかもしれない。
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