第2話 叔母、魚を洗いに溺れ危篤だって!

2015年に施行された

「空き家対策特別措置法」の

ニュースを耳にしたのは

何故だったのか、、


それから起きた、

ウイルスパンデミックで

感染による

国内死者数は7万人を越えた。


直接ウイルスで

亡くなったわけでなくても、

医療機関のパンクで

救急搬送出来なかった事案が

急増し、

ウイルスによる

二次被害死者数を

もしも計測できたならば、

その数はどの程まで登るか?


げんにウイルスで叔父、

二次被害で母が亡くなった。


ウイルスパンデミックを

3年も経験した

わたし達の前には

高齢の主を失くした

家や店が残っている。


そうして

「空き家対策特別措置法」

改正に向けた動きが

また加速していくらしい。


これから

放置することによる

ペナルティがさらに増す

『空き家』。


それは突然、

わたし達に降りかかってくる。


誰かの弔い鐘が鳴ると同時に。




時計は遡って、

ウイルスが蔓延しきる

前の12月。


島の警察から

1本、電話がかかってきた。

父は定年後も

嘱託で仕事を続けて、

家にはいない。


母を介護する為、

withウイルスを掲げて、

リモートワークを推奨する

政府の提言よりもいち早く、

自宅で仕事をしていた

わたしが、

鳴り響く電話を取ったのが

島の家を相続する、

はじまり。


「は?叔母が海で溺れて危篤?」


父の母親がわりをしていた

叔母は、

父と一回り以上は年上で、

100歳まで生きる勢いの女傑だ。


Google3Dマップで、

島の映像をみれば

90歳を優に越えて尚、

自転車で走る姿が、

そこかしこ認められるほどに、


ボケなし、病知らず、足腰頑健。


島生まれの島育ちは、

こんなにも元気なのかと

驚愕の対象である、叔母がだ。


「危篤って、ウソですよね?!」


ただ、

敢えていうならば

島の人間のくせに、確かに

泳げないのも、叔母だ。


「溺れたって、何故ですかっ?」


凶悪犯罪が秒で起こるような

街では考えられない、

呑気さをはらんだ

島の警察は、

暇なのかやたら丁寧に、

状況を教えてくれたのだが、


『魚、洗いに海ぃ行きよって、

おったみたいですなぁ~。』


なんとも都会では想像出来ない

状況説明で、


『助けん海入ったぁ、爺さんが

いうにゃあ、そぉゆと~から、

礼だけいいにいっとってくだぁ

さい。だけ、病院はぁ、、、』


しかも、助けにまた、

お年寄りが海に入ってくれた?!

とか、しれっという。


よりにもよって、

島の言葉が入って理解しがたく

それでも、

相手の警察官は

わたしに気を使って

分かる様に言葉を選んで

説明をしてくれるという

気遣いは伝わる。


とにかく、

わたしは急いで父にメールを

打った。


『島の叔母、

溺れて危篤。すぐ帰れ。』


ほどなく、

わたしと父は夜行高速バスの人と

なった次第。


お互いに

頭の片隅で、嘘だろうと打ち消す

気持ちと、

どこか

葬儀をどうしたらいいかと

心配する気持ちが


ないまぜになって、

もう

いい年をして

バス酔いしそうになりながらの、

エズきながらの

帰島旅となる。


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