第44話:腐った果物の神
俺はクレーターの中心に立ち、破壊されたドリアン王の姿を目にした。彼は倒れ、息絶えているように見えたが、まだ微かな息吹が感じられた。
「ドリアン王……、終わりだな」と俺は静かに呟いた。
彼は衰弱し、瀕死の状態だったが、まだ最後の言葉を残そうとしているようだった。
彼の唇が動き、微かな声が漏れた。
「スイカ太郎……、これで終わりじゃないぞ……。私が消えようとも、ドリアン神は不滅だ……。そして、『腐った果物の神』は、何度でもこの世界に干渉し、おまえたちを腐らせるのだ……」
その言葉は意味深なものであり、俺の心に不安を抱かせた。
ドリアン王の支配が去り、彼の領域が崩壊したはずなのに、ドリアン王の言葉は未来への脅威を予感させた。
俺はドリアン王の残骸の方へと耳を近づけた。彼の姿は崩れたスイカの塊に埋もれていたが、その眼光はまだ強さを失ってはいなかった。
「ドリアン王……。おまえの支配は終わったはずだ。一体、何を言っているのだ?」
俺の声が彼に届くかどうか分からないまま、ドリアン王は微笑みながら答えていた。いや……、その言葉は、すでにドリアン王のものではないのかもしれなかった。
「ドリアン王は倒されたかもしれんが、私の力はこの世界に深く根を張っている。ふたたび《腐った果物の神》はこの世界に干渉するのだ………」
彼の言葉に、恐怖と戦慄が俺の背筋を駆け巡る。
ドリアン王に力を与えたのはドリアン神のはずだ。だが、その上に、スイカに匹敵する力を秘めた、邪悪な存在がいるのかもしれないという考えが頭をよぎった。
「その力を使って何を企てるつもりだ?」
俺の問いに彼は静かに笑って答えた。
「腐った果実の力は再びこの世界に腐敗をもたらす。私は《腐った果物の神》の使徒であり、その力を守り抜くのだ……。そして、すべてのスイカが消滅するときが、必ずやってくる……」
彼の目は何かを見つめているかのように遠くを見つめていた。腐った果実の力が再び復活し、この世界に腐敗をもたらすという彼の意図が、俺の心に重くのしかかる。
彼の顔には残りわずかな力を振り絞った笑みが浮かび、目は異様な輝きを放っていた。
「この世界は腐った果物の力によって支配されるべきだ。スイカは弱い存在であり、腐った果物の神こそが真の支配者なのだ。ドリアン王の死が終わりではない……、わが復活が訪れるまで、この世界は絶望に包まれるだろう……」
彼の言葉が来るべき闇を予感させ、不気味な静寂がクレーターに広がった。その瞬間、彼の体がふるえ、息が絶えた。
俺はドリアン王の言葉を重く受け止めながらも、彼の最後の言葉に挑戦を感じた。彼の改心は訪れず、彼の野望は消えなかった。
「ドリアン王よ……」
と俺は静かに呟いた。
「もし本当に腐った果物の神が再び現れるとしても、俺は立ち向かう覚悟がある。スイカを守り、この世界を救うために闘い続ける!」
彼の遺体のそばにひざまずき、彼の冷たくなった手を握りしめた。その手には未来への決意と勇気が込められていた。
「ドリアン王、君の野望は終わったが、俺たちの戦いはまだ終わりではない。腐った果物の神の脅威が再び迫るとしても、俺は立ち向かい、この世界を守り抜く。君の意志を胸に刻み、誓いを果たすまで戦い続ける。安らかに眠れ、ドリアン王よ」
と俺は静かに言葉を紡いだ。
彼の最後の挑発となる言葉が残りつつ、俺は彼の遺体を見送り、腐った果物の神の脅威に立ち向かうために、俺は新たな戦いの旅に身を投じるのだった。
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