#6 現実がコワレル

晃は谷底に落ちたが、下が川だった為に助かっていた。

病院の一室、ベッドに潜り込んで震えていた。

「香織は居る!どうして医者がわからないんだよ!香織が殺した!俺にそんな事が出来るわけがない!俺は犯人じゃない!香織なのに!香織なのにっ!」

頭を抱えてずっと同じ言葉を喚いていた。

一人部屋だったので、部屋を出ようとしたら、外から鉤が掛かっていて出られない。

窓も格子が嵌まっている。

「犯人扱いしやがって!」

晃は苛立たしく頭を掻き毟った。


……あきら…

不意にどこからか声がしたようだ。

…あきら…ぁ…

確かに晃を呼んでいる。

「だ、誰だっ!」

晃は潜っていた掛け布団を跳ね退けて辺りを見回す。

晃。

晃は必死に見回すが、部屋には誰もいない。

ポタリ。

雨粒のような感覚が晃の首筋に落ちる。

拭ってみるとそれは、赤い粘液。

「ヒッ!?」

晃は逃げようとベッドから落ちてドアの方へ這いずるが、鍵が掛かっている。

無駄なのにドアノブをガチャガチャ回すが、開く筈もなく。

やがて、人の姿のようなものがいくつも形をなす。

あぎらぁ……

アギ……ラァ…

いくつものそれが晃を呼ぶ。

それらは首が無いもの、肌が爛れ黒い炭になっているもの、上半身がぐちゃぐちゃのもの……死んだみんなだった。

「ひぃっ!!」

晃は開かないドアを背に竦み上がる。

いごう……いっじょに……

あんだだげ…だずがるなんて…ずるい…。

亡霊達の手が晃に伸ばされる。

一番離れた位置に、ほの花の姿があった。

ほの花は微笑んでいた。



翌朝、晃は顔を酷く歪ませて死んでいた。

医者の診断では『心臓麻痺』だった。

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