赤十字(戦死者達の追憶)

具流 覺

1頁 ラエの第3野戦病院

 今、この歳(九七歳)に成り『あの時』を思い出し、描(カキ)き認(シタタ)めます。

私の人生最後の私記に成るでしょう。

この作品を、不条理(理不尽)な時代に翻弄され、消えて逝った『若き日本兵達』に捧げます。


 私(従軍看護婦・杉浦仁美 当時十八歳)は大きな蝶(極楽蝶)に導かれて、ジャワの第5陸軍病院から東部ニューギニア・ラエ第3野戦病院』に赴任して来ました。


そこは赤十字の旗が翻(ヒルガエ)る、椰子(ヤシ)の葉で屋根を葺いただけの野戦病院でした。

兵隊(患者)サン達は全員、筵(ムシロ)のベッドの上に寝かされて居ました。

病院の中は、死ねない、降伏できない兵隊(患者)サン達ばかりでした。


吐き気をもよおす様な異様な匂い。

手が無い、足が無い、顔が半分無い・・・それでも兵隊サン達は生きているのです。

二度と故国(クニ)に帰る事は出来ないだろう『壊れた兵隊(患者)』サンばかりでした。

                          つづく

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