第18話 レイジ 君のためなら死ねる

「どうもすみませんでした」


改めて頭を下げ、そのまま通り過ぎようとするが、それは許されないようだ。


「お前ぇからぶつかってきて、喧嘩売ってんのかい?」

「いえ、そんなことはありません」

「ってか、すっげぇ痛かったし慰謝料払いな。慰謝料はその姉ちゃんでいいや」


二人が、エルの頭のてっぺんから爪の先まで舐めるように視線を這わせる。


(くそっ、ふざけんじゃない)


そのいやらしい視線を遮るように、俺は一歩エルの前に出た。


「さすがにそれはダメですよ」

「へへへ、じゃ、お前をめてからたっぷり可愛がってやるよ」


そう言いながら光り物を出してきたが、そんなものを出されたら余計に引き下がるわけにはいかない。ちらりと横目でエルを見たが、怯えた顔をして足も竦んでしまっているようだ。




本気で刺す気だったのか、脅すだけのつもりだったのかわからない。だが、そいつが笑いながら近づいてきたと思った直後、俺の腹部には深々とナイフが刺さっていた。


「やっべー 本気でヤルなよ」

「うっせぇ、滑っちまったんだよ」

「とにかく逃げるぞ」


腹部に強烈な痛みを感じ、立っていられなくなり俺は地面に倒れこんだ。



「均さん、均さん、しっかりして!!!」


耳元で必死に俺の名前を呼んでいるエルの涙声。俺の手を握ってくる柔らかくて暖かい手。


(エルと初めて手を握ったよ。でも、これが最初で最後)



『君のためなら死ねる』


そんな臭い台詞、漫画の中だけかと思ったが、現実でもあるんだね。でも良かった。あんな輩にエルが汚されなくて。



俺はエルに会うまで二十五年待った。だって、エルを守るために生まれてきたんだから。




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