第03話 レイジ 天使の誘惑

「少しだけお話させていただいてよろしいでしょうか?」

「はい..別に構いませんが...」


さすがに『どうぞ、どうぞ』とは言わないが、返事は『OK』の一択。だって、断って彼女を帰してしまうには、あまりにも惜しかったからね。

彼女は小走りで、自分が座っていただろう席にジュースを取りに行った。



その間、俺は頭をフル回転させる。


そうか! 美少女に話しかけられてオドオドする冴えない男を笑う動画か、ありそうだ。と、廻りを見渡すが、俺を撮っていそうな人はどこにもいない。


ハニートラップ...それはナイナイ。俺なんて失うものが無さすぎる。ハニトラ仕掛ける価値もない。


じゃ、宗教の勧誘とかマルチ商法の類なのかな。ふむ、この線はあるかもな。まっ、公共の場所だから変なことにはならないだろう。やばそうなら無視して帰ってしまえばいい。


彼女が戻ってきたので、とりあえず座ってもらった。向かい合わせの二人掛けの席でよかった。



「私の名前は『カミシタ エル』と言います」


そう言って彼女は名刺を...出さない。

ネームプレートさえ付けていない。勧誘や怪しいビジネス絡みの話ではないの?



とりあえず、俺は自分のことを本名ではなく『レイジ』と名乗った。


「私は最近、こちらに来たばかりで、知り合いもいなくて、そもそも人と話すのが苦手なんです」


どこからか上京してきたということか? 話すのが苦手って、こんな美少女なんだから自分から話さなくても、いろんな人に話しかけられることも多いだろうに。


「なので、大変失礼なのですが、少しだけ話相手になっていただけませんか?」

(え~っ、そういう切り口で来たか)

「練習相手みたいな感じ?」

「えぇ、申し訳ありませんが、よろしいですか?」


しかし、まだ彼女の本意が読めない。でも、彼女と少し話してみたいというスケベ心が芽生えたのは否定しません、ハイ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る