第12話 蜜柑だ、わっしょい!

クズで申し訳ないですけど、どうぞ。

 

 養護施設某園に、蜜柑の寄付があった。

 こんな調子で寄付されたであろう、蜜柑の箱。

 それは間もなく、各児童棟に配られた。

 無論、食べるためである。しかし、


モノには目的外使用できる余地のないものはない。

 で、蜜柑の目的外使用って、なんやねん。


そらあんた、投げることよ。

 というわけでもないけど、実際、いくつかの蜜柑が投げられた。

 養護施設某園の児童棟のコンクリの壁に。

 投げたのは、高校生男子児童ら数名。


 それだけ明確な証拠が残れば、発覚しないはずもない。

別に証拠隠滅なんか、考えてもゐなかったろう。

 結局、職員が見つけた。その残骸を、ね。


 注意してきたのは、男性の児童指導員ではなかった。

 彼の監督する中高生男子寮の保母であった。


蜜柑を投げないように。


 ま、そんな程度のことでした。

 短大出て間もない彼女が体罰なんかできっこないよ。

 まして、年齢もそう変わらない男子児童なんかに。


 この話を聞かされた後の作家さん、大笑いしたそうな。

 心底楽しくて、などではない。

 あまりのお粗末さやらなにやら、ね。


 結局、あの地の問題点、いや、日本社会のしわ寄せが、

 当時の入所児童らに寄せられ、

 そしてさらに、彼らが、そのしわ寄せを、蜜柑に寄せた。

 その結果が、彼らの蜜柑投げだったのである。


今思い出しても、笑える。現にこの作品、笑いながら書いた。

だが、笑いはどこかで、何か、別のものへと転化した。

その正体は、実は、私にもわからない。

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