気になる人
「お前、あいつ誰か分かってんならあん時、教えてくれれば良かったじゃねえか」
「僕もびっくりしたんだよ、急に体が動いて、君がサラを母親呼ばわりした事に、でもちょっと面白かった。」
そして、この体は約1、2ヶ月意識がなく、寝たきりだったが、体の持ち主自体には意識はあって声を出していたが、誰にも届かず、体には力が入らなかったそうだ。
俺はこの事態を重く受け止め、少し険しい表情をするが、持ち主は、「平気だよ」と何故か笑いそうな声が聞こえる。
「それにしてもあの人は誰なんだ」
「君、自分の事より彼女が気になるなんてね、」
「あ、いや」
俺は自分の事を自分であると思っていたが、この身体はさっき移り変わった物で、どんな状況に置かれているのかより先に、女の人を気にかけてしまうくらい、俺は前世での未経験な事が引きずってしまう。
ま、まあ男たるものレディーファーストの心を忘れてはならぬ。その心はどの世界でも共通な事だろうしな。
心の中でそう思い込んだら、少しずつ、笑みが溢れていく。
「女の子の名前を教えてくれ」
「ふふっ 彼女は僕の仲間のサラ・レルブラント、僕より3つ年上。サラって呼んであげて、彼女は普段は少し怖そうに見えるかもだけど、根は優しくて良い人だから」
「そ、そうかツンデレって奴だな、、」
「なんか言った?」
「い、いや?何も言っていない」
「なら良いけど」
彼女はツンデレって奴らしい。
しかも年上、俺の中では完璧ど真ん中って感じでは無い、が、俺の守備範囲内にいる。アリだな。
いやいや、そんな不純な考えしてはダメだ。俺は何かあったらすぐに妥協してしまうからな。
まずは自分は自分に厳しく、努力を怠らず実力をつける。前世で俺は『もう一度やり直せたら自分の納得のいく人生』
でありたい、その為にこうやって新たな人生を望んだんだ。
なら、彼女を作る前にしなきゃいけないとこがあるだろ。
そう、再度決心する。
「そうだな自分の事だ教えてくれ」
「いいよ、君はね……」
そう言って、俺がこの身体に移り変わる前、つまりお前がこの身体で何をしていたのかをほぼ全て淡々と説明された。
俺はレイルド・エレシアルと言う名前で、年齢は16歳。皆にはレイと呼ばれている。
今年に冒険者として本格的に行動をし始めたらしい。サラはその冒険者仲間って奴だ。
そして、道半ばで俺は普通に殺されかけたという。
原因は上手く事が運びすぎて、調子に乗りすぎたらしい。
まあ少し、前の俺と似ているところがある。
上手く行ってる時は自分が何でもできるんだって錯覚をしてしまうもんだから。仕方ない。
親の話は全くしなかった。まあ、複雑な事があったのだろう。深掘りは良く無い。自分だって、「前はどうだった?」って聞かれたら、嫌な顔してだんまりするだろう。
こう言うのは聞かない事が2人の関係性を良いものにする。
簡単に言うとこうだ。
「俺は16歳で冒険者を始めて、冒険の途中で死にかけてここに来て、命を救われたと言う事であってるな」
「そうだねそんな感じ」
「冒険者は俺とサラって奴とあとは誰がいるんだ?」
「2人だけだよ」
「……」
俺の顔が少し悪くなる。
聞いてはいけない、隠したかった、忘れたかったであろう事を今俺が聞いてしまった。思い出させてしまった。
「すまん、俺、何も分かってなくて」
「良いんだ。これは」
「………」
気まずい、、、
何か俺から明るい話はないのか?いやいや俺にはそんな鉄板トークなどない。自分を傷つける自虐ネタならあるのだが、惨めだし、もしかしたら気を遣わせてしまうかもしれない。
それはいけない。
「そ、そうだお前の事は俺、何て呼べば良いんだ?」
「レイって呼んで欲しいな」
「いや今は俺がレイだからややこしくなるだろ?」
「………それでもレイが良いな。授かった名前だから」
「じゃあレイルドと呼ぼう。そして俺をレイと呼んでくれ」
「了解っ!」
何とか話をうまく変える事が出来た。
良かった。
「俺は身体元気だしそろそろ動こうと思うんだが」
「まだやめといた方がいい。こっそり僕と特訓をしよう」
「秘密特訓、、良いなそれ!」
2人だけの秘密の特訓ってなんか格好いい。
それだけでもテンションが上がってくる。
「それじゃ早速やるぞ特訓!」
俺は元気にベッドから飛び起きるが、もう夜だった。
まあ、ゆっくり始めればいいさ、この身体の俺はまだ若い。人生はどのくらいあるか分からないけど、急がば回れだ。一つずつ着実に積み重ねていく、それが少しずつ自分の中で実感する。
そうしていこうと布団を頭まで被り今日は寝る。
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