第18話(2)

 ケイトとドールが城に到着すると、

 城の入口では王宮室室長の

 アルバート・レージ・ラングリッツがニコニコ顔でお出迎え。

「ケイト様、ドール様、おはようございます。

 お久しぶりでございます。」

「あ、お、おはようございます。」

「おはようございます、室長様。」

 室長は商人のように手もみしながら

「ささ、ではこちらへ。」

 と城を入ってすぐ左の通路を指した。

 謁見の魔……もとい謁見の間は正面の幅広通路では?

「あのー、室長?」

「謁見とはいえ旧知のお三方のみですので、

 お茶会をご用意しております。

 喫茶店アリサの季節限定ケーキをメインに、

 茶はダージリンのオータムナルを。」

 ケイトはこれを聞いた途端、

 重かった足取りが軽くなった気がした。

 単純とは、決して馬鹿なだけではない。

 一瞬で幸せを感じられるという素敵な感覚なのである。

 そのまま通路を道なりに右に折れて一番奥へ。

 そこから階段を上がって2階へ。

 いや、そのまま更に上がって3階へ。

 は?

 貴族淑女の城内でのお茶会は2階だったはずよね?

 しばらく来てなかったから、場所移したのかしら。

 そう思いながら到着した部屋の扉は豪華絢爛だった。

 まさか……

 ケイトが嫌な予感を巡らせる中、室長が

『どうにか連れてくる事ができました。

 餌(ケーキ)を用意しておいて良かったー!』

 みたいな顔をして扉を開ける。

 すると目の前には、待ちきれずに扉の正面で立って

 待っていたエレナ女王の姿があった。

 朝から目は恍惚に、ケイトの姿を見るや

 問答無用で抱きしめる。

「ああ、お会いしたかったですわ、お姉様!」

 ケイトには、キャサリン以外に

 フランソワとエレナ女王の2人の妹がいるようだった。

 覚悟はしていたが、やはりげんなりしてしまう。

 部屋には背の低い長テーブルと2人用のソファーがあった。

 部屋には左右に扉が1つずつあるが、

 このフロアはやはり……!

「ねえ、ここってもしかして女王様の私室?」

「その通りですわ、お姉様!

 それと、他に邪魔者がいない時は

 エレナとお呼びする約束だったでしょう?

 ささ、一緒にこちらのソファーに座りましょう!」

 そんな約束した覚えないわよ。

 それに邪魔者とか言うけど

「えーっと……室長が目の前にいるんだから……」

「あんなのは空気とでも思って下さい。」

 言いながらエレナ女王は手をブンブン。

 あんなの扱いされた室長は軽く受け取り

「ではドール様、紅茶のご準備をお手伝い願えますか。」

「はい、承知いたしました。」

 えーっ!

 あたしをこの馬鹿女王と2人きりにするつもりなのーぉ!!

 ケイトの想いなどどこ吹く風。

 室長とドールが部屋を出た直後に閉まる扉の音が、

 やけに重く感じたケイトであった。


 盗賊ギルドでは昨夜遅くから速報が飛び交っていた。

 4番の宝物庫壊滅。

 王宮護衛団または王宮魔法陣の調査が入る可能性大。

 決して近付かない事!

 ワー・ウルフ(狼人)のマティスは

 眠い目をこすりながら生地工房に入る。

 それを見た受付嬢が、

『えっ』

 と言いたげな顔をした。

「社長、目の下に隈ができてますよ。

 何かあったんですか?」

「ギルドから速報きてただろ。

 あの一件の確認で深夜にちょっとな。」

「また誰か馬鹿やったんですか。」

「馬鹿やったのは、幸いにもギルド入りしてねえ

 スラム街の追い剥ぎどもだ。

 だから死体の身元を調べられても屁でもねえが、

 魔素が異常な量で溢れ出てたからな。

 王宮で誰かしら調査に来る可能性が高い。

 4番の宝物庫はもう見限るしかねえよ。」

「前々から気になってましたけど、

 今のアンカーの宝物庫はどうしているんです?」

「表の職場の鍛冶屋の倉庫が思いのほか広くてな。

 元々危険物も扱っているから、中に紛れ込ませているらしい。」

「あー、言われてみればそれしか方法ないですよねー。

 あ、そうそう。

 さっきベティーちゃんが朝早くに来てて、

 社長に今夜よろしく!

 って伝えといてって。」

 マティスは、今言われるまですっかりド忘れしていた。

 あー!っといって顔を上げる。

「くっそ、すっかり忘れてたよ。

 しかしあのガキもマメだよな。」

「そうそう、そういえばベティーちゃんが自慢してましたよ。

 バー・ナイトメアに入れたって。」

 これを聞いてマティスが目を丸くする。

「ぬあにぃー!?

 バー・ナイトメアだあぁ!??

 あの夢のバーは男の浪漫の象徴だぞ!!!

 なんであのガキンチョが入れたんだあ!?!?」

「詳しくは聞いてないですけど、

 本人と仲良くなれたとか何とか。」

「う、羨ましすぎる……。

 よし、今夜会ったら絶対に聞いてみよう!

 情報ありがとな。」

 社長が工房に入っていった後で受付嬢は思った。

 ベティーちゃん、

 今夜絶対に社長に会える状況を作る為に、

 わざとバー・ナイトメアの事を話したわね。

 あの娘も楽天的な性格だけど、

 意外と策士なとこもあるわよね。

 その当人は、生地工房の次はバーバラの元へ。

 そこでケイトの祖母ベレッタと出会う事になる。

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