ラフレシア伯爵家
「……」
魔王が復活し、僕が勇者となったとしても、僕がやることは基本的に変わらない。
普通に僕は
「……ァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
僕はいつものように一人、執務室で発狂する。
仕事が多いぃぃぃ……尽きない、仕事が尽きない。
ラフレシア伯爵家に仕えていた使節団も新しく仲間に入ったけど、そいつらはそいつらで村に押し寄せてきている多くの貴族や商人への対応に手一杯。
あまりにも忙しくて首から勇者のペットと書かれたボードを下げているナルを街道に放し飼いして護衛させているくらいだ。
「クソぉ、人手が少なすぎて全然悪役貴族らしくできない。仕事に殴殺される……でも、ここで僕が動かなかったら村が崩壊するぅ。移民申請が多すぎる……断ろうにも凄い技術者とかもたまにいるから全部強制で刎ねるのはもったいなさすぎるぅ」
何故だ?
僕は悪役貴族になろうとしているのになんでこんなにも苦労しているんだ。どうなっている。何かがおかしい。
「……貴族の連中、僕の村にとんだけ物資送ってくるんだよぉ。女連中も温泉に入り浸りすぎだよぉ。村人かってくらい馴染んでいるじゃん、もう。旅館をどれだけ増やせばいいの?山の開墾出来るの僕くらいなんだけど。後、山の領有権を主張してくるな。勇者相手に喧嘩売れるとかどんだけ面の皮厚いんだ?あいつは」
僕は延々と文句の言葉を漏らしながら事務作業を進めていく。
村の長である僕が直々に行わなければならない重要な問題があまりも多すぎる。
コンコン。
そんなタイミングで僕のいる部屋の扉がノックされる。
「……どうぞ」
それを受けて背筋を伸ばし、表情を真面目なものへと変えた僕は口を開く。
「入るわよ」
「あっ、なんだ。アリアか」
入ってきた人物がアリアだとわかった瞬間に僕は体から力を抜く。相手がアリアである以上真面目な態度を維持しておく必要はないでしょう。
「別に私の前でもしっかりとした態度を見せてくれても良いのよ?」
「嫌だよ、なんでアリアの前でまで真面目な態度を取らなきゃいけないのさ」
「……僕は真面目に貴族をやるつもりなんてないのにぃ」
「口でどれだけ言おうが真面目にやってしまうノアが私は嫌いじゃないわよ?このまま聖人君主目指したら?」
「嫌ですぅー、なんでスラムで底辺を舐め、周りから侮蔑させ続けた僕が周りのために尽くしてあげなきゃいけないんですかぁー。周りが僕に貢いで奉仕し、それを元に僕が楽に無茶苦茶に暮らすんですぅー」
「でも、今のノアは聖人君主そのものよ?」
「仕方ないじゃん!周りが不甲斐なんだもん!」
僕はアリアの言葉に反発する。
「まぁ、そうね……今のところここはノア一人の頑張りに支えられているところはあるからね。昔からノアはバグよね。流石は叩けば叩くほど頑張る男」
「その不名誉すぎるの辞めて?あと、僕を叩くためにどんどん面倒ごと持ってくるの辞めて?」
「良いじゃない。村のためになることしかやっていないわよ」
「僕のためになることもお願いしたいね……あぁー!人手が欲しい!ラフレシア伯爵家の家臣団がダース単位で来てくれ!」
「……まぁ、無理ね。うちは酷かったから。むしろ、未だに私への忠誠心をもって行動しているトラヘーディアたちがおかしいのよ」
だが、そんな僕の言葉にアリアが寂しそうに呟く。
「まぁ、確かにラフレシア伯爵家は酷かった」
「だからこそ、ノアはあれとは違うものにしたいのよ」
「嫌ですぅー、僕は好き放題しますぅー」
「それでもなんだかんだ言って私のトラウマを刺激しないよう、村が崩壊するような事態になることはないよう最大限努力してくれるノアのこと好きよ、私は」
「……うっせ、頼みたい仕事あるからトラヘーディア君たちを呼んできて。村に来る人の応対はアレマに丸投げしよう」
「……あの子、いい加減過労死しそうだけど、まぁ、良いか。それじゃあ呼んでくるわね」
「うん、よろしくー」
「はーい」
僕はアリアが自分の執務室から出ていくと共に執務作業を再開する。
「あっ、言い忘れていたけど。私の用として王女様からノアに街を案内してほしいっていう伝言預かっているから、よろしく」
「は?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます