20-30

高里 嶺

バンドについて

 20代で自分が一番熱中したものといえば、きっとバンドだ。学生時代はコピーバンドをやりつつ、何度かオリジナルバンドに参加したが全部ポシャってしまった。もう楽器に触ることはないんだろうな、と卒業時にベースを実家の納屋に閉まった3ヶ月後、気付けば新しいバンドでライブをやっていた。そこからの2年間で3枚の音源をつくり、ライブもかなりのハイペースでやりまくった。この頃はひたすら音楽に夢中で、疲れているはずの平日仕事終わりのスタジオが楽しくて仕方がなかった。たくさんの知り合いができたし、知らなかったライブハウス界隈に接続できた。初めて行く街へ遠征してライブするのも楽しかった。学生時代が過ぎたらバンドはもう出来ない、という自分の思い込みは溶けて、社会人でも父親になっても関係なく、音楽で真剣に遊ぶ大人たちと会うことができた。2016年から2018年ころの生活は、完全にバンドを中心に回っていたと思う。

 その後、転勤や就職でメンバーがバラバラになり、ライブのペースは落ち、自分は転勤先で暗い時代を迎える。長く続いた恋人と別れ、友達もいない田舎で鬱々とした日々を送ることになったが、一方でそれは文章を書き始めるきっかけにもなった。バンドに大きく依存していた自分が、ひとりでもやれる表現として文章を再発見した、といった感じだ。その後2022年頃からバンドはゆっくりと再生して、今に至る。

 20代前半のような猛烈な活動はできないけれど、このバンドがずっと続けばいいなと思っている。

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