6話「早乙女ざろっく」

朝比奈あさひな先輩につばさが振られてたら数週間が経った相変わらず各々は仲良くしてるし俺も先輩達とも自然に話せている。


「そろそろ文化祭だね!優希ゆうき君のクラスは何やるの?」


「俺のクラスは喫茶店やるみたいですよ!朝比奈先輩は今年もミスコン出るんですか?」


「私が去年出てたの知ってるんだ?」


「はい、あの時からすれば今こうやって話してるのも奇跡みたいなものですよ。」


「私は今年で最後だしミスコンよりもクラスみんなで劇やるからそこで頑張ろうかな〜」


「まあそうですよね、先輩達は文化祭終わったら本気で受験勉強モードですもんね‥」


「ちょっと〜今はそれ言わないでよ!」


裏高はそこまで頭の良い学校ではないが、大体文化祭後からは3年生は受験勉強が始まるという風習がある。誰が決めたわけじゃないとは思うのだが俺も来年の今頃は受験生に切り替われてるのだろうか?


「先輩の劇見に行きますよ俺!」


「私だって優希君のクラス遊びに行くよ〜」


こんな他愛もない話ですら普通にできるようになったのも色々あったからなんだと思った。

いくら振られたとはいえ、翼も普通に話すしある意味俺の早とちりだったのかもしれないな。

でも、次こそは翼に彼女が出来るように導いてやりたいな‥


.

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昼休みいつもの購買にパンを買いに行く途中珍しい事が起こった。


「それ、TOPCOVER《トップカバー》の財布‥」


俺の財布に興味を持ったのか独り言のように呟く人がいた。


「そうですよ、好きなんですか?TOPCOVER ?」


「あ、すいません、珍しくてつい声に出ちゃってました‥」


「君一年生だね?」


「はい‥1-Cの早乙女さおとめです。」


彼女はツーサイドアップにこんな時期なのにまだカーディガンを着ていた。

漫画から出てきたように目がクリクリしててとても可愛い女の子だった。

1-Cか、舞と同じクラスだな。

家帰ったら少し聞いてみるか?


「俺は新川優希しんかわゆうき。よろしくね!早乙女さんも購買に行くの?」


「いや、あの、私はこれから、その、」


人見知りなのか?あまり俺とは話したい感じでは無さそうだな‥


「話したくなかったら無理に話さなくて大丈夫だよ!俺基本毎日購買だからまた会う事もあるだろうし気が向いたら話しかけてよ!」


「はい‥」


そういうって早乙女さんとはお別れをした。



.

.

.


「ただいま、兄貴〜」


「おかえり〜まいってさ、早乙女さんって子知ってるか?」


「なに、あんた朝比奈先輩じゃ飽き足らずもえちゃんまで狙ってるわけ??」


「いや、そういう事じゃなくて、今日俺が使ってる財布を物珍しそうに見てたから彼女も服好きなのかなって思って!」


彼女は早乙女萌さおとめもえと言うのか。


「ふーん、そういう事ね。萌ちゃんは言うなればサブカル女子って感じね、私のことミーハーって呼んでくるぐらいだし、確か軽音部に入ってて、なんだかマニアックな服とかバンドが好きらしいよ?それでみんなからは”サブカルオタク”って呼ばれててクラスでもちょっと浮いてるかもね‥」


「そうなんか、別に悪い子って感じじゃなかったのにな。」


「あと顔も可愛いからサブカルキャラを狙ってるとか軽音部の先輩に媚び売ってるとか女子特有の妬みみたいなのもあるのかもね‥」


なんていうか、昔の自分みたいで他人事の様には思えなかった‥

また会えるのだろうか、直感なのか、なんだかほっとけ無い気がしていた。


翌日、購買に向かう途中また、彼女に出会ったのであった。


「新川しぇんぱい、あの、その、えっと」


「早乙女さん落ち着いて、今日も会ったね?」


「は、はい、あの昨日はなんか逃げたみたいなってすいませんでした。」


「いいんだよ!そんな事気にしてないよ!」


「あの、それで、あの、TOPCOVERいいですよね!その財布ってwolf期のやつですよね!私はwolf期かTOP THE COVER期が好きなんですよね!ネットとかでも調べててたまに状態いいのがあったら買ったりしてて‥」


昨日の彼女とは大違いだ。

この話をしたくてわざわざ声かけてくれたのだろうか?

それにしても初対面の出会いは相手のオタクの早口の熱量にやられるのがテンプレなのか?


「早乙女さん詳しいね!俺も好きでwolf期の財布にしたんだ!」


「やっぱそうなんですね!先輩お目が高いですね、良かったらもう一回財布見せてもらっても良いですか??私雑誌とかで見たことあったんですけど現物は初めてで‥」


まるで宝物を見るような目で僕の財布を眺めていた。


「おーい兄貴ー!‥って萌ちゃん‥」


「で、でたなミーハーって兄貴?ミーハー女と新川先輩ってご、ご兄弟だったんですか?」


「おう、舞!学校で会うなんて珍しいな!てか新川で兄弟って気づかなかったの?」


「私勝手にミーハーのお兄さんもミーハーだと思ってたので‥」


「”サブカル萌ちゃん”さっきからミーハー、ミーハーっていうのやめてくれる??」


「別に事実だから良いじゃないですか?”ミーハー舞さん”」


なんなんだこの2人は、逆に仲良いんじゃないか?


「すいません舞ちゃんのお兄さん」


この子は確か舞の友達の”小沢美羽おざわみう”さんだ


「この2人別に仲が悪いって訳じゃないと思うんですけどね‥逆にクラスでは除け者にされてる萌さんにいつも話しかけてあげてるので‥」


流石妹だな、我ながらに誇らしい‥


「この3人が仲良くなっていつかお家に遊びに来るぐらいになったら良いのにな。」


「そう、ですね!」


「舞、そこら辺にしとけって!早乙女さんも昨日みたいになんか予定あるんじゃないの?」


「あ、そうでした、昨日言えなかったんですが文化祭も近いので軽音部の部活の方に顔出すんでした。あの新川先輩また色々お話したいです!」


「わかったよ!じゃまた明日ここで話そうか?」


「はい、必ず。」


こうして早乙女さんは去っていった。


「本当、兄貴は昔から誰にでも優しいんだから〜」


「それはお前も一緒だろ!」


「う、うるさいなぁ!さては美羽、なんか言ったでしょ!!」


「どうだろうね〜早く行かないとパン売り切れちゃうから早く行こ!」


「話逸らすな〜」


「お兄さん、それではまた!」


なんだか舞が友達と仲良くしてる姿は新鮮だった。

それにしても早乙女さん、ますます昔の自分に似ててなんかモヤモヤすんだよなぁ‥。



続く

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