第33話 初夜

二人は自分の部屋へ戻り、サヤが例の扉を開ける。




サヤ「お邪魔しま~す…」




レド「そんなこと言わなくていいんだからな?その…俺たち夫婦なんだし…」




少し耳を赤くして、そう言った。




サヤ「話…だけどね?きっとこの話…レドが嫌な気持ちになると思うの…それでもいい?」




レド「サヤの悩みは俺の悩みだ。大丈夫、最後まで聞く覚悟はできてる。」




サヤ「…ありがとう。」




ソファーで隣に座って、サヤは話し始める。




サヤ「幼い頃ルナ様に酷い扱いをされたの。たった二日間だったけど…長くて…辛くて…人生を変えられたと言っても過言じゃない。」




レド「ルナが…?言いたくなかったらいいんだが…具体的に何をされたとか、覚えているか?」




サヤ「忘れたくても忘れられないほどに…あの扱いは言うならば奴隷だった。自分は王族だから地面に頭をつけろと言われて、従わなかったからと叩かれた。」




涙を流しながら、話し続ける。




サヤ「私に従わないと、あんたの家を没落させる…とか。従うようになったら、要求はどんどんエスカレートしていって…それで…!それで…!」




苦しそうに泣くサヤを抱きしめ…




レド「もういい!大丈夫だ。ごめんな…嫌なこと思い出させて…でも、話してくれてありがとう。俺は馬鹿だ…サヤにそんな思いをさせていたのに気付かず…!」




サヤ「レドは悪くない…!私が弱かったからなの!」




レド「違う!サヤは悪くない…絶対にだ。でも、過去は変えられない…ルナがサヤにしたことはきっと忘れられない。でも、これからのことは変えられるんだ。」




レドと抱き合いながら、サヤは頷く。




レド「もうあの時とは違う。今日だってそうだっただろ?俺が困っていたとき…サヤは助けてくれた。相手はルナだったのにな?」




サヤ「ふふ…それは、お義母様が私を鼓舞してくださったからですよ…」




少し笑顔になったサヤに、レドが一言。




レド「サヤは強いな…俺にも分けてほしいぐらい強い…君がいると思うと、とても心強い。胸があったかくなるんだ…」




するとサヤはレドの頬に触れて…




サヤ「私も同じだよ…レド…世界の誰よりもあなたを愛してる…」




自分の愛を伝えた。




レド「俺もだよ…」




二人はキスをした。




世界一、愛に溢れたキスだった。




そこでレドがある一言を放つ。




レド「…サヤ、あの…俺たちって…初夜まだだよな…?」




二人の顔がボッと赤くなる。




サヤ「しょ…初夜?うん…まだ…だね?でもどうして…」




レド「今したい…今、すごい心の距離が近いと思うんだ…だから…」




サヤ「…いいよ…私もレドと、もっと夫婦になりたい…」




その言葉を皮切りに、二人はベッドに転がった。

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