第2話 投稿者
ピアノを弾くにしては、あまり長くない指。少しピンクがかったペールオレンジで、毛なんてものは一本も見えない。マニキュアやらなんやらは一切使用していない、素材のままの爪。
顔出しはしていないが、手から判断する限り、大学生の俺よりは年下だろう。つまり、高校生以下。
動画の説明文を見る。
「はじめての投稿です。よろしくお願いします。」
書いてあったのはそれだけだった。投稿日時には、「2009/04/09」とある。
投稿者の名前を確認する。「miyu」と表記されていた。
ユーザーページにアクセス。他の動画は投稿されていなかった。
「羞恥心をピアノで弾いてみた」
動画に戻る。まだ誰もコメントを残していない。このままだったら、反応がないからという理由で投稿しなくなるのだろうか。だけど、次の動画も見てみたい。
「この曲好き」
知らない癖に。嘘の感想を残す。
お気に入りの動画をいつでも自分のユーザーページから視聴できる、「マイリスト」と呼ばれるものに登録する。
とりあえず、「羞恥心」についてググってみるか。Googleの検索エンジンにキーワードを入力。
「紅白初出場」
「歌手別瞬間視聴率トップ」
俺にとっては衝撃の結果が表示された。
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