第4話 Mon Ma chérie マシェリー


 前回からのあらすじ。


 魔族の女性を助けたツバキ。

 その女性はツバキの配下となるのを望む。 だが、柔軟な考えを持てないツバキは奴隷と配下の違いがわからないようす。

 無事、名付けの儀式も終わり、その女性はアニエスという名をツバキからもらう。

 ツバキ君、アニエスはフランス語で純潔という意味ですよ?

 これじゃ夜伽が…。



   🌳



 ヒュドラのいた森からだいぶ離れ、今は砂漠とまではいかない荒野を歩く。

 日もだいぶ傾き始め、昼間の亜熱帯のような蒸し暑さから一転、少し肌寒く感じてきた。


「アニエス、寒くない?」

「ツバキ様、このくらい大丈夫です。 逆にツバキ様は寒くないでしょうか?」

「いやいや。僕は大丈夫だけど、アニエスはローブを一枚、羽織っているだけで、その下はスッポンポンでしょ?」


 ピコン!

「マスター、ピコンです。」

「はい、知ってます。」

「マスター提案ですが、そこら辺にいる毛むくじゃらの魔物をハントして、マスターのスキル、等価交換でアニエスの服を作ったらどうですか?」

「何それ素敵! 僕ってそんなスキルを持っていたの?」

「持ってます。 一緒にステータスを見た仲ではありませんか? それに服があった方が、男性は脱がす行為に興奮するのでは?」

「…。」


 こいつ…。


 ピコン!

「ウェーイ!」


「あの、ツバキ様。 私、アニエスはツバキ様のお望みどおり、服を所望致します。」

「ワシは脱がす前提かーい!?」


 全く。 ピコンさん、だんだんと調子づいてきやがったな?


「まあ、その件は置いといて。 服に等価交換できそうな魔物ってここら辺にいるの?」

 ピコン!

「はい、検索致します。 …検索完了。 結構な数の魔物がいるようです。 肌着を作るにはアルミラージ。 シャツやパンツは黒霧雨猿クロキリサメザル。 靴、ブーツ、アウターはブラッドベア。 皮革物はマッドスネークか、ポイズンカウです。」

「ちょっと待って! ポイズンカウって? 牛が毒を持っているの?」


 ピコン!

「ウシという名の魔物はわかりませんが、ポイズンカウは軽度ですが毒を持っています。 ですが、毒は尻尾の先端だけなので、他の部位は食用として重宝しております。」


 何だか複雑だな…。


「それじゃ、アニエスの服作りをはじめますか!」



 僕たちはピコンさんの言われるがまま、モンスターハントを始めることにした。

 そして僕の新しいスキル、索敵を使い、魔物の討伐もスムーズに進んだ。


 そして、最初に討伐をしたポイズンカウ。このツノは短剣へと錬成ができたのが好都合だった。

 この短剣をアニエスへ渡したところ、この武器との相性がとても良かったようだ。

 アニエスは素早さが見違えるほど上がり、今ではアルミラージも簡単に討伐可能となった。

 

 モンスターハントを始めて2時間ほど経過した頃、素材がだいぶ集まってきたようだ。


 ピコン!

「マスター、ピコンです。」

「はい、知ってます。」

「素材が集まってきたので、そろそろ等価交換を始めてはいかがでしょうか?」

「りょ。 その前におなかが減ってきたんだけど。 狩った魔物で食べられるのはある?」

 ピコン!

「この中ではポイズンカウが良いかと思います。 マスターのスキル、調理を使えば解体ができ、しかも部位ごとにストーレージに保管もできます。 ストレージの中は時間も止まるので、腐ることもありません。」

「マジか! スゲーなストレージ!」

「ですが、調味料はストレージにありませんので、焼くだけになります。 料理の方法は、調理スキルを使い、焼き上がりを木製の皿にのせてください。 その前に、テーブルとイスを出して下さい。 出来上がりを皿にのせ、テーブルに置くイメージでお願いします。」


 ずいぶん簡単に言いますな…。

 でも腹減ったし、やってみますか。


 まずはテーブルとイスだな。

 そして、ストレージ内のポイズンカウを…。 こんな感じで、解体して…。 てか、どこが食べられるんだ? 食べられるところ、というか、美味しいところに目印があれば…って目印あるんかーい! この部分を…。 焼いて…。 てか、この土地に岩塩とか無いのか? えっと、このまま索敵と検索で…。 って真下に岩塩あるんかーい! えっと…岩塩を採取っと…。 ストレージに入れて…。 


 よし! あとはお皿に乗せて…。


「テーブルへドーンじゃ!!」


 突然、テーブルに置かれたポイズンカウの厚切りステーキ。

 このステーキを見て、アニエスは驚いている。


 よし、あとは飲み物だな。

 木製のカップを2つ取り出し、水魔法でカップに水を注ぐ。

 カップの水を少し冷やすため、水の中心を氷結させた。


「あの、ツバキ様はいくつ属性をお持ちですか?」

「属性? 何それ?」

「えっ? 魔法の属性です。 私は風を少し扱える程度ですが。 ツバキ様はヒール等の聖属性を使えますよね? 今は水属性を使い、水からの分岐の氷結まで扱っていて。 それに風属性で剣を強化して、ヒュドラを討伐しました。 しかも、聖属性を扱えるのは聖職者のみのはずです。 聖職者は聖属性以外、できません。」

「うーん。 わかんないや。 ごめんね。 さあ、冷めないうちに食べちゃおう。 いただきまーす!」


 ピコン!

「アニエス。 ピコンです。」

「あっはい。 アニエスです。」

「マスターは最強なので気にしない事です。 後ほど、マスターのステータスを見せてくれるでしょうから、驚いて下さい。 ちなみにアニエスもだいぶレベルアップしてますよ。」

「うん。 ピコンさんの言うとおり、アニエスはレベルアップしているよ。 スキルもだいぶ増えているね。 明日は僕と一緒にスキルアップの練習をしようね。」


 ツバキ様。

 素敵です…。









 

 









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