24 殺害計画(和登&奏太)

 兄に犯されているときは、なるべく他のことを考えながら天井を見上げていた。

 それは、昼に食べたラーメンのことだったり。公園で見かけた猫のことだったり。兄以外のことであれば、何でも良かった。

 兄の指が激しく出入りしていた。僕の体もすっかり受け付けられるようになってしまったものだ。初めてキスをされたときは全身がすくみあがったのに。


奏太そうた……気持ちいいか?」

「気持ち悪い……」


 兄は僕の頬をはたいた。


「こういう時はな、嘘でも気持ちいいって言っておけよ」


 こんなに乱暴な人じゃなかった。兄は運動も勉強もよくできて、友達もたくさんいて、何より僕に優しくて。けれど、それは僕を犯すための建前だったのだろうか。何もかもが信じられなくなっていた。


「奏太、しゃぶれよ」


 ああ、また準備をやらされるんだ。僕は大人しくくわえた。口内で大きくなっていく兄の物を慎重に扱った。以前噛んだら顔が腫れ上がるくらい殴られたのだ。


「ははっ……上手くなったなぁ……」


 そうだ、何かを考えないと。この前観た動画……いや……まとまらない……。

 そうして、思い付いてしまったのが、兄を殺すことだった。兄は酒が好きだけど弱いし、一度眠るとなかなか起きてこないから、その時がチャンスだろう。

 絞殺は失敗するかもしれない。血が飛び散るのが難点だが、やはり刺す方がいいか。

 死体はどうしよう。埋めるなら、バラバラにした方が、発見されてもすぐに身元がわからなくて済むかもしれない。

 道具を揃えないと。人の身体を切り離すにはどうすればいいか。調べよう。効率的にやるんだ。

 兄の会社には、上手く言っておこう。兄とはそんなに会っていない、だから知らないと言えばいい。

 埋めてしばらくしたら、兄の部屋を引き払わねばならない。物は捨ててしまおう。でも、せめてアルバムくらいは残しておこう。


「ダメ……奏太、出るからっ」


 兄は僕の口から引き抜いた。僕の唾液が伝って糸を引いた。


「いつものようにやれよ」


 僕は仰向けに寝転がり、股を開いた。兄はコンドームをつけ始めた。準備ができたら、酒をたらふく飲ませよう。こんなことはもうたくさんだ。


「……もっと笑えよ、奏太」

「無理だよ」

「奏太は笑顔が可愛いんだからな。もう少し慣れれば、気持ちよくなるさ」


 殺してやる。その首を切ってやる。兄が悪いんだ。ずっと好きだったのに。

 僕は血に濡れた自分の手を思い浮かべた。悪くない、と感じた。


本編「兄の生首を飼う弟」

https://kakuyomu.jp/works/16817330666183246510

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