第14話

二人はきょとんとした表情でこちらを見ている。

「学費や生活費の支援をしていただけるのはとても助かります。でも、甘えるだけじゃ嫌なんです。」

「...と言うと?」

「正直僕は経営学を勉強しているわけではないし今はまだ"表向き"のお飾り社長にしかならないと思います。でもしっかり勉強をして、何か役に立ちたいんです。」

「なるほどねぇ?」

「やりたいことなんてなかったし、僕の人生はもう終わってるはずだった。それでもこうして恩を受けられるのであれば、僕なりに頑張ってみたいと思いました。もちろん極力自分の力で頑張るつもりです。学費は奨学金を借りて、生活費もできる限り自分で稼いで賄います。」

「うんうん、樹里に聴いていた通り、君は真面目ですべてを自分で抱えようとするんだね。確かに昨日出会ったばかりの同級生と今日初めて会ったその父親に生活の援助をしてもらうなんて信用できないし素直にやったーとはならないよね。」

「はい、すみません。」

せっかくの厚意を無駄にしている気分になり申し訳なくて下を向いてしまう。

「でもね、私達は君を実の家族のように接したい。養子にするって言ったこと、その場を凌ぐ嘘ではないよ。」

そんなの、僕にされる権利はないのに。

今まで諦めていた感情が沸き上がっている感じがする。

「...うちにはね、弟がいたんだ。弟って言っても二卵性双生児の弟。」

「樹里、その話は...」

「いいの。それでね、その弟、死んじゃったんだ。クラスでひどいいじめされてて、学校の屋上から飛び降りた。わたしの前で。わたし、助けられなかった。気付いてあげられなかった。いや、知ってて知らないふりしてたのかも。」

さっきまでにこにこ笑っていた彼女からは想像もつかないような悲しい顔に、何も言葉が思いつかない。

「弟の名前さ、ひーくんと同じって言ったでしょう?漢字も同じなの。輝くと書いて、ひかる。わたし、勝手に弟とひーくんを重ねて見てたのかもしれない。ひーくんが死のうとしてるのを見て、今度こそはって。無責任だよね、捨てようとしてた命を勝手に拾って、実家族とも絶縁させちゃって、ごめんね。」

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