第3話 秘密の約束

夜の帳が深まる中、「ルミエール」の雰囲気はより一層落ち着いてきた。店内にはジャズのメロディーが流れ、心地よいリズムが二人の時間を彩っていた。


アリサはカウンターの上の鏡越しに、カズヤの横顔を盗み見た。彼の目元には深い皺が刻まれていたが、その目は変わらず瞬きの中に情熱を秘めていた。


「実は、君に伝えなくてはならないことがあるんだ。」カズヤの声は、重々しく、しかし確かなものだった。


アリサは彼の方を向き、真剣な眼差しで彼を見つめた。「何?」


「10年前、会社を去ることになった夜、私たちはある約束を交わした。」カズヤは言葉を慎重に選びながら話し始めた。「それは、10年後に再びこの街で会うという約束だった。」


アリサは驚きの表情を浮かべた。「本当にそんな約束をしたの?」


カズヤは微笑みながら、彼女の手を取った。「本当だよ。そして、今日はその日だ。私は、この日をずっと待ち望んでいた。」


アリサは深く息を吸い込み、その思い出を探った。そして、あの夜のことを鮮明に思い出した。涙でにじむ彼の顔、そして互いに交わした約束。


「私も、あの夜のことを忘れていたわけではない。」アリサの声は、震えていた。「でも、私たちの人生はそれぞれ別の道を選んだ。」


「それでも、今、ここに二人がいることは事実だ。」カズヤは彼女の目を真剣に見つめた。「私たちには、再び新しい未来を築くチャンスがある。」


その夜、二人は再び約束を交わした。それは、これからの未来を共に歩むというものだった。過去の影を振り切り、新しい道を共に歩んでいく決意を固くしたのだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る