第30話 合流

「……俺達が最後か。」

 

 その後も敵の追撃に合いつつもなんとか目標地点に到達した。

 仲間が足止め役を買って出たり、時には強行突破したりするなど、被害を出しつつ何とか突破した。

 敵戦車中隊と遭遇しなかったのが怖いところではある。

 

「お疲れ様です。b、c中隊被害甚大なれど、総員集合しました。」

「よくやってくれた。正直、あの敵の布陣なら誰もたどり着けない事もあるのではと思っていた程だ。」

 

 そして、彼等のいる箇所の後ろを見る。

 

「あれがか。」

「はい。核シェルターの入口と思われます。他の地点を捜索していた人員も間もなく合流します。」

 

 まだ兵はいるのか。

 だが、やはり損耗が激しい。

 核シェルターの先にも敵が複数待ち構えていると予測される。

 

「扉が大きいな。」

「主要な軍の機能を使えるように巨大な核シェルターとなっているようです。戦車も通れそうです。」

 

 だが、少し気になることがある。

 

「……それにしても開けた場所にあるな。」

「我々もそれが気になっていました。」

 

 そして、更に気になることがあった。

 

「お前等、ここに来るまでに民間人と遭遇したか?」

「いえ、やはりそちらも?」

 

 俺は頷く。

 やはり、俺達の襲撃は日時まで推測されていたか。

 恐らく何日も前から避難していたのだろう。

 それに中国軍を見かけなかった所を見ると、壊滅したか。

 

「……嫌な予感がするな。」

『た、隊長……聞こえますか?』

 

 すると、突然無線が入る。

 足止めしてくれている部隊だ。

 まだ無事のようだ。

 だが、声が途切れ途切れである。

 激しい銃撃の音も聞こえる。

 

「どうした!?」

『敵の大軍が……そちらへ攻め寄せてます……。もう持ちま……』

 

 その言葉を最後に激しい爆発音と共に無線が切れる。

 

「おい!……くそっ!」

「……隊長、どうしますか?」

 

 しばらく考える。

 この扉を開ける術はある。

 が、こちらからは何も出来ない。

 時計を見る。

 だが、このまま待つだけでは敵にやられる。

 どうする?

 

「……俺達が足止めします。」

 

 そう言うと、セインは装備の確認を始める。

 セインのb中隊も準備を始めた。

 

「じゃあ我々は更に前に出て、更に足止めするとしましょう。」

 

 ゲイルまでもが準備を始めた。

 そして、当たり前かのように隊員たちもそれに続いていく。

 

「お前ら、分かってるのか?相手はあのエイブラムスXだぞ?恐らく生還は……。」

「分かってますよ。」

 

 セインは笑いながら答える。

 

「隊長はここを開ける方法を知っている。でもそれには時間がかかる。なら、誰かが足止めしないとでしょ?」

「……。」

 

 俺はそう簡単に首を縦に振れない。

 工作員がここを内側から開けてくれる手筈なのだが、予定時刻は過ぎている。

 正直、本当に開くのかどうかすら怪しい。

 

「どのみち、俺達に降伏の選択肢は無いんだ。やれるだけやりましょうよ。」

「……そうだな。すまん。頼んだぞ。」

 

 そう言うとゲイルとセインは笑顔を見せた。

 

「よし!お前等!コレが最後の仕事だ!歴史に名を刻むぞ!」

「お前等!b中隊に負けるなよ!気合入れろ!俺達だけで敵を殲滅すれば歴史に名が残るのは俺達だけだぞ!」

 

 そう隊員達に声をかけ、その場を去っていった。

 この場に残ったのは俺達a中隊だけである。

 

「頼んだぞ……。」

 

 俺は心からそう思った。

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