第26話 決死の作戦
「降下十分前です!」
「総員!これより作戦の確認を行う!」
アメリカ西海岸上空。
俺達傭兵部隊は飛行機の中にいた。
火砲の砲撃による支援により、敵前線を突破。
西海岸にアメリカの援軍として上陸した中国軍がアメリカ軍を裏切り、戦闘を開始する。
その隙に降下する。
「良いか!この作戦の成否によってアメリカの、世界の命運は決まる!敵は中国軍の攻撃により怯んでいる!降下は難なく成功するだろう!」
ここにいるのは皆傭兵だ。
元々作戦は説明し、希望者のみ参加するというものだったが、殆どが参加した。
「敵のAIを破壊すれば我々の勝利だ!前線の敵も混乱するだろう。それに応じて友軍が行動を開始する。諜報班によればAIを管理している陸軍参謀総長はサンフランシスコ郊外の核シェルターにいるという。だが、詳細な位置は不明だ。」
皆の顔が不安そうである。
こんな不確定な情報でやらなければならないのだ。
そうもなるだろう。
「この森の何処かというのは分かってる。敵の迎撃部隊を分散させ、一隊でも多くここに到達させるため部隊を三つにわける。」
他にも飛行機は飛んでいる。
三機の飛行機、それぞれが一中隊という編成だ。
「それぞれ、俺が率いる部隊をa中隊。民間軍事会社、隼が中心のb中隊。リーダーは隼隊長のセイン大尉。トップスコアが中心のc中隊。リーダーはトップスコア隊長のゲイル大尉。それぞれ、部隊長の指揮に従い作戦を遂行せよ。作戦終了後は中国軍の上陸船に回収される予定だ。そのままロシアへと逃れる。」
そう話していると大きな音とともに機体を激しい衝撃が襲う。
「対空放火です!衝撃に備えて下さい!」
パイロットが叫ぶ。
窓から外を覗くと地上から無数の弾が飛んできていた。
「クソっ!対空放火が激しすぎる!中国軍は何をしている!?」
「これじゃ目的地に付く前に落ちるぞ!」
機体をパニックが襲う。
「落ち着け!恐らくAIの予測のせいだ。中国軍の奇襲は失敗したと見ていいだろう。」
これも一応想定はしていた。
そう簡単に敵対していた国の援軍を受け入れるとは思えなかったからだ。
そう言うと、機体内が騒がしくなる。
「もう駄目だ!」
「引き返そう!今ならまだ間に合う!」
こうなるのはある程度想像がついていた。
が、そんな事で引き返すわけには行かない。
「聞け!」
叫ぶ。
そうすると、皆がこちらに視線を合わせた。
一応、階級社会だ。
俺の言う事には従う。
「お前達は何故傭兵となった?戦うことしか出来ないからか?非日常に憧れたか?そんな理由なんか今はどうでも良い。お前等の中にある物、それを当ててやろう。」
皆が黙って俺の話を聞く。
機体は先程から激しい衝撃が襲い続けている。
それを躱し続けるパイロットの腕にも感謝しなければ。
「人間、誰しも一度は歴史に名を残したいとそう思っただろう。有名になりたいとな。ここにいる奴等は生還する見込みの薄い作戦に挑んだ、歴史に名を残してやりたい、自分が生きた証を残したいと思った奴等だ。違うか!?」
実際、そうじゃないやつもいるだろう。
だが、こういうのは勢いが大事だ。
「お前等!ここで死ねば只の戦死者リストに載るだけだ!だが、ここで勝てばアメリカを倒した英雄として歴史に名を刻まれるぞ!」
そう言うと、笑顔が見え始める。
「面白れぇ!やってやろうぜ皆!」
「アメリカが何だ!俺達は戦争を食い物にしてたんだ!こんな所で無駄死にするわけが無ぇ!いや、してたまるか!」
機体の中に活気が戻る。
「よし!総員降下用意!良いか!中国軍が当てにならなくなった以上、本来の作戦の中国軍に回収してもらい、ロシアへ逃れるというのは出来なくなった!この作戦は片道切符だ!だが、作戦を遂行すればアメリカ自体が降伏する可能性がある!生き残り、名を残したければ生きて作戦を成功させろ!」
機体の後方の扉が開く。
激しい対空放火の舞う空が目の前に現れる。
「降下開始!総員!気合を入れろ!」
「了解!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます