第22話 アメリカ侵攻

「隊長!予めの作戦通り、国連軍が派遣されました!既に上陸を開始しているとの事です!」

「……東側からは友軍が。西、北、南からは敵が来るのか。」

 

 欧州方面からは大西洋を渡って大軍が既に上陸を開始した。

 が、それよりも早く南北からカナダ軍とメキシコ軍が介入し始めている。

 欧州方面から来る国連軍はこの作戦を知っていたため、それなりの準備が整っており、すぐに派遣された。

 西側からは日本、中華民国、中華人民共和国が派遣されるが、日本と中華民国は中華人民共和国が上手いこと足を引っ張ってくれている。

 派遣されるのはまだ後だろう。

 あとは首都を陥落させれば我々の勝利だ。

 不可能じゃない。

 

「隊長!欧州方面の国連軍が我々に協力すると宣言しました!アメリカ軍に対して攻撃を開始しています!」

「よし!これを待っていた!」

 

 すぐに司令部の無線を取る。

 現在はアンドルーズ空軍基地で友軍の集結を待っていたが、ここが攻め時だ。

 

「全軍!東側から上陸した国連軍は我々の友軍だ!連携し、アメリカを倒せ!首都を落とせば我々の勝利だ!」

 

 

 

 戦車が、戦闘機が、戦闘ヘリがニューヨークを、ワシントンを進んでいく。

 アメリカ軍は戦線の維持は困難と判断し、撤退。

 首都機能を最も安全と思われるサンフランシスコへと移した。

 国連軍による侵攻は破竹の勢いで、各地の蜂起した民間軍事会社を接収しつつ、規模はどんどんと大きくなっていった。

 アメリカの捕虜も、この蜂起に参加する者が増えた。

 しかし、アメリカも撤退する道中に蜂起した民間軍事会社を排除しつつ、友軍と合流しながら西海岸へ撤退していった。

 戦力は五分といった所だ。

 

「しかし、何故ここまで上手く行ったんですかね?相手にはあのアイがあるんでしょう?」

「……アイは人の感情には疎い。」


 人の行動からどういった行動をするのか予測することは可能だが、思い付きの行動は流石に予測はつかない。

 

「柏木から、旧日本軍の戦争末期の記録はエラーをよく起こしたと聞いたことがある。戦争末期、日本はカミカゼやバンザイ突撃を繰り返した。それが勝利につながる訳が無いのにそれをやった日本軍のデータを読んだアイはエラーを引き起こしたらしい。」

「じゃあ、今回の一斉蜂起を予測できなかったのも……。」

 

 俺は頷いた。

 

「そうだ。裏切るわけが無い。勝てるはずが無いのなら蜂起等起こすはずが無いという判断だったんだろうな。」

「……隊長。そのアイは一体どこにあるんですか?」

 

 今、俺達は占領下のアメリカの重要施設を片っ端から漁り、アイを探していた。

 だが、それらしきものが無い。

 

「……仕方が無い。」

「拷問……ですか?」

 

 唯一その所在を知っているであろう人物。

 アメリカ合衆国大統領。

 以前からアイの場所を聞いていたが話してはくれなかった。

 多少荒々しい手を使ってでも吐かせるとするか。

 

「この戦争、どうなりますかね?」

「まぁ、ほぼほぼ確実にこっちが勝つな。日本はロシアとかが参戦してからは国家間の戦争には加担しないとして難民の受け入れ等で援助しているに過ぎない。中華人民共和国も中華民国と戦争状態に突入した。アメリカの援軍はオーストラリアやブラジル辺りから来る程度になるだろうな。」

 

 実際、南北アメリカ大陸の多くの中小国はアメリカに味方している。

 援軍も西海岸から続々と上陸しているが、大した数ではない。

 国連軍の中核であったロシアやイギリス、フランス等が中心のアメリカ侵攻部隊は精鋭である。

 が、アメリカ海軍は健在で、大西洋の制海権は握れていない。

 こちらの援軍が来るのはかなり遅れるが、それを見越しての戦力を投入している。

 どちらにせよ、アイさえ破壊すれば怖いものは無い。

 多少強引にでも吐かせてみせよう。

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