第2話 砂漠のサソリ
アフリカ某所
「……なぁ、明日の予定は?」
「行軍訓練だ。」
暑い日差しの中事務所で水を飲みながら聞く。
因みに今日も行軍訓練だ。
「その次の日は?」
「……行軍訓練だ。」
日差しが強く、とても暑い。
室内であろうとも暑いは暑い。
カーテンはかけている。
「……その次の日は?」
「……行軍訓練。」
思わず溜息を吐く。
「スミス、他にする事はないのか?」
「射撃訓練をするにも弾がもったいないし、戦闘訓練が出来るような天候でもない。いいか、カイル。俺達は金が無いんだ。エアコンはつけられないし、こんな日差しで戦闘訓練なんかすれば熱中症で倒れるやつも出てくるだろう。そいつを治療してやる金も勿体無い。」
確かに、この暑さは酷い。
ここ数日雨も降っていないので更に暑い。
「熱中症対策が出来る程の金も勿体無い。」
「じゃあ行軍訓練は?」
「……行軍訓練の服装、荷物は自由。目的地は近くの街だ。到着したら半日程自由時間にした後、帰隊させる。」
「……まるで遠足だな。」
俺達は民間軍事会社、部隊名は砂漠の
こんなかっこいい名前をしているが、俺達が加勢した側は必ず敗北するとして有名だ。
巷では砂漠の
そのせいで案件も入ってこず、更に赤字は続く。
「これなら俺達が負担する費用は無い。費用は全部、隊員持ちだ。」
「……酷いな。」
もう一口水を飲む。
しばらく酒も飲めていない。
仕方のない事だが、そろそろ旨い酒が飲みたい。
「で、だ。」
「なんだ?急に。」
スミスが近づき、俺のテーブルの上に一枚の紙を置く。
依頼書である。
「俺達に名指しの依頼だ。」
「俺達に?最弱の俺達、砂漠の
正直、こんな最弱の民間軍事会社に依頼とは気が狂っているのではないかと思う。
とはいえ、格安で引き受ける事から弱小勢力から依頼ざれる事はあるにはあるが、そのせいで最弱の名が更に轟いてしまっている。
軽く見てみたがどうやら今回は違うらしい。
「相手は?」
「個人だ。日本人のとある博士らしい。」
日本。
現在は台湾が中国領なったことによりアジアの最前線と言える。
国際的にも緊張が高まっている地域だ。
「それで、要件は?」
「俺も知らんが、明日直接来るそうだ。その時に詳しく話すとさ。」
書面では話せないことか。
ややこしいから記せないのか、それとも書面で残すことが躊躇われる内容なのか。
どちらにせよ久々の仕事だ。
やるしか無いだろう。
「よし、片付けるぞ。流石にこの部屋で相手するわけには行かんだろう。」
「そうだな。行軍中の奴らも戻り次第手伝わせよう。」
内容にもよるが、久々にうまいビールが飲めるかもしれないのだ。
せいぜい、張り切るとしよう。
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