第34話トリシャは道に迷う その3

「ふう、お腹いっぱいだけど……これは多すぎだったよ」


運ばれた料理はかなり数は多くて、あたし1人で食べれる量でなかった。

だから大分残ってるし、中には手を付けてない料理もある。


「トリシャ様がお食べになると伝えましたら、シェフが張り切り過ぎました」

「嬉しいけど、張り切り過ぎだよ」

「残った分は賄いなどで食べますので、ご心配なく」

「それならいいけど。ところでお金だけど……」


わたしがお金を払おうとすると


「初めにも言いましたが、今回のお代は結構ですよ」


とやはり母親は断った。


「でも、150年前も払ってないから」

「そのような記録がありますが、トリシャ様からお金を取る事は出来ませんよ」

「でも、また来たら払うと約束したから」

「それでしたら……今回は150年前のお代だけ結構ですよ」

「それはそれ、これはこれだよ。だから、今回の分も払う」

「エルフはお金に無頓着と言いますが、意外としっかりしているのですね」


母親はあたしがちゃんと払うと聞いて、意外に思っている。

150年前は単にお金を持ってなかったから、払えなかっただけだから。


「150年前はお金を持ってなかっただけだから。エルフもちゃんとお金を払うよ」

「そうでしたか」

「だから、今日の分と150年前の分を払うよ」

「トリシャ様からお金を取るのは気が引けますが……そうおっしゃりますなら仕方がありません」


母親もあたしからお金を受け取る事にしたが


「では、150年前のお代と踏めて銀貨2枚でよろしいです」


と明らかに少ない額を言ったのだった。


「どう見ても銀貨1枚の量ではないよ」

「料理全体ではそうです。ただ、わたしどもが勝手に出しただけなので

トリシャ様がお食べになった分だけで結構です。150年前の分は詳しい額がわかりませんので」

「そうだとしても、銀貨1枚でなく……両方で金貨2枚。これはあたしがの気持ちも入ってる」

「そんな、金貨2枚は多すぎです」

「150年前の利子を考えればこれぐらいになるよ。それに……そろそろ城か教会に行かないとならないから」

「そうですか。トリシャ様がおっしゃる以上は受け取ります」


母親は渋々ながら、わたしから金貨2枚を受け取った。


「本音としましたら、魔王を倒した英雄であるトリシャ様からお金を取るのは気が引けるのです」

「あたしはただファーガスについて行っただけだし、倒したのはファーガスで何もしてないよ」

「そうだとしましても、トリシャ様は伝説のお方ですから」

「大袈裟だよ」

「そんな事はありませんよ。今もフローラ殿下と旅をなされますし」

「それは……今回の話が面白そうだったし、夢で見たから面白そうだったからだよ」

「そうでありましましても、こうしてわたしたちとも出会いましたし、何かの巡り合わせですよ」


子孫に会うのは偶然と思うけど、人間はこう言うのが好きだから合わせよう。


「そうかもしれないね。あたしもお腹いっぱいになったから」

「ありがとうざいます。ところで、魔王は復活したのでしょうか」


母親が聞いて来たけど、復活はしたのは確かだが……まだ王様の発表はない。

温泉から帰ってきた時の姫様の報告では、王様は発表すると言ってはいたけど。

だから、あたしから言うのはダメだと思う。


「どうだろね、あたしも全てを知っている訳ではないから」

「そうですよね、言えない事もありますから」

「そうだね、言えない事は多いですよね」


母親が魔王が復活した事を知っているとは思わないけど、なんか察してる感じはする。

ただ、これ以上言うのはやめておこう。


「そろそろ、お店を出るけど……教会とお城。どっちが近い?」

「ここからですと、教会ですね。店をでて通りを右に行けばよいので迷いませんよ」

「そうなんだ、ありがとう。それじゃ、いくよ」

「外までお見送りしますね」

「わかった、お願いするよ」


この母親は断ってもするだろうから、見送ってもらう事にする。


「150年前のお金も払えて良かったよ」

「こちらこそ、150年後に来ていただきありがとうございます」

「では、あたしは教会へ行くよ」

「お気をつけて」


あたしは店から教会へ向かうが、人の流れに流されて反対側に行ってしまった。

あたしは何とか店の前に再び戻ると


「トリシャ様、そちらは逆ですよ」


と言われてしまった。


「わ、わかってるよ」

「ああ、すみません、人が多くて反対側に行かれたのですね。

エルフは大勢の人間が苦手と聞いていますので、わたしが教会までお送りしますよ」

「お、お願い……」

「では、はぐれないようにお手を失礼します」


母親そう言ってあたしの手を取ると、まるで子供の様に手を繋いで教会へ案内された。


「教会に着きましたので、失礼します」

「ありがとう」


母親のお陰で無事に教会に着いたけど、陽はかなり傾いて来た。

正直、教会には来たくないが、イザベラが居ないとお城に帰れる自信がない。


「おや、あなたは……トリシャ様ではないですか」


教会の前で番人があたしを見つけて声をかけて来た。


「うん、そうだよ」

「こちらに来たと言う事は、イザベラ様にお会いに来たのですか?」

「そうだけど、まだいるかな?」

「イザベル様は先程城へ戻られました」

「そ、そうなんだ」

「しばらくお待ちしていましたが、お時間もありますしお先に戻られました。

ただ、封書をお預かりしましたので、どうぞお受け取りください」


番人からイザベラから預かったという封書を受け取るが


『トリシャへ。トリシャの事だから、道に迷ってると思うけど

これを受け取ったって事は、教会にまで来たと言う事ですね。

この封書が開いたら、わたくしに知らせがくる魔法が施してありますので

これを読んだのならば、教会の前でお待ちください』


と書いてあったが、イザベラの魔力も感じたので書いてあるどおりだ。


「どうやら、迎えが来るからここでまっていいかな」

「はい、構いませんよ。良ければお迎えが来るまで中にお入りください」

「そんなに気を使わなくてもいいよ。それに、ここに居た方がすぐ見つかるだろうし」

「わかりました」


あたしは教会の中に入りたくないから、番人の申し出を断った。

教会が何で嫌いかはよくわからない。

昔、嫌な事があったけどそこまで嫌うほどでもない。

でも、何故か教会に入る気がしないの何故だろう。

思い出しても、思い出せなから大した理由でもないんだろう。

嫌いになるなんて、意外と些細な事だったりするから。

それに……早く迎えに来ないかな、なんか人間たちがあたしを見てるんだけど……。


日が暮れてくる頃、馬車がこちらへ向かってあたしの前に止まったがやっと迎えが来た。


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