ファーガス地方

第26話 姫様、王都に戻る

イザベラとはすぐに合流しましたが、レンゼ山の温泉街には結局3日滞在しました。

アルテイル様からマオが復活したと聞きましたが、人間が辿り着けない場所な上に

本来は引きこもりのマオですので、引きこもっているのならば悪さもしないので

急いで帰る事もないのですが、流石にこれ以上はと言う事で王都に戻ります。


「休暇はまだ残っていますが、仕方がありません」

「あたしも、まだまだ温泉を楽しみたいよ」

「トリシャは温泉に入っている方が長いぐらい、温泉に浸かりすぎだよ」

「アルニル、流石にそれは大袈裟」

「でも、1日の大半を温泉ですごしたでしょ」

「だって、温泉に来たんだから」

「そうですよ、トリシャの言う通りです」


イザベラとトリシャ様は温泉に未練がありますが、温泉街を後にします。

宿の主人と滞在中にお世話になった教会の神父様に挨拶をします。


「フローラ殿下、このような山奥の教会で祈りを女神アルテイルに祈りを捧げて頂きありがとうございます」

「いえ、王国を守る女神に王国の王女であるわたしが祈りを捧げるのは当然の事です」


神父様の前ではこのように言いますが、実際は……ですからね。

しかし、教会ならばアルテイル様と話ができますので、祈りの時はわたし1人にしてもらいました。

ただ、アルテイル様はご自分も温泉に行きたいというだけでしたが。


「では、わたくしはこれで」

「シスター・イザベラ、お気をつけて」

「はい、お役目が済みましたら、また来ますので」

「わたしもまた来ます」

「フローラ殿下もお気をつけて」


わたしたちは温泉街を後にします。

帰りは下りなので、登りよりは楽ですが、下りの方がケガをしやすいとい

アルニルが言うので、登り同様に注意して下りました。

そして、無事に麓の町に着きましたが、昼すぎなので今から出発すると

途中で日が暮れますので、まだ早いですがこの日は麓の町に泊まります。


翌朝、朝一番に宿を出発します。

ベアグに襲われた場所を通りますが、今回は何事もなく通過できました。


「そういえば、エモリーはどうしたのでしょう」


わたしたちの後を麓の町までついてきましたが、アランに聞きましても

レンゼ山の温泉街では姿を見てないそうです。


「エモリーとは誰ですか?」


イザベラが聞きます。


「なんか、途中から着いて来た賊だよ。姫様を見て照れてたよ」

「そうなんですか」

「あと、アラン君をからかってた」

「そうなんですね」

「ただ、王族には敬意を払っていますね」

「賊が王族に敬意を払うとは、珍しい」


賊はベアグの様に王族は金づるになる人質にしか思ってません。

なので、エモリーのように王族に敬意を持っている賊は珍しいようです。


「エモリーの事だから、きっとアラン君をからかうよ」


アルニルがそういうと、外から


「こら、エモリー!落馬するどころだったぞ!」

「これぐらいで落馬するようじゃ、戦場で役に立たないぞ!」

「おい、逃げるな!」

「賊だから逃げるんだよ!」


というアランとエモリーの声が聞こえて来ました。


「噂をすればかな」

「みたいです」


アランは馬でエモリーを追いかけますが……アランが先に行ったら

護衛の意味がないと思いますが。


「あの2人はなんか仲がいいよね」

「そうですか?」

「エモリーがアランをからかっているだけですよね」

「だとしても、あの2人を見てると楽しいよ」

「それはわかる」


トリシャ様とアルニルはそう言いますが、どうみても一方的にアランが

からかわれているだけだと思います。


「戻ってきましたね」


しばらくすると、アランが戻ってきましたが馬を馬車の横につけます。


「フローラ様、護衛である自分が先に行ってしまい、失礼しました」

「いえ、エモリーは賊ですから、賊を追いかけるのは護衛の役目を果たしています」

「馬上からですが、そう言って頂きありがとうございます」


アランは馬上から礼をすると、馬車の横を馬でついてきます。


「騎士くんの乗り方もなんか、上手くなったね」

「馬もアランを認めたのでしょう。そろそろトリシャも認めたらどうです」

「まだ騎士くんは何もしてないし、アルニルがちょろいだけだよ」

「うるさいな」


アルニルは頬を染めていますが、その横でイザベラが笑っています。


「このやり取り懐かしいですね。前世からトリシャとアルニルは仲が良かったですし

トリシャもアンディだった頃は女装の仕方を教えていましたからね」

「そ、それをいないでくだい」

「女性はあたしだけだったけど、エルフは人間みたく化粧はそこまでしないけどね」


この事はファーガスの記憶にはないので、ファーガスの見ていない所でやっていたのでしょう。

アンディだった頃に女装して街に行っていた事は知っていますが、アンディアは

戦士でありましたが、意外と細身でしたの女性の格好をしても綺麗でした。


「昔の話は良いではないですか」

「ですね、昔の話はお互い恥ずかしいですから」

「2人は姿もすっかり変わってるしね」

「わたしとしては女性になれたので、嬉しいです」

「わたくしは性別はどちらでもよかったのですが、聖職者以外の仕事に

就きたかったですが、どうやらわたくしは聖職者になる宿命の様です」

「そうなると、ファーガスが一番変わったかな」

「不完全ではありますが」


わたしはファーガスが拒否したため、半端に生まれ変わりましたが

皆さんの話や自分の中に記憶から、ファーガスが王女にならなくてよかった気もします……。


 そのような話をしながら、馬車順調に進んできます。

往路で宿泊した街の宿に泊まり、 そして間もなく王都へ到着しましす。


「結局、ここまでついて来たんだな」

「男1人で寂しく馬に乗っている騎士様のお相手をしてやっただけさ」

「余計な事を」

「でも、俺はここまでだな」

「ここまで来たのならば、王都に来ればいいではないか」

「馬鹿言え、俺は賊だぞ、王都は入ったら捕まって首を飛ばされ、さらし首さ」

「いい機会だな、是非王都に来てくれ」

「どこだ。俺はここでずらかるよ」


エモリーは王都の手間で引き返してました。


「エモリーは王都には来ないのでしょうか」

「姫様、手配中の賊が王都には言ったら捕まるよ」

「そうですね……え、そうなのですか?」

「もしかして、フローラ様はエモリーが手配中なのを知らなかったのですか?」

「は、はい」


この答えにアルニルだけでなく、トリシャ様も苦笑いをします。


「賊たちを率いて何年も旅人や商人を襲っているのですから、手配中ですよ」

「姫様の事なので、手配中なのは知ってる思ってたよ」

「実は……知りませんでした……」

「エモリーを捕まえないと言ったのは、手配中なのを知っていて見逃したのではないのですか?」

「あ、あれは、先を急ぐのと、エモリーたちは何もしませんでしたから……」

「そうでしたか……」


アルニルはため息をつきますが、手配中なのは知りませんでした。


「町中に手配書がありましたが……フローラ様が手配書を知るはずのないですね。

さ、王都に到着です」


城壁の門の衛兵に到着を報告しますと、兵が到着を知らせに王城へ馬を走らせます。

そして、兵たちにより大通りの通行を止めますと、わたしたちは王城へ向かいます。

大通りには大勢の民衆が手を振っていますが、わたしもそれに応えます。


「フローラ様は人気ですね」

「綺麗ですし、なにせ勇者ファーガスの生まれ変わりですから」

「でも、わたしが全く戦えない事は秘密です」

「そうなのですか?」

「イザベラは知らないけど、剣の腕はまったくで学院の授業でも失格なほどです」

「そうなのですか?」

「え、ええ……」

「王女殿下なので、試験はおまけをしてもらっています」

「そ、それを言わないいでください。わたしだって王女の力で試験を合格をしたくありませんので……」

「しかし、そうしませんと不合格ですけどね」

「そ、そうですが……」


剣術の試験はおまけで合格とされてますが、実際は合格はできません。

ただ、王女が落第したのでは、学院としても気を使いますし

王族としても示しがつきませんので、合格にしてます。

わたしも剣の腕がせめて、人並みにあれば良かったのですが……。


「なるほど、だから不完全の形の生まれ変わりなのですね」

「は、はい……」

「しかたがありません。ただ、記憶や知識はお持ちでありますね」

「はい。記憶がありますので、皆さんの思いでのお話も聞いていてわかります」

「それは良かったでしす。知識の方はどうなのですか?」

「今の所、特に役立ってはいません。ただ、戦い方で相手の技量を予測できます」

「ファーガスは見ただけで相手の技量がわかりましたからね。

剣を使えないのは残念ですが、人を鍛えるのはどうなのでしょう」


イザベラはこのように言いますが、人を鍛えるのの良いのかもしれません。

ただ、鍛えると言っても、どなたを鍛えればよいのでしょう。


「鍛えると言いましても、どなたを鍛えればよいのでしょう」

「フローラ様、すぐ近くにいるではありませんか」

「そ、それはつまり……」

「アランですよ」


イザベラさんはアランの方を見て言いますか……アランですか。

アランに今回だけと思っていましたが、ベアグの部下たちとの戦いでは

初めての実戦でしたが、アルニルも満足していました。


 事前に聞いたお話では、精神的にもろい所があるそうですが

戦いを見てますと、そのような事はありませんでした。

なので、鍛えるのも良いとは思いますが、この先の戦いは

魔王や怪物との戦いになりますので、アランが戦う事が出来るのでしょうか。


「鍛えるのは良いのですが、魔王討伐に行けるのでしょうか」

「普通の装備では無理です。ただ、魔王軍と戦っていましたので

その記録はちゃんとまとめありますし、ドワーフたちの村に行き武器を作ってもらいました」


確かに、魔王軍との戦いはファーガスが魔王を討伐するまで30年続いていました。

魔王討伐後、残党の征伐も行われましたので、それらの記憶もあります。

そして、その時に使われた武器の記録もありますが、武器はドワーフが作ったものです。


「ドワーフの村にいくの?」


トリシャ様が訪ねます。


「まだわかりませんが、魔王と戦う武器は必要ですよね?」

「ファーガスが使ていた剣とかは、残ってないの?」

「そうですね……」


わたしは記憶をたどりますが、ファーガス地方の領主の館に保管してあったのは確かです。

ファーガスは息子たちに剣や鎧などは魔王復活の日まで

ちゃんと保管するようにと遺言を残してはます。

ファーガス地方といいますか、ファーガス領は現在もファーガスの子孫が

領主を務めていますので、もしかしたら現在も保管されているのかもしれません。


「残したそうですが、200年経っていますからね」

「それじゃ、確かめに行こうよ」

「そうですね」

「トリシャ、やはりエルフとドワーフは仲が悪いのですか?」

「それは昔の話でだよ、多分……」


トリシャ様は濁しますが、エルフとドワーフは仲が悪いですが

以前ほどでなく、今では交流もあります。

ただ、トリシャ様は単にドワーフののりが苦手なだけみたいです。


「トリシャはドワーフが苦手なだけだからね」

「頼んでないのに近づいてくる、あの距離感が苦手だよ」

「もっとも、トリシャは人づきあい自体が苦手ですからね」

「イザベラ、それは昔の話だから」

「そうですね、そうしうことにしておきます」

「王城に戻りましたら、お父様にお話してファーガス地方へ向かましょう。

その時は、またアランを護衛をお願いします」

「そうですね」


お話をしながら民衆に応えていましたら、馬車は無事に王城へと到着したのでありました。

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