第12話 温泉のシスター

「やはり、ここの湯は良いですね」


温泉に来て10日経ちましたが、やはりここの温泉はよいものです。

1か月の休暇を無理やり取りましたが、これからフローラ様と旅に出ますので

旅に備えて鋭気を養うためです。

しかし、あのフローラ様がファーガスの生まれ変わりとは思いもしませんでした。

あと、アルテイル様のお話ではアンディはアルニルと言う女性になり

フローラ様の侍女になっているそうですし。

多分、アルテイル様がそのようにしてくださったのでしょう。


 お湯に浸かりながらこのような事を感がていますが、アンディが女性として

生まれ変わったのはわかりますが、わたくし自身も女性として生まれ変わるとは思いもしませんでした。

ただ、生まれ変わった以上は仕方がありません。

それに、女性同士というのは男性同士と比べて一線を越えやすいですね。

わたくしも超えて……いえ、何でもありません。


 ただ、さすがに王女に手を出す事はしません。

いえ、シスター同士以外の関係をもつことはありません。

同性愛は表向きは禁止になっていますが、実際は教会内では同性同士で……いえ、なんでもありません。

今は温泉に浸かっていますので、余計な事を考えずのんびりする事とします。



「ふう、いいお湯でした」


湯からでて、湯上りの時にリネンの薄い服をきて脱衣所にある長椅子に座りやすみます。

レンゼ山の温泉はとても温まり出た後は暑いぐらいです。

なので、温泉施設が用意しているリネンの薄い服を着るのです。

この服は涼しく乾きやすいので、湯上りには良いのです。


レンゼ山は山の上で、夏でも涼しいので湯上りにはとても気持ちが良いです。

長椅子にしばらく座っていると、身体も乾きましたのでシスター服を着て温泉施設を出て宿に戻ります。

宿にも温泉はありますが、こちらの温泉施設の方広く、温泉街の宿に泊っていれば

無料で使用できるのでこちらの施設はとても人気です。

ただ、温泉施設は夜になると閉まるので、夜は宿の温泉に浸かります。


 温泉施設を出ると、宿に戻りつつ温泉街を散歩します。

温泉街と言っても、山の中の温泉街ですのでさほど広くなく5軒ほどの宿に

飲食店が3軒、萬屋が1軒、薬屋が1軒に診療所と公園に先ほど行った温泉施設があるぐらいです。

なので、少し歩けは温泉街は終わり、温泉街の先はレンゼ山の修行の場になっております。


 レンゼ山は修行の場でありますが、女人禁制のたの門の手前にレンゼ山を

管理する教会がありますが、わたくしはその教会までしか行く事が出来ません。

ただ、前世ではレンゼ山で修行をしましたので、あの門の先にはもういきたくはありませんが。


 教会まで来たので、折り返して宿に戻ろとすると


「シスター・イザベラ、こんにちは」


と神父のエカードさんが挨拶をしてきましたのでわくたしも挨拶をします。


「ファーザー・エカード、こんにちは」

「今日もお散歩ですか?」

「はい、湯に浸かったので少し涼みながら歩いています」

「そうですか。しかし、温泉以外何もない所で退屈でしょう」

「その退屈が良いのです。湯に浸かり、山の景色を見て、そして湯に浸かる。

まさに贅沢の極みです」

「そういものなのですね。私もまだまだですかね」

「ファーザー・エカードは教会と修行場の管理というお仕事があるではありませんか」

「管理と言っても、老いぼれ神父は掃除と神に祈るだけしかできませんよ」

「聖職者として、神に祈るのは立派なお仕事です」

「確かにそうですね。お若いシスター・イザベラに言われるようでは、やはり私はまだまだかもしれません」


ファーザー・エカードはこう言いますが、わたくしはファーガスと魔王を倒した1人ですからね。

ただ、実際は酒と女が好きな生臭ではありましたが、ファーガスと魔王を倒した事により

教会内でも高い地位を得ましたが、わたくしの柄ではなかったのでさっさとその地位を捨て

田舎の教会で余生をすごしました。


 ただ、生まれ変わったのにまた教会のシスターになりましたが。

さらに、前世よりも現在の方がむしろ聖職者らしく、神に仕えていると思ってはいます。

しかし、再び魔王が復活するようですし、ファーガスの生まれ変りがフローラ姫だとは思いもしませんでしたが。


 国王陛下の魔導通信でその事を知りましたが、アンディの生まれ変わりは

既に見つかっていますし、トリシャの事ですから事前に夢のお告げで王都に向かったはずですので

多分、今頃はフローラ姫と合流しているのでしょう。


 となると、わたくしの所にもそろそろ来る頃ですかね。

魔導通信を聞いて王都にも戻っても良かったのですが、せっかく1か月の休暇を得て

毎年楽しみにしているこの温泉地に来ましたので、自ら王都に戻るのも損ですし。

なので、わたくしからでなく、姫様に来てもらう事にしたのは内緒です。


 レンゼ山は魔導通信やアルテイル様の監視は届きにくい場所ですからね。

こう言ってはなんですが誤魔化しは利きます。

それに、王都からここまでなら早くても3日はかかりますしからね。

なので、それまでゆっくり湯に浸かり、山の幸を食べてゆっくり待ちましょう。 


「若輩のわたくしは偉そうな事を言てしまったようですね」

「いえ、そんな事はありません。私なんて、シスター・イザベラと同じ年の頃は俗世にまみれ、到底聖職者と言えるものでありませんでした」

「いえいえ、勇者と共に魔王を倒したダニエルも実際は妻帯し酒を飲んでいましたらら」

「そう言われると何も言えませんね。では、私は中に戻りますので」

「わかりました。それでまた」


ファーザー・エカードは教会の中に戻りました。

自分の事を話して納得されるほど、わたくしは生臭と後世に思われていますが

自分でも、そう思ってますから仕方がありませんが。

神父と話をしていましたら、冷えてきましたが春とはいえ山の上は雪融けが終わったばかりですからね。

温まった身体が冷めてしましましたので、わたくしは宿に戻り再び湯に浸かったのでした。

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