奴隷の魔力量を測定しました

「ルナが悪かったな。でも俺が何か言ったところでコイツを諦める気はないんだろう?」

「諦めるも何も、その減らず口の対価としてそこのクソ獣人にはその身体で理解してもらおうってことさ」


 なんて面倒なことに巻き込まれてしまったのだろう。俺も原因の一端を担っているとはいえ、この状況はどう打開すればいいんだろう。まったく本当にどうしてくれようか。謝って許してもらうのは絶対に無理だし、周りは面白がって賭けを始めている。ギルドも相当な場合でなければ、手を出してこないだろうし俺だけで解決するしかないな。


「身体で詫びろってお前、そりゃあんまりだぜ。ルナはまだ綺麗なままなんだからな。俺が最初に頂かなくちゃダメだろう。な、そうだろうルナ?」


 ルナはふざけんなという軽蔑の表情をしている。俺もこのスキンヘッドの売り言葉に買い言葉で応対しているが余計なことだけは言ってくれるなよ。


「はあ? 私はあなた方に身体を自由にさせるつもりもありません。もちろんご主人様もです。これ以上、気持ち悪いことばかり言い続けるのなら、玉蹴り飛ばして不能にして差し上げますよご主人様」

「なんで俺だけなんだよ!」


 この野郎、かなり口が悪いぞ。それに玉を蹴り飛ばす発言にスキンヘッドもすっかり股を手で覆っている。俺もだがおそらく、股のあたりがひゅっとしたことだろう。怖い発言でしかない。


「な、なあ、俺たちはこれからも関係であろうな」


 スキンヘッドは俺に近づいてきた。殴るのかとばかり思って構えたがどうもそうではないらしい」


「この女は敵にしたらヤバい。今日は何もしねえ、というかしたら男としての尊厳が全て奪われちまいそうだ」


 冷汗をかいたスキンヘッドは俺の耳元でルナに対する明らかな恐怖感を示してギルドを出ていった。


「何だったんだ。あれだけ威勢はよかったのに何だかあっけなかった」

「ご主人様もあの方と同じようなこと、仰りませんよね……?」

「もちろんだ。そもそも、若干話がこじれる原因になったのはお前の発言だからな。今回はどうにか本格的なトラブルになる前に収まったけど、もう誰かを煽るのは、特にギルドではやめてくれよ」


 俺的にはもうこんな面倒なことになるのは最初の時だけで勘弁だ。ルナも分かりましたと口でこそ言っているが、かなり不満気だ。どうして自分も何か言われなくてはいけないのか理解してくれていないようだ。これは反抗的とみなされても仕方ないかもしれない。少しだけ謎は解けたかもしれない。


「まあ、とりあえず当初の目的を果たそうか。魔力量を測るのには受付で手続きをしなくちゃいけないからな」


 拍子抜けしている野郎どもを横目に、受付へと向かう。


「この娘の魔力量の測定を頼みたいんだ」

「承りました。それよりも、ギルド内で変なもめ事を起こすのはやめてくださいね」


 受付嬢にも釘を刺された形だ。今回に関しては俺、ほとんど悪くないのにな。


「今、自分は悪くないのにって思ったでしょう。確かに今回はそうかもしれませんが、前に大乱闘をしたときには絡まれたとはいえ、しばらくの間再起不能になった人が何人いたと思っているんですか。その対処で私たちも大変だったんですからね。ですから何年、何か月たとうともこの街のギルドであななが要注意人物から外れることはありません」

「あの、先ほどからご主人様たちは何のことについてお話をしているのですか?」


 あまりルナには知られたくなかったが、もう仕方がないか。


「ここにいる翔太さんはですね、2か月ほど前に、かなりの問題冒険者に酷い絡まれ方をしたんです。そこまではよくある話でギルドとしても解決に苦慮しているようなことでした。ですが、どういうわけか、乗り気になった翔太さんが絡んできた複数の冒険者をボコボコに打ちのめしてしまったんですよね。それで済んでいたら荒れ者を対処していただいたということで感謝するべきことなのですが……」


 俺もここで終わらせておけばよかったと反省している。


「お話的にはそれで終わっていないんですよね」

「その通りです。ご覧の通り、当ギルドでは軽食などもとることができまして、翔太さんたちの喧嘩の影響が周りにまで及んでしまいまして、そのことに腹を立てた別の冒険者が文句を翔太さんに言ったら、逆に煽ってまた喧嘩になってしまい、その連鎖から、この中でプロレスのような大乱闘が発生してしまいました。その結果、重傷者が何人もでる結果となり、少しの間ギルドが機能不全を起こす程度には大変なことになってしまったんです」


 今、聞いても酷いものだ。黒歴史みたいな感じだ。これのせいでギルドからは要注意人物認定されるし、冒険者からはトラブルメーカー扱いされるし散々な目にあった。


「それ、かなりご主人様が悪いですよね」

「それは言わないでくれ。分かっているけど、改めて言われると心が痛い……」


 この話ばかりしていたらルナの魔力量を測定できないまま終わってしまう。なんとか軌道修正しなければ。


「それより、さっきも言ったけど魔力量の測定を頼みたいんだが?」

「あら、すみません。魔力量の測定でしたら、二階の部屋で行いますのでこちらへお越し下さい」


 受付嬢は立ち上がり俺とルナを別室へと案内した。通された二階の部屋には計測するためのそれなりに大きな機械が置いてあった。


「簡易的なものと伺っています」

「問題ない。測るのは俺じゃなくてこいつだ。名前はルナという」

「よろしくお願いします」


 受付嬢はルナに大きな機器の横にある水晶に手を置くように指示する。


「この水晶に手を置くことでこの大きな機械のこの部分の色が変わります。その色で魔力量が分かります。詳細に知りたければもう少し違う測り方をしますが、簡易的なものでも十分に役割は果たせるかと思います。ではルナさんの準備も整ったようですので計測を始めます」


 受付嬢は機械の操作して作動させた。すると徐々に俺の見ているメーターの色が変わっていく。最初は薄い色だったのが最終的には結構濃い色にまでなった。この色は濃ければ濃いほど、魔力が多いことを示している。


「この色はすごいですね。翔太さんはとても運がいいのかもしれませんね」


 受付嬢も感嘆する程度には結果はいいようだ。


「あの何色だったのでしょうか」


 ルナは不安そうにこちらを見てくる。


「濃い青だな。これほどの色が出るのはかなり珍しいらしいぞ。つまりルナの魔力量はかなり多いらしいからとりあえず魔法を使う練習をしてみようか」

「はい!」


 やけに嬉しそうだな。でもいい結果が出てくれて、俺も嬉しい気持ちはある。よかったよかった。あ、ということは次に行く、。武器屋でルナが買う武器が決まったな。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る