真、旅の記録

つよし

第一章 初めての事件

第1話 プロローグ


 暑い……。

 暑いがそれ以上に、気持ちが高ぶっていた。

 この道の先に純金が眠っているという話を聞いて、ガタイのいい男は仲間を引き連れて歩いていた。

「おい、まだかよ」

 一人の男がリュックサックを背負いながら言った。

「ちょっと待ってくれ」

 そう言って、ガタイのいい男は古びた紙を広げた。

 それは財宝が眠っているという、地図だった。

 ある所で、噂が噂を呼び、男は一万円もして買った紙切れだ。

 しかし、それだけの価値はあるものだと断定していた。

「この先に洞窟がある。それを入ってしばらくしたら行き止まりになるはずだ。そこでシャベルを使って掘り起こすとあるらしい」

「よしわかった。行くぞ」

 別の髭の生やした男は後の四人を鼓舞して言った。

「お父さん、本当にこの先にあるんだね」

 十歳ちょっとという声変りをした子供もいた。

「ああ、そうだ。リーダーが言うから間違いない。お宝の山があるんだぞ」

 そう言って、子供の父親は両手を大きく広げたジェスチャーをした。

「へえ、俺、トレジャーハンターになって、日本のいろんなお宝を手に入れるんだ」

「いいぞ、宝探しは面白いぞ。今から一生懸命体を鍛えるんだ」

 そう親子のやり取りを聞きながら、ガタイのいいリーダーは、ふと、この親子の楽しい気持ちを壊したくないと思っていた。

 宝がもうじき入る。

 今まで、何度も失敗してきた。しかし、今回は本当だ。

 そして、手に入れた金で、この六人で楽しい時間を共にするんだ。

 リーダーの男はそう決めていた。


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