第111話 中ダンジョン挑戦前の休日②

 359.


「はい、これ」

 続いて紙を渡してきたのは、一ノ瀬さんだ。

 とはいえ彼女こそ昨日確認したばかりなので、そこまで大きな違いはないだろう。


 名前 :一ノ瀬 奈津

 性別 :女

 レベル:15→17

 力  :19→22

 魔力 :36→41

 耐久 :17→20

 素早さ:24→28

 耐性 :30→34


 スキル:細工2(11%) 魅了 拡散2(9%) 集束 伝心 誘眠1(0%)


 彼女の新スキルは、『誘眠1』。 名前通りなら、対象を眠らせるスキルだろうけど…元々の所持スキルである『拡散2』と組み合わせたら、かなり大きな効果が期待できそうだ。

 ついでに『伝心』を『拡散』させて、全員への指示出しなども担えそうではある。 性格的に難しいかもしれないけど。

「うちも、これ」

 なぜか全員が俺に渡す流れが出来上がっていて、白河さんも紙を渡してきた。

 まぁ、俺からみんなへ渡していけばいいだけなんだけども。


 名前 :白河 渚

 性別 :女

 レベル:8→14

 力  :10→23

 魔力 :18→40

 耐久 :8→17

 素早さ:14→27

 耐性 :10→21


 スキル:弓術3(25%) 調理1(67%) 液体操作 苦痛耐性


 彼女はダンジョンのクリア経験がほとんどないため、スキル欄がほぼ初期のままだ。

 他のメンバーに比べると寂しく感じてしまうけど、『液体操作』はかなり強力なスキルなので十分な戦力だろう。

「では、私も」

 そう言って紙を渡してきたのは、さっきまで『風魔法』に夢中だった宮森さん。


 名前 :宮森 梓

 性別 :女

 レベル:13→20

 力  :37→57

 魔力 :17→26

 耐久 :28→44

 素早さ:42→64

 耐性 :15→24


 スキル:剣術7(98%) 幻影刃2(52%) 風纏 斬鋼


 真っ先に目につくのは、やはり『剣術7』。 しかも98%ということはほぼ8だ。

 そして『風纏』と『斬鋼』、新スキルが2つか。 名前的に、おそらく…

「発動できないのは、『風纏』ですか?」

「うむ。 何度か試してみたのだが、うんともすんとも言わなくてな」

 身に覚えのある話だ。 これならなんとかなりそう、という安心感と共に、俺は頷いた。


 360.


「あれ、そういえば姉さんは?」

 周囲を見回してみると、いつの間にかいなくなっている。

 俺の声に反応したことりが、手を挙げて言った。

「ユイねえ、ちょっと用があるんだって。 これ、レオにいにって」

「ん? あぁ、ステータスか」


 名前 :八島 唯花

 性別 :女

 レベル:9→22

 力  :19→48

 魔力 :24→56

 耐久 :17→42

 素早さ:21→47

 耐性 :12→31


 スキル:体術6→7(37→3%) 調理3→4(11→2%) 地図作成1→2(22→4%) 熱魔法1→4(0→22%) 魔力操作2(46%) 回旋 気功1(5%)


 そういえば姉さんのステータスも、ちゃんと確認したのは久しぶりだ。

 『気功1』とかいう見慣れない物もあるし、どれだけ成長しているんだろうか。

「じゃあ、あとは清志郎さん」

「あぁ。 一応、俺のはこれだ」

 彼のステータスも昨日確認したばかりなので、省いてもいいかとは思ったけど、ボーナスでなにをもらったのかは少し気になる。

 提示された紙に書かれていた内容は、以下の通りだった。


 名前 :大竹 清志郎

 性別 :男

 レベル:15→18

 力  :48→58

 魔力 :9→10

 耐久 :52→63

 素早さ:36→44

 耐性 :9→10


 スキル:体術5(53→71%) 調理5(33%) 吸着 身体強化1(0%) 気弾


 なるほど、『気弾』か。 ゴーストなどの物理無効系に対抗する手段として、このスキルをもらったんだろう。

 弾というからには、遠距離攻撃もできるのかもしれない。

「ちなみに、この『気弾』は発動できるんですか?」

「一応、できる」

 言いながら、彼は腰を落とし、右の手首を左手で掴み、顔の前に掲げて力を籠め始めた。

「むん…!」

 顔が真っ赤に染まり、額に青筋が浮かび始めると同時に、手のひらの少し上に真っ白な球体が出現する。 これが『気弾』?

 全員の見つめる視線の先で、数秒ほど浮遊し続けた球体は唐突に消失した。

「っはぁ! はぁ、はぁ…」

 脱力した清志郎さんが地面に膝をつき、深呼吸を繰り返す。

 しかし顔色は青いというよりもむしろ真っ赤で、魔力切れという感じではない。

「だ、大丈夫ですか?」

 とりあえず控えめに声をかけてみると、彼は荒い息を吐きながらも答えてくれた。

「はぁ、はぁ…だ、大丈夫、だ…はぁ…これを、使うと…はぁ、はぁ…体力を、ひどく持っていかれて、な…ふぅぅ」

 ようやく落ち着いたのか、清志郎さんが顔を上げる。

 その額には玉のように汗が浮かんでいた。

 魔力じゃなくて、体力を消費するスキル…そんな物もあるのか。


 361.


 俺も『取得経験値5倍』以外偽りなく紙に記載して全員に公開し、これでひとまず全員のステータスが判明したことになる。

 あとは確認の過程で感じた疑問点を解消していこう。

「銀次。 『入魂』ってどんなスキルなんだ?」

「うッス! こう、グッ!として、ガッ!といくと、ドカーン!となります!」

 うん、予想はしてたけど、全然わからん。

「…もうちょっと詳しく説明できるか?」

「詳しくッスか。 えーっと…まず、グッ!と気合を入れるんスよ」

「ふむ」

「そんで、ガッ!と殴ると、ドカーン!と敵が吹っ飛ぶ感じッス!」

「…なるほど」

 無理っぽかったので、あきらめた。

 フィーリングで想像するなら、次の一撃を強力にするスキル、だろうか?

 ことりの『風魔法1』と一ノ瀬さんの『誘眠1』は未使用だから、聞いてもわからないだろうし、次は…

「じゃあ、宮森さん。 『風纏』と『斬鋼』について教えてもらえますか?」

「うむ。 『風纏』だが、そのままズバリ、風を纏うスキルだな。 移動力を向上させることができる。 そして『斬鋼』は…よくわからん」

「えっ」

 てっきり彼女のことだから、試し終わっているものとばかり考えていたので、かなり意外だ。

 なので、そう本人へ伝えてみると、

「いや、誤解しないでくれ。 試してはみたんだ。 しかし、発動しているのかどうか、自分でもよくわからなくてな」

 と、珍しく困った様子で返された。

「パッシブスキルなんじゃないの?」

 と、唐突に口にしたのは、一ノ瀬さん。

 見れば、またしても意図せず注目を集めてしまった彼女は、赤い顔でそっぽを向いている。

「ごめん、パッシブってなに?」

 わからないことは聞いてみるに限る。 俺が素直に問いかけると、彼女は少し驚いた様子で言った。

「え、知らないの? 能動的に使うアクティブスキルじゃなくて、自動的に常時発動してる物をパッシブスキルっていうんだけど」

 …え、常識なの? 俺自身、ゲームとか本当にやらないので、全く聞いたことがなかったんだけど。

 周囲を見回してみると、ほとんどの人は知っていた様子。 俺と同じようにぽかんとしていたのは、宮森さんくらいなものだ。

 その区分でいくと、俺のスキルでは『取得経験値5倍』を筆頭に、『中治癒促進』、『死線察知1』、『斬魔』、『精神防壁』、『劣化神眼』がパッシブということになるのだろうか。

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