【黄龍降臨】-奴隷からの脱出〜今さら言われてももう遅い-
けみゆあ😱
第1話 従僕選抜
◇◇◇◇◇
今日で奴隷は卒業だ。
6歳からお嬢様に仕えて10年。
ようやくこの日が来た。
これからは自分のために生きよう……。
◇◇◇◇◇
エルグラン伯爵邸にて。
今日は屋敷で一人娘のダリアのために誕生日会が執り行われていた。伯爵の令嬢に相応しい盛大な会が。
豪華に飾られた会場に豪華な料理が並び、有名音楽家のよる演奏が流れている。
そして、主人であるサバン・エルグラン伯爵が一人娘のダリアを呼んで話し掛けた。
サバン:「ダリア。6歳の誕生日おめでとう。
今日はお前に特別なプレゼントを準備したよ。
さあ、全員、入ってきなさい!」
サバンのこの言葉に反応して、入り口の扉が開き、6名の少年少女が入って来た。
そしてダリアの前で止まり、ダリアに向かって並んで立っている。
ダリア:「パパ。もしかして!?」
サバン:「ああ、お前が欲しがってたやつだ。
知り合いに依頼して性格の良い子を見繕ってもらったよ。この中からお前の好きな者を選んでいいよ。」
ダリア:「やった!ありがとう!パパ」
少女が4名と少年が2名。
全員がこの街の出身で底辺の貧しい平民の子と孤児院育ちの子で、年齢はダリアと同じくらいの子が揃っている。
ダリアは並んでいる子たちの近くまで行き、それぞれの子をじっくり品定めしている。
そして、順番に一人ずつ声をかけている。
最後に明らかに服装が他の子と違い、ツギハギだらけの服の子の前に来て声をかけた。
実はこの最後の子だけが孤児院の子であった。それは誰もが分かるほどの違いである。
なぜ、孤児院の子がこの列に並んでいるのか?どう見てもおかしいがこれには訳があった。この子は育ちは悪いが容姿がズバ抜けて良いのだった。現代であればトップモデルになれるくらいに垢抜けている。
これを準備した知り合いも、この子が選ばれるとは思っていないが、1人くらい容姿の良い子を入れていないと後で苦情が来るのを恐れて、苦肉の策で選抜した人材だった。
ダリア:「あなた、お名前は?」
ウイオ:「初めまして、お嬢様!僕の名前はウイオです!」
ダリア:「ウイオ?変わった名前だね。何歳なの?」
ウイオ:「はい!今日6歳になりました!」
ダリア:「へぇ、私と同じ誕生日なんだね。
あなた、私を見てどう思う?」
ウイオ:「はい!お嬢様は上品で美しくて優しそうな方だと思いました。」
ダリア:「まあ、それは言い過ぎかも。
あなたが私に仕えたら何をしてくれるの?」
ウイオ:「はい!家事全般はなんでも出来ます!あと、お嬢様がおっしゃることはなんでもやります!」
ダリア:「うわー、なんでもだね。」
ウイオはとにかくお嬢様に気に入られる様に満面の笑顔で必死に答えている。
今日はウイオにとって大勝負の日だ。
孤児院育ちのウイオにとって、街の中心部にある貴族居住エリアに来たのも初めてで、まさかの伯爵邸に来ている。
普通は孤児院の子が、貴族の屋敷に入ることなどまず許されない。
仮に万が一、貴族の従僕として選抜されれば、孤児院始まって以来の初の快挙である。
ダリア:「パパ。この子にする。」
ダリアは、ウイオを指差した。
この時の興奮は今でも忘れない。
ウイオにしても、選ばれる可能性はかなり低いと思っていた。
ここに来るまでに聞かされた話だと選ばれた場合、伯爵邸に住み込みで従僕の仕事をすることになる。
仕事にしても、今までの臭くて汚い日雇いの仕事とは違い、屋敷の中でお嬢様のお世話をするだけで給金が貰える。
まさに夢の様な待遇である。
ウイオ:「あ、ありがとうございます!」
ウイオは、涙を浮かべながら深々とお辞儀をしている。
その横で他の5人の少年少女は、全く悔しがってはいない。むしろ、安心した様子でウイオの方を見ていた。
いくら貧しいとはいえ、平民の子は親の期待とは裏腹に親元を離れる不安の方が大きく、選んでほしくない気持ちでずっと緊張しっぱなしだったのだ。
そして、やっとその緊張から解けたのか、普段通りの顔つきに戻ったのだった。
そういう意味では、ダリアがウイオを選んだのも必然であった。
サバン:「うーん。まあ、そうなるだろうね。
でもね。ダリア。一つ言い忘れていたけど、この子だけは孤児院の子でね。
それでもいいかい?」
ウイオは、その言葉にドキッとした。
孤児院の子。
やはり、孤児院育ちの僕には無理なんだ。
さっきとは違う意味で泣きそうになった。
そして、他の5人も違う意味でドキっとしている。選ばれる可能性が復活した!
ダリア:「うん。パパ。この子がいい。」
サバン:「そうか。分かった。この子にしよう。では、ウイオ。私について来なさい。」
ウイオ:「はい!大旦那様!」
意気揚々と大旦那様について行くウイオ。
まさに天にも昇る気持ちだ。
そして伯爵の執務室に入るとこの屋敷の執事長が待っていた。
執事長から契約に関する説明をされて、ウイオはそれを黙って聞いていた。
期限はお嬢様が成人になる16歳の誕生日まで。これは通常であれば、1年ないし2年ごとに更新する契約からすると破格の長さだ。
この時は驚いたがあまり契約のことは知らない。ウイオは無言で喜び笑みを浮かべた。
そして執事長がその契約を読み終えると、ウイオの意思を確認し、契約書にウイオが針で傷つけた指から血を一滴たらす。契約成立だ。
万が一、契約を破った場合には罰として体の一部に呪印が現れ、命の関わる呪いに掛かる。
魔術を伴う正式な契約には重い代償が付いてくるのをウイオは知らなかった。
これが一般的に契約期間が長期にならない理由なのだが、ウイオは破格の10年の契約を結んでしまったがもう遅い。
そのあと、執事長に連れられ、身だしなみを整えて服装を着替え、意気揚々とお嬢様の待つ会場に戻って行った……。
◇◇◇◇◇
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