第八十七話 第一国奪還戦④




「じゃあぁ…イクねぇ…」


(先手は譲りませんけどね…っ!)



なんかもう攻撃してもよさそうだったので、先手必勝理論で鎌をクナイのようにして2本投球する。



「全くぅ…せっかちさんだねぇ…じゃあこっちもぉ…」



シリキラさんの手元にいつの間にかあの時と同じ黒いナイフのようなものが握られており、それを投球したあとその場から消えた


あのナイフは当たったら刀使いみたいになってしまうと思うので、身を少しずらして回避する。


でも肝心のシリキラさんが全く見当たら──っ!


即座に後ろを振り向きながら鎌を突き出すと黒いナイフと赤い鎌が激しくぶつかり直ぐにシリキラさんはバックステップで後退した


そしていつの間に投げられていたのか数本の普通のナイフが向かってくる


そのナイフをなんとか鎌を爪に変形しパリィと回避で捌き切る



「これはぁ…流石にぃ…避けれるぐらいぃ…だからねぇ…これぐらいでぇ…苦戦したらぁ…ついていけなくなっちゃっうよぉ…?」


(まだこのぐらいは楽勝ですよ!)


「まぁ…そうだよねぇ…じゃあこれはどうかなぁ…?」



ちなみに楽勝なのはハッタリではない

[冥護]も[冥界ヲ渡リシ者]でスキルを使ってもいないしな


とか考え事してる場合じゃねぇ


真上から大量の黒いナイフが降ってくる。落ちてくる場所は俺を追っているようで俺が走ったところにナイフが突き刺さっている


走って走って避けられない時はMPを消費し[浮遊]で加速する


そして当たり前のように消えているシリキラさん


毎回受け止めたり、避けるだけじゃシリキラさんは倒すどころの話ではない

さてシリキラさんは─



その瞬間に視界に不自然な黒い点が映る。体を大きく反らし黒い点を避ける


あと数秒気づくのが遅ければ顔なしユニークモンスターになっていただろう

でも多分あれはシリキラさんが[疾風迅雷]と[魑魅魍魎]を使用して超高速の意思を持った弾丸のようなもの

もちろん追尾してくる…!


上からは即死級のナイフ…全方向からシリキラさん…たしかに避けられないだろう最初のは奇跡に近いし…


でも…



([炎ノマイ])


[全方向焼却システムを起動…全てを焼き払います]



炎の輪が俺を始点として広がり周りの飛び道具を焼却し、塵が少し降ってくる



[……飛び道具の完全焼却を完了。敵対エネミーは回避しました。以降焼却対象が現れた場合自動で発動します]


「うえぇ…それ嫌いなんだよねぇ…ナイフ燃えちゃうしぃ…それぇ…禁止ねぇ…」


[ニル(Lv120)が[事象改変]を発動!スキル[炎ノマイ]の使用が禁じられました。使用した場合罰がくだされます。]



はぁ?!避けれるなら禁止にする必要ねぇだろ!それと強すぎるだろ…くれよ…


でもそれほど強いなら誓約があるだろ…そうポンポンとは使えねぇだろ



「これはねぇ…僕のMPの最大値を削るけどぉ…元が多すぎてぇ…ほとんど意味のないぃ…誓約にぃ…なってるんだよぉ…でも同じ対象にはぁ…一回しかぁ…使えないからぁ…安心してねぇ…」


(安心できる要素今の会話のどこにありました?!)


「えぇ…今ので安心できないならぁ…これから安心できることぉ…ないと思うよぉ…」


(初めからそう思ってますけど…)


「へぇ…やっぱりぃ…イデアちゃんはぁ…面白いねぇ…」


(いちいちおしゃべりが長いですね!次はこちらからいきますよ!)


「うん…いつでもぉ…キていいよぉ…」



うう…いつ聞いても悪寒が走る喋り方だな…なんか自分の中身を見られてるような…語りかけられてるような…


ってそんなことを考えてる暇があったら攻撃!攻撃!


出し惜しみしてる余裕はもうない…!



[冥界ヲ渡リシ者]を使用。

[ウィンドムーブ][俊足][観察眼][パワーアップ][スピードアップ][破足][空切り][神威の刃][鍛冶場の馬鹿力][根性][メインテイン]が一時的に使用可能になります。

大量のMPを消費し、従魔[ごろー]からMPを借用しました。]



[ウィンドムーブ][俊足][スピードアップ]がAGI強化

[パワーアップ]がSTR強化

[観察眼]は動体視力が増す

[破足]は足に破壊属性付与

[空切り][神威の刃]はダメージバフ

[鍛冶場の馬鹿力]は低HP時にオールステータスアップ

[根性]は1耐えるやつ

[メインテイン]はバフ固定



ありゃごろーさんごめんね…でも必要なことだから…後でいっぱい食べていいから…


後、ごろーさん呼んどこ


助けてー!ごろーぱんまーん


ってもういるじゃん

あっ、MP減ったから来たのね…ムスーとしていらっしゃる…

今はどうか機嫌を直してもらって…スー…はい…あそこ以外の食べ物も食べてみたいと…いやー…あそこ以外のお店はあまり美味しくないって聞きますし…あぁ…すいません…見え見えな嘘はつきません…値段的に無理です!どうかあそこで勘弁してください…!味は他の店と遜色ないんで!……ありがとうございます!じゃあこの件は機嫌を直してもらって……申し上げ難いのですが…統合してもいいでしょうか…まぁこれは断られてもするけど…



([従魔統合])


[従魔[ごろー]が選択されました。

[忿怒の魔狼 イデア]に変化します]



「おお…!やっとぉ…本気ってぇ…感じだねぇ…じゃあぁ…僕もぉ…ちょっと本気でいこうかな…」



[ニル(Lv120)が自身に課した誓約を一つ解き放ちました。

ニル(Lv120)が[極級魔法 呪文]が使用可能になりました。

ニル(Lv120)が[破滅の意思][再生の意義]が使用可能になりました。

ニル(Lv120)がサブ職業[独唱者]を開放しました。

ニル(Lv120)がニル(Lv■)となりました]



やっぱり降参させてください。

私は善良なユニークモンスターです!



「正直僕はぁ…イデアちゃんがぁ…正義だとか悪だとかどうでもいいんだよねぇ……ただぁ…僕が楽しむことがぁ…一番大切なことなんだぁ…だからぁ…僕を退屈させないでねぇ…イ・デ・アちゃん…?」


(善処しますよ…!)



はわわー!?私どうなっちゃうのぉー!?







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