元勇者が魔王に転生したので

宮川祭

エピソード

 我は、目覚める


 魔王の覚醒は、近い。


 あの日人類は、思い出した。魔族に支配されていた恐怖を、


 民たちは、怯えて逃げ惑う。若い女たちは、魔族たちに囚われて、


 魔族の子を産む役目を与えられて死を遂げる。


 助けてくれ。勇者様。


 神よ。我々を救いたまえ。


 街は、焼かれ火が辺りの家から家へと燃え移る。


 一人また一人と魔族たちに殺されていく。


 逃げ惑う人々に対して魔族は、容赦なく首や背中を切り刻む。


 救いを求めている民たちは勇者パーティの助けを待ち望んでいるようだったが


 勇者はいない。なぜなら、勇者はすでに魔族に殺されているからだ。


 他のメンバーたちは、勇者がやられたあと姿をくらましたと言われている。


 これからは、魔族の時代。悪役が、主役となる時代となった。


 復活した際には、まずは、王国を攻めよう。そして姫を誘拐して、


 我が子を産ませるのだ。と考えていたのは転生した魔王であり、


 元勇者だ。転生した先が魔王になるとは、誰も思わないだろう。


 魔王となり国を支配する側になってしまった。


 これから、どうしていけばいい。困った。


 転生したら勇者だと思っていたのけれど魔王でした。


 魔王様、おはようございます。


 ぺこりと頭を丁寧な角度でお辞儀し朝の挨拶をしてくる。


 やあ、アスモ おはよう


 黒く光った2本の角、風に凪く白銀のサラサラとした長髪


 すらっとした体に似合う。キリッと整った顔立ちをした。


 世話係のアスモという魔族の一人だ。


 魔王様の本日の予定は、と言いどこからか手帳を取り出した。


 まず、街を殲滅魔法で破壊して王国に被害を与える


 次に若い女衆を街で見かけたら擬態した魔王様が魔王城に連れ込む


 魔族の会食 逃げ惑う人間のフルコースとなっております。


 一つ聞いてもいいかな?アスモ


 何なりと質問してください!!


 今日の予定をキャンセルで


 それはできません


 膝から崩れ落ちる元勇者。街を魔法で破壊して若い女の子たちをあんなことやこんなことをして


 魔王城に連れ込んでそのあとに、よくわからない会食に行かないといけないとか地獄だろ。


 あっここは、もう地獄みたいなものだったな、人見知りには、ハードルが高すぎる。


 勇者の時は、すごく女の人が寄ってきたけれど、あはは、君たちみんなぼくのフィアンセさとか


 適当なことを言ったけれど、逆にそれで感情が高まった女の子たちが爆走して追いかけてきたんだっけな。


 勇者は、童貞である。王様から頂いた伝説の聖剣は、使いこなせるのだけれど下の聖剣は、鞘に収まったままのようだ。


 とりあえず、スケジュールが押していますので、テレポートで行きます。


 ちょまっ


 一瞬にして、王国を見渡せるほどの眺めの良い丘の上についた。


 ここは、魔族の射的訓練場でもある。まだ魔力が安定しない魔族が王国に向けて魔法を放ち


 魔力の流れを把握するためだ。


 さあ、魔王様。存分にその強大な魔力を人間どもにぶつけて魔王様はここにいるというのを


 わからせてやりましょう。


 キラキラと目を輝かせながら、俺の魔法を待っているようだ。


 手のひらを王国に向けて、「殲滅魔法、玉砕」


 赤黒い球体が、魔王の手のひらで構成されていき、次第に大きくなっていく。


 ああ、ごめんよ、民たち、そして王様。


 勢いよく放たれて球体は、王国目掛けて飛んでいく。


 王国に直撃した衝撃の爆風で黒い前髪が後ろに吹き飛ぶ。


 砂埃が、目に入りそうになるのを片腕で防ぐ。


 緑色の瞳が写した光景は、絶句するものだった。


 完全に陥没したクーレターと化した王国。


 さすが魔王様。これで人間どもの駆逐は終了ですね。


 両手で上品にぱちぱちと良い拍手をするアスモ。


 ごめんよ、みんな 本当にすまないことをした。


 さて次は、街に出ましょう。


 パチンと指を鳴らしたアスモは、勇者の服や姿を一瞬にして、


 街人になった。


 髪は、燃え上がる炎のように赤く、茶色のtシャツとグレーのズボンが


 異世界の平民の格好を表しており、上級貴族のにいるようなすべてのパーツが整った


 顔した蒼い瞳の青年がそこにいた。


「では、街へ出発してください。私は、やることがあるので、あっ、魔王城につれてくる女の子は幼女がいいですね。ではよろしくお願いします」


 まって、ひとりにしなっ


 風と共にゆらりと消えていった。


 仕方なくトボトボ歩き出す。


 崩壊した街は、王国の魔力により復元しかけている。勇者が、転生する間に進化をしているようだった。だが街は修復できるけれども死んだ人間は、元には戻らない。


 歩き出して1時間くらいだろうか、森を彷徨う俺は、道に迷ったようだ。


 ガサガサと聞こえてくる草むら。


 木々が多く先が見えない道。


 風が心地よく吹くのを体感しながら歩いていく。


「完全に迷ったようだ」


 どこからか悲鳴が聞こえてくる。遠くはないけれど、いってみるか


 天


 魔族しか使えない飛翔魔法。


 魔族は魔法が使えることで有名であるが、漢字を使っているのは魔族だけの固有魔法であるからだ。


 次回へ

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