第7話 確認作業中です
金を仕舞い終わった瞬間、頭に軽い頭痛が走る。
「あっつ、痛てっ」
それほど大した痛みではないが、頭痛とは別に視界が揺れ、船酔いのような感覚が襲った。
「……これが鑑定の影響か……。
普段ならそれほど問題ではないけど戦闘中は使えないな。
視界が揺れるのは致命的だ」
症状的にはそれほどでもないが危険な状況では使用を
一瞬の、特に命のやり取りや頭を最大限に使いたい場合には致命的になりかねないからだ。
便利だが微妙。
私は痛みと軽い
リュックは普通のナイロン製のリュックで30リットル程度の大きさだ。もっとも中身は殆ど入っていない。
500mlのペットボトルのお茶が1本、同じくスポーツドリンクが1本、ペットボトルが入っていたコンビニの袋が1枚、タオルが2枚とティッシュが1箱、ハッカ飴が1袋、雑誌が1冊、ボールペンが2本とマスクが数枚。そして厚手のノートが一冊。
ちなみにこのノートは数冊のノートを束にした5センチほどの厚みのノートで、これは私が今まで小説を書くために調べたことが事細かに書いてあるものだ。
パソコンの中にも同じものを入れて使っていたが、こちらの方がオリジナルである。
常にこれを持ち歩き、気になったことなどを書き留めていたのだ。
せめてノートPCでもあれば色々と楽だったのだけれども……。
そして、見知らぬ封筒が一つ。
まあ、最後かな?
何となく想像がつくしね。
「火が無いのが辛い……けど、ペットボトルは有難いな」
そう、ここが森の奥なのか森の外周なのかが全く分からないのだ。
それに近場に町や村があるのかどうかすら分からない。
すぐに森を出ることが出来なければ野宿をする必要があるのだが、火が在るのと無いのでは危険度が格段に違う。
もっともここに住む生物が火を怖がるのかどうかは不明なのだが。
そしてもう一つの問題は水だ。
ざっと周囲を見た限り、耳を澄ませた限り、近場に流れる水は無いようだ。
もし仮に溜まった水があったとしても
ちなみに何もせずに飲む勇気はない。状況が不明な時にゴロゴロピーは致命的すぎるからね。
コンビニの袋があるから水を集めることは出来ると思うけど、雀の涙だろう。
朝露が採れるとも限らないし。
そう考えると先程確認した通り、ペットボトルがあるのが良かった。
確保した水分を溜めておくことが出来るからだ。
そしてもう1つ、中身が喉の渇きを促すジュース類ではなく、お茶とスポーツドリンクというのがまた良い。
下手をしたら長丁場になるかもしれないからだ。
あれ?
スポーツドリンクってジュースじゃないっけ?
まあいい。
とりあえずは火と水の確保かな?
「確かノートの中に火の起こし方とか書いてあったような気がするが……、どこに書いてあるかを探すのが大変だな。仕方がないから確認を進めよう」
とは思ったものの後は愛刀があるだけだ。
売るために持ってきたものなので手入れは十分にしてある。
刀袋には刃を合わせるための小さな砥石も入っているし、手入れ用の
私は刀袋の中に入っていたベルトを取り出すと愛刀を腰に吊り下げる。
「さて、最後にこの腕輪……か」
私は左腕に巻き付いた赤銅色の腕輪を眺めた。軽くつついてみるが銅製では無いことは分かる。しかしそれ以上は何もわからない……分からないのだ。
使い方さえも……。
「説明書くらいよこしやがれ――――、こんちくしょう!」
また悪態をついてしまった。
使い方分からないですかねぇ。
そう思った瞬間、目の前に文字が現れる。
「あー、そういう
どうやら鑑定が働いたらしい。
さっき使ったのに忘れかけていたよ。
【モバイルウェアハウス】
XX21851で作成された携帯型倉庫
使い方
入 :腕輪を付けている手で物を触り、収納と念じる。
出 :腕輪を付けている逆の手で腕輪を触り、出したい物を頭の中のリストから念じ
る。
確認:リストを見るのは腕輪を付けている逆の手で触り、リストと念じる。
中に入れた経過時間はリストの下に表記される。
名前、そのまんま訳されてるなぁ。
まあ、うん、便利だ。
これを持って地球に帰ると大儲けが出来そうだ。
帰らないけどね。
問題は、取れないんだよなぁ、これ。
さっきから外そうと試みているけれど駄目なんだな。
私は拘りで腕時計を左手につける。
当然腕輪も左手だ。
「まあ、同じ腕でも問題は無いか。
微妙に邪魔だけど……。
どっちも腕に密着しているし、勝手が悪ければ腕時計を外せば良いだけだし」
さて手持ちの物の確認が済んだのでリュックの中身全てを出して腕輪の中に仕舞う。
鑑定を使ったせいか軽い頭痛が襲ったが、流し読み程度の時間だったのでそれほど問題は起こらなかった。
「しかし、この腕輪も便利だけど鑑定が便利すぎるな。まさか説明書みたいなものまで表示されるとは。
問題はこの頭痛と
さてと、まずは今夜の寝床を探すかね。
明日中には飲み水の確保をしたいから早く寝たい」
私は移動の準備を整えると自らの勘に従って森の中へと足を踏み入れる、寸前。
「あ、そういえば封筒があったっけ」
私は腕輪の中から封筒を取り出す。
【ルールウちゃんより】
……
…………
………………
キャラ崩れてんな……。
『やあ、この手紙を読んでいるとき、あなたはあなたが望んだ世界で無事に目を覚ましたことでしょう』
こいつは~。
『少しばかり別件で問題が発生し構えなくなりましたので必要な事だけ簡潔に。
まず、身体について。
特に問題もなく希望通りに形成されたはず。
脳の強化も問題なく行えたし、肉体も十分に若返ってます。
そして
ん?
身体の中?
組み込めた?
何のことだ。
『さて肉体の方については問題は無いでしょう。
次に魔法についてです』
ちょっと待て。
聞いていない仕様があるんだけど?
説明流しやがってぇ。
『あなたがいわゆる魔法と呼んでいるものには大きく分けて2種類。
1つは魔法。
もう1つは魔術。
違いは、魔法はこの世界の理によって
魔術はそれを発展させ、莫大な
因みにこの世界で一般的なものは魔法で、魔術まで行き着いているのはほんの一握りです。
あなたはそのどちらも使えるだけの魔晶石を体内に埋め込んであります。
そしてその知識もあります』
え~っ、
その魔晶石とやらが身体のどこかに埋まっていると?
せめてどこにあるのか、ほかにどのような効果があるのかくらい説明しようや。
それに魔術の知識?
そんなものは持ち合わせていないのですがね。
『という訳で異世界ライフを楽しんでください。
あ、因みに魔晶石を抜かれると死にますのであしからず。
それではいつの日かまた?』
チョットマテ、ゴルァ!
説明いぃぃぃ……。
……
…………
………………
どれくらいの時間が経ったのだろうか、私は疲れた体を引きずりながら森の中へと歩き出すのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます