第5話 説明を受けました 2

「決めました」


どれくらいの時間が経ったのかは分からないがやっと決めることが出来た。


『時間がかかりましたね。 

地球の時間で3年ほど悩まれていましたよ?』



……は?



な・ん・だ・っ・て?



私が悩んだといってもせいぜい2時間程度のはずだったのだが(体内時計)、まさかそれほどの時間が経っているとは思わなかった。


『あ~、そういえば言っていませんでしたね。 

ここは地球の空間より複雑な4次元以上の世界ですよ』


さらりと恐ろしいことを言ってくれる高位の存在。


『で、ご要望をお聞きしましょう』


混乱している私を他所よそに話を進めてくれる高位の存在。もう、高位でいいや。


『……わたしの名は発音出来ないと思いますので、ルールウ・ビエゼナ・デロクロワ・キスカ。

ルールウと呼んでください』


あ、投げやりなことを考えていたら向こうからやっと名乗りやがった。

しかもこいつ思考読んでやがる。

しかし、なんか一気に人に近づいたような気がするな。


『そうですね、人である時に名乗っている名ですので……。 

で? 

どうしますか?』


ルールウの言葉に私は自分が考えた能力を言う。


「鑑定、無限収納、無制限の魔力マナをください」


私の要求にルールウは一瞬止まった。

何かを考ええているのか、出来る出来ないを判断しているのかは分からない。


『あなた1人に魔力マナを渡すことは出来ませんよ?』


は?

魔法を使うには魔力マナが必要なはずなのだが……。

それに身体の維持に魔力マナが必要だと言っていたはずなのだが……。

莫大な魔力マナを持つことが出来れば【俺TUEEEEeeeee!】が出来ると思ったんだけどねぇ。

私がそう考えていると【ああ!】という感じで言葉が返る。


『あなたの記憶からどのようなものを想像しているのか理解いたしました。

結論から言うと個人で持てる魔力マナというものは存在しません。


先程も言った通り魔力マナ暗黒物質ダークマターとなります。

つまり宇宙に存在している……そうですね、暗黒物質ダークマターがその宇宙に住む者すべてが使える魔力マナになります。

あなたが考えている魔力マナ量は基本的に暗黒物質ダークマターが無くならない限り限界は無いということです。

まず、あなたのみに魔力マナを割り振ることは出来ません。

あなたに制限無しを与えるということはほかの存在ものすべてが死滅するということになるからです。


ついでに言えば魔力マナを無制限で扱えるかと言えば【否】です。

何故ならばその世界の住人の、個人の身体には許容できる容量というものが存在しています。

それが個人の基本的な容量です。

まあ、後天的に増やすことが出来ないわけではありませんが……。

ちなみに個人の容量を超えて魔力マナを溜め込むと身体と精神が暴走します。

それを【災厄】といいます。

こうなってしまえばその宇宙全体が【災厄】を狩ることになるでしょう。

ということでこれからあなたの身体を改造し魔力マナを使えるようにするのですが、基本容量を人が持てる限界+αまで伸ばすということで良いですか?』



私はルールウの説明に【そういうものだ】と思い納得することにした。

ただし自分の立ち位置を確認することは忘れない。


「その星に住む者で魔力マナを最大限に使えるの最大値に比べてどの程度になりますか?」


私の質問に再び沈黙が訪れる。


『そうですね、約7割というところでしょうか。何しろベースが人ですから強化にも限界があります』


その星の最大の力を持つ存在がどれ程の存在かは分からないが、低すぎて魔法が使えない、殴られただけで死ぬ、すぐに病気になるということはないだろう。

そしてそれなりに精神的、肉体的に強くなれることを確信する。


「じゃあそれでお願いします」



『次に無限収納……ですか?

なるほど面白い発想ですね。

しかしこれは難しいですね』


どうやら駄目のようだ。

あれが在るのと無いのでは便利さが全然違うのだけどなあ。


『無制限……というのは出来ないことはないですが、諸事情によりこの腕輪で妥協してください』


突然目の前が光ったと思うと目の前に赤銅色の腕輪が漂っていた。


『これはある宇宙に存在する文明で作られた、収納機能を持つ腕輪です。

容量は……あなたの知識で言えば……東京〇ーム3個分程度でしょうか?

因みに時間は止めることは出来ませんが、1000分の1程度に引き伸ばされます。

これは機械になりますのでソート機能、使用者制限なども付いていますよ』


う~ん、微妙。

いや、地球の技術からしたら垂涎すいぜんの技術なんだけれどね?

正直地球で売り出したら値がつかないのではないだろうか?

ただ、ラノベ作家としては量も微妙だし時間も完全には止められないらしいから欠陥商品にしか思えないのだけれど。


「因みにその星にこのような物、魔法はありますか?」


私の問いへの答えは【否】であった。

まあ、納得するしかないか……。



『では、最後の鑑定ですか?

これは……なるほどねぇ。本当に面白い発想ですね。

良いでしょう。

これに関しては脳の機能の一部を最大値まで上げれば問題ないですね。

脳の活性化で対応しましょう』


何か微妙に嫌な予感がするのだが……。


『この能力は脳に極端に負担をかけますので使いすぎに注意してください。

あなたのラノベの知識の通り、【鑑定】と念じることで発動、脳内変換してあらゆる物質の構造、名称、成分を知ることが出来るようにしましょう。

地球の知識で賄えるものは互換翻訳機能も付けておきますね』


はぁ、なるほど。

人の脳は殆ど使われていないと言われているが全てを使えるようにすればこのような能力を使えるようになるのか。

あれ、あれって違うという説もあったような。

まあいいか。


しかし、使いすぎると副作用ね……。

破格の能力ではあるが、検証しながら使うことにしよう。

(別のものに変える気はない。便利だし切り札になるからね)


しかし人間の脳ってやつはある意味優秀ではあるがある意味欠陥品だな。


『そう悲観するものではありませんよ。

永い刻を超えて精神と肉体が進化すれば当然脳自体の許容量も上がりますよ。

【許容量=精神=肉体】という感じでしょうか?

人類の今の精神状態ではまあ最大で3割、良くて4割が限界ですが……。

その、人類の進化を助けるためにあの子を送り込んだのです。

そしてあなたがここに居る』


私の考えを読んだのか、突然語りだすルールウ。

まあ、その知識があってもどうでも良い知識なのだが……。


『怖がっているようですので言っておきますが普通に使う分には軽い副作用程度なので問題ないですよ。

ただ、無理は禁物ですので自分で許容範囲は探ってください』


投げやがった。

でも実際に使ってみないと分からないよな、これは。

 

『あ、ちなみにが原因ではありませんから』



怖いセリフだねぇ。

 


『では、これで3つですので身体の変更に入ります』


ルールウの言葉が終わるやいなや、いきなり先程の倍の痛みが頭を襲う。

 

ちくしょう、一言いいやがれってんだ。


同時に身体全体、細胞全体が軋みだし、認識の限界を超える何かが身体を駆け巡る。

やはり私はその何かに耐えることが出来ずに意識を手放すのであった。

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