第6話 小中高と一緒です

 入学して間もないこの時期、同じ中学の出身者同士で集まるのは、男子も女子も同じみたい。

 三島も、中学からの同級生と一緒になって喋ってた。


 ずっと前、三島は事ある毎に、幽霊がいるとか言って、私を怖がらせてきた相手。って言っても、それは昔の話。


(三島、ある時から急にイジワルしなくなったんだよね。確か、ユウくんが亡くなったくらいからだったと思うんだけど)


 どうしてそうなったのかは知らないけど、もちろん私にとってはそっちの方がいい。


 おかげで、私も前みたいに三島を嫌いっては思ってなくて、小学生の頃からの付き合いの長さもあって、今では気兼ねなく話せる同級生って感じになっている。


 そんな三島に向かって、声をかける。


「ねえ三島」

「よう、藤崎。なんだ?」

「三島、少し前からギターやってるでしょ。だったら、やっぱり軽音部に入の?」

「ああ、そのつもりだ。せっかく始めたんだし、ちゃんとやらないと勿体無いからな」


 そこで三島は、傍に置いてあったケースを持ち上げる。

 私がベースを入れているのとよく似てるけど、中身はギターだ。


 これで私を含めて、軽音部員は少なくとも二人はいるってことになった。

 すると、一緒にやって来た真由子が、私たちの間に割って入る。


「それにしても三島。確かあんたがギター始めたのって、藍がベースの練習するようになってからすぐだったよね」

「あ、ああ」


 そうなの。

 私がベースの弾き方を勉強し始めたすぐ後に、三島も、急にギターに興味を持ったって言い出したんだよね。

 それに、初心者同士一緒にやった方が上達するって言って、私と一緒に何度か共に練習をしたこともあるの。


「たまたま藍と同じくらいにギターを始めるなんて、凄い偶然ね」


 真由がニヤニヤ笑いながら言うと、なぜか三島が、とたんに慌てだす。


「べっ、別に、俺がギター始めたのと藤崎とは、何の関係もないからな。藤崎が始めたから俺もやるとか、そんなんじゃねーぞ!」


 焦ったように言うのがなんだかおかしくて、思わず笑っちゃった。


「わかってるって。たまたまだよね」


 それでも、私に続くようなタイミングで始めたのは事実なんだから、偶然ってのは凄い。

 おまけに、こうして同じ高校の軽音部に入るなんて、不思議な縁だ。


「たまたまでも、三島がギター始めてくれて、良かったって思ってるよ」

「そ、そうか?」

「うん。私のベースだけだと、できることも限られるしね。軽音部で一緒に弾くの、楽しみにしてる」


 ベースだけで演奏するより、ギターも加わった方が、できることも増えるに決まってる。

 何より、現在部員がほとんどいないっぽい軽音部。仲間が増えるのは、素直に嬉しかった。


「ま、まあ、俺だってメンバーは多い方がいいからな」


 三島も私と同じように思ってるみたいで、照れたように顔を赤くさせながら、嬉しそうに頷く。


「じゃあ、私はそろそろ部室に行っておくね」

「ああ。それなら、俺も一緒に行こうか?」


 私が荷物を手に取るのを見て、三島もそれに続こうとする。

 だけどそこで、さっきまで三島が、友達と話をしていたのを思い出す。


「いいよ。三島、話している途中だったんでしょ。私は先に行くから、ゆっくり来なよ」

「えっ? いや、それは……」


 私に気を使って話を切り上げようとしているのなら、そんなの悪いよね。


 というわけで、三島の申し出を断った私は、そのまま一人で教室を出ていった。


 それを見送る三島が、どこか寂しそうにしていたことには、最後まで気づかなかった。

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