第4話【野良猫、都会へ行く】

あれから更に数ヶ月


俺達兄妹は遂に独り立ちし

自分の縄張りを求めて旅立つ時が来た!


・・が、親元を巣立ったにも関わらず

弟と妹がまだついてくる。


まぁ懐いてくれるのは

兄として嬉しいのだが

猫というのは本来

単独で行動する生き物では

なかっただろうか?


※ここからは猫の会話パートです。

実際は「ニャーニャー」言ってるだけですが

翻訳魔法で「だいたいこんな感じ」くらいで

お互い会話をしています。


「おい、お前ら何で俺についてくるんだ?

自分の縄張りを探しに行かないのか?」


「だ、だってボク達ご飯のとり方よく分からないし。兄ちゃんと居ればご飯も沢山食べれるから・・・」


「そうだよね!兄ちゃんと居れば

ご飯いっぱい!」


こ、こいつら!

お前達に野良猫としての矜恃はないのか!?


曲がりなりにも

野生動物だろうに!!

・・・あっ、あんな所にアオイがいる!

おーい、食べ物くれー

ゴロゴロゴロ


「あれ?シロちゃん達!?

何でこんな所に居るのー?

いつも居る通学路の脇から

ここまでだいぶ距離あるけど?」



ふっ、男はいつか旅立つ生き物だからな。

・・まぁ、一匹メスもいるが。


それにこの世界の情報収集はまだ途中。

情報を集めるなら

廃墟のあるあの辺りより

人が多く居て発展した

街の中央部に拠点を移した方がいい。


「あ、もしかして皆でお散歩かなー?

でも気をつけてね?

ここら辺はあっちより車の往来も多いし

それに保健所の人も

たまに見回りしてるんだってー」


ふむふむ、アオイの話によると

この辺りには「ホケンジョ」なる

組織に属したハンターが

俺達を捕まえに来る事があるらしい。


モンスターや野盗に襲われない

安全な世界かと思っていたが

それは俺が知らなかっただけで

案外、危険な世界だったのかもしれない。


その後、俺達は

アオイのカリカリ(キャットフード)

で腹を満たし

新たな住処を求めて街の中央部を目指した。


歩き続ける事30分程

廃墟の近くに比べだいぶ自然も減り

逆に高く大きな石作りの建造物が増え

見たことのない魔道具も

目に付くようになってきた。


俺はこの世界を

魔法が発展しなかった代わりに

魔道具が発展した世界だと思っていたが

俺の予想よりもだいぶ

進歩した世界だったのかもしれない。


「うぁーー・・・」


「凄く大きいー!」


弟妹が辺りをキョロキョロ見回している。


まぁ無理もない。

元人間だった俺だって

この調整し尽くされた街並みには

驚きを隠せなかった。


「あまりキョロキョロするなよ?

田舎猫丸出しだぜ?」


表面上は平静を装って言い放つ俺


「に、兄ちゃんカッコイイ・・!」


「さすが私達の兄ちゃんだね!」


弟妹の尊敬の眼差しを受けながら

猫の低い鼻を

犬のように高くする俺


しかし、俺は気がついていなかった。


背後から俺達のことを

じっと見つめる集団が居た事に・・。


~キャラ紹介~


【弟猫(キナコ)】

気弱な茶色い弟猫。

兄を尊敬している。


【妹猫(ムギ)】

活発な茶色い妹猫。

兄を尊敬している。


5話は10月30日 7:00投稿予定です!

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