第8話 体育祭2種目目

「選抜リレーの出場者の方は走順で並んでください」


体育祭午前最後の種目、選抜リレー。クラスから男女各6名が選抜され男女で2回リレーが行われる。周りを見渡すといかにも早そうなメンバーが集まっている。最初の100m走は全力で走れたが、このリレーは1人200m、己の体力が持つかが心配だ。


「春渡100m走1位だったんだから、1走目ぶっちぎって来いよ」


同じクラスで2走目の春陽が声をかけてきた。転校してから喋るのは多分3回目ぐらいだが体育祭マジックのおかげでずっと友達だったかのようなテンションで喋れるのはさすがと言った感じだ。ちなみに俺は何故か1走目にさせられた。転校生だから隠し球的な存在で向いてるとか訳のわからない理由でリレーメンバーにゴリ押しされた。多分リレーにおいて1走目は責任が1番重いので誰もやりたくないから俺に投げられただけだけど。


「それではそろそろ入場です」


生徒会の役員の掛け声と徒に緊張感が高まる。さっきの100m走で準備体操は済ませたと言えど団体競技の1番責任のある1走目の重圧は心臓に重くのしかかり、再び心拍数が上がってきたのを実感する。男子の部が先にあるので俺は2~3分後にはもうスタートしていると自分にプレッシャーを与えてしまい鼓動が鳴り止まない。


同じ1走目同士でスタートラインに並ぶ。何とも早そうなメンツが揃っている。クラウチングスタートの体制になり耳を澄ませてピストルの音を待っている。なんだかんだでこの緊張感にハマっている自分がいる。鼓動の音と周囲の雑踏をできるだけ紛らわしただ一つの音だけを待っている。


「よーい」


全員が一斉に腰を上げる。全員が準備体制に入っていることを横目で一瞬確認するが数秒後にスタートの音が鳴ることを思い出し一瞬で集中している状態に戻る。


「バンッ」


会場に大きな音が響き渡った。ただその音は自分の耳では殆ど認識していない。とにかく前に出ることだけを考えて走り出す。運良く2番目で走り出し、そのままカーブに差し掛かった。カーブでは順位が変わることはなかったが直後の直線で俺は抜かされ3位になってしまう。そのまま再びカーブに差し掛かり3位の状態で春日にバトンを渡す。


流石に200mはキツくしばらく荒い呼吸のままリレーの行く末を見守っていた。4走目に差し掛かった時、遠目で俺たち3組のクラスTシャツを着た人が2位にいるのを確認した。ちなみに4走目の人の名前を俺は知らない。転校1週間目なら仕方がない。うん。


その後は順位をキープして3組の最終順位は2位。


その後俺らは女子の部のリレーを全力で応援した。女子の部は3位。7組あるとしたらまあ上出来な方だろうけどまあ何と言うかとても微妙な順位だ。


「お疲れ〜」


クラスのテントに戻ると応援組が労ってくれた。200m走った疲れは取れてないけどこのままお昼を食べて午後の競技に臨むことにする。


クラスのみんなで体育祭の話題を話しながらお昼を食べてるこの時間はまさに青春の2文字が似合う。そんなひとときを噛み締めながら迫る午後の借り物競走に向けて疲れをとっていた。


まさかこの借り物競走が波乱の展開になるとは俺はこの時何一つ予想していなかった。

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