8
「先生。好きです」
ともう一度、あずきは言った。
二人は教室の中で、二人だけで、くっつくけた二つの机を境にして、向かい合うようにして、座っている。
「大川さん」古風先生が言う。
「はい」
あずきは言う。
「僕たちは教師と生徒の関係です」古風先生は言う。
「はい」
「それに君は子供で、僕は大人です」
そんなことを真面目な古風先生は言う。
古風先生はいつものようにくせっ毛で(寝癖があって)銀縁の眼鏡をかけていて、よれよれの(いつも、柄の変わらない)ネクタイをしている。
スーツの上に深緑色のセーターを着ていて、古い腕時計をその手首にしていた。
あずきは高校の赤いスカーフの白と紺色の制服を着ている。
あずきは確かに高校生であり、古風先生は、あずきの通っている高校の古典の先生だった。
二人は恋をしてはいけない関係だった。
本当にそうかそうではないかはわからないけれど、あずきもそれはいけないことだと思っていた。(だから、ずっと自分の気持ちを黙っていたのだ)
でも、今はそんなことはどうでもよかった。
今、『自分の目の前に自分の世界で一番大好きな人がいた』。
だから自分の気持ちを相手に素直に正直に真っ直ぐに伝えようと思った。
本当に、ただ、それだけだった。(もっと早く、自分の気持ちを古風先生に伝えていればよかったと思ったくらいだった)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます