第157話 銀仮面の戦士無双

街に向かってくる無数のコカトリス。


その前に立ち塞がった謎の仮面の男。


「リュー……ジーン…?」


「リュージーンね…」


美しい輝きを放つ銀のマスクを付けているが、背格好からして新人研修中のGランク冒険者リュージーンで間違いない。(せっかく仮面をつけたリューであったが、服装がまったく同じなのでバレバレであった。)


立ちふさがるリューに対し、コカトリスは邪魔だとばかりに石化ガスを浴びせかけてくる。


そして……回避する素振りもなく、リューはそのガスをまともに浴びてしまった。


見る見る身体が石になっていく。


ほれみたことか、だから出るなと言ったのに、何をやっているのかと思うイライラだったが、直後、驚くべき事が起こった。


石化したはずのリューの身体が元に戻っていく。


そして次の瞬間、リューが禍々しい剣を手にし、あれよあれよとコカトリスを両断していく。


石化ガスがなくとも、鋼鉄の剣も弾く強靭な羽毛・鱗と岩をも穿つ強力な嘴と爪は脅威なのであるが、リューが持っているのは魔剣か聖剣か、バターのようにコカトリスを斬り捨てていくのであった。


程なくして、コカトリスは全滅し、街は救われた。




   *  *  *  *




ほとんど石化しかけていたイライラの身体を元に戻してやる銀仮面の戦士。


さらに銀仮面は、石にされて倒れていた騎士達も次々に生き返らせていく。


「う……、これは……


ありえない……通常の回復魔法では石化は治せないはずなのに……」


「教皇レベルであれば、石化も治せる状態異常解除が使えるという噂は聞いたことがあるけど……、リュージーンはそのレベルの治癒魔法が使えるの……?」


実は、リューは今回、時間を巻き戻す治療法を行っていない。石化そのものを解除する技を使ってみたのだ。おそらくできるだろうと思って試してみたが、予想通り成功した。


スタンピードが起きた時、研修中の冒険者達は冒険者ギルドを出る事を禁止されていた。勝手に出た者は研修失格、冒険者資格を失うとまで厳しく言われたのだ。


だがもちろん、そんな事は関係ないと、リューはギルドから出た。そして、騎士達がコカトリスと戦っている様子を少し離れた場所から観察していたのである。それは、コカトリスの石化ガスについて興味があったのである。


動物だけではなく、肺のない植物も石化してしまう。つまり吸い込まなければ良いというモノではないようだ。それどころか、無機物である石や土、金属までも石化してしまう。それは、毒ガスのような、単なる化学物質であるはずがない。


神眼を発動して、コカトリスが吐き出すガスを分析してみると……それは物質的なガスではなく、魔力の籠もったガス、というより、成分の大部分が魔力である事が分かったのだ。


そして、観察している内に妙な事に気付いた。


石化してしまった人間達を神眼で観察したところ、全身が石になりながらも、彼らが死んではいない事に気付いたのである。


不思議な状態であった。身体は内部まで軽石のような成分に変質してしまっている。だが、命は失われていない。それどころか、微弱ではあったが意識活動もあるようなのである。


神眼を使って、石化ガスの魔力をまじまじと観察したリュー。石化状態は、魔力の塊であるガスが内部に留まり、作用し続けている事で起きているのが分かってきた。


つまり、ガスの魔力を抜いてやることができれば、石化は解除されるのではなかろうか?


そして、なんとなくであるが、その魔力をリューは解除できるような気がした。言葉で説明できないが、普段、魔力がゼロなのに空間魔法を使っている、その時の感覚に似ているのだ。


どのようなメカニズムで石化ガス、否、石化の魔力が対象物を石に変えているのかは複雑過ぎて分からなかったが、その魔力そのものを破壊・分解して無に帰してしまう事は、リューにはできるような気がしたのである。


そして近くに倒れていた石化した者に試してみたところ、石化が解除され、その人間が生き返ったのであった。




   *  *  *  *




石化された騎士達を治療してまわる銀仮面。感謝の言葉を背中に受けながら、次、また次と騎士達を生き返らせていく。


そこにネリナが声を掛けてきた。


「ありがとうリュージーン! ホントに助かったわ。あなた凄いわね!」


「リュージーン? 誰だそれは? 私は謎の仮面の男、シルバーマスクだが?」


「え? いや、でも、ああ、そう言う…感じ?」


「君はリュージーンと言うのか? ありがとう、助かったよ!」


「イヤ、私ハ謎ノ男、銀仮面シルバーマスクデスガ!!」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


銀仮面、さらに活躍


乞うご期待!



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