再起動編

第142話 リュー「冒険者登録をしたいのだが」

この作品は、既に公開されている


『足を斬られてダンジョンに置き去りにされた少年、強くなって生還したので復讐します(習作2)』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054922300995


の通常版のテスト版です。ストーリーはまったく同じものとなります。


上記作品は戯曲風(台本風)の書き方がされております(つまり台詞の前に名前が入ります)が、この作品は同作品の“戯曲風”を廃止して通常の小説風にしてみたものになります。


ただし、完全戯曲風で書いてある話は手を入れますが、それ以外はセリフから名前が単純に削られるだけとなります。


セリフの前に名前があるかないかの違いだけですが、それぞれの書き方に合わせた文章の工夫が必要になります。特に、複数の人間が登場すると、誰のセリフか分かりにくくなる場合がありますが、そのための修正、改稿は入れない予定ですのでご了承ねがいます。


分かりにくい場合は、上記オリジナル版を参照してみて見て下さい。


――

――――

――――――――

――――――――――――――――


とある街の冒険者ギルド。


扉を開けると、国が変わっても変わる事のない冒険者ギルドの雰囲気がそこにあった。


受付に向かい声を掛けるリュー。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」


笑顔の受付嬢が紋切型定型セリフで出迎えてくれるが……


リューは受付嬢の頭の上に目が行ってしまう。受付嬢の頭の上にあったのは、ケモミミ。受付嬢は猫系の獣人であったのだ。


ガリーザ王国ではあまり亜人を見なかったので、物珍しさもあって思わず目が吸い寄せられてしまう。


意外と好きかもしれないとリューは思いつつも、あまりジロジロ見ても失礼かと思い、すぐに視線を外した。


「冒険者登録をしたいのだが」


リューは冒険者登録をするため、ガリーザ王国の南に隣接する国、フェルマー王国にあるバイマークという街を訪れていた。


「畏まりました、では、こちらの用紙に記入してください」


登録用紙には、名前、年齢、技能スキル職能クラスブレス加護、連絡先と、簡単な記入欄があるだけで、過去の経歴等を書く欄はなかった。


リューのペンが止まっているのを見て受付嬢が声を掛けた。


「どうしました? あ、連絡先は泊まっている宿の名前でいいですよ?」


「いや、再登録なんだが……以前、4年ほど冒険者をしていた事が」


冒険者証ギルドカードの再発行ですか?」


「いや、そうではなくて、一度脱退したんだが、また登録したいなと」


「ああ、それなら、同じでいいですよ」


「?」


「再登録は新規登録と扱いは変わりませんから。普通に登録書を書いて提出して頂ければ」


「そうか…」


     ・

     ・

     ・


書き上がった登録申請書を受付嬢に渡すリュー。


「先程も言った通り、再登録の場合も新人とまったく同じ扱いになります。本来は、前の経歴は考慮されないのですが……


…4年というと結構長いですね、一応、引き継げる情報がないか、以前の登録情報を調べてみますね~」


そう言うと、受付嬢は奥に行って魔道具の端末を弄りはじめた。


しかし、しばらくして戻ってきた受付嬢が言う。


「リュージーンという名での冒険者の記録はありませんね……どちらの街で登録されていたのですか?」


「ミムルという街だ、ガリーザ王国の。国は違うが、冒険者ギルドは国境関係なく情報を共有しているのだろう?」


「ああ、だからですね?」


「?」


「私の耳を見ていらっしゃったので……ガリーザ王国には獣人・亜人が少ないそうですね?」


すぐに視線を外したつもりであったがバレバレであったようだ。


「……あ! もしかして、ミムルって、あの、魔族に襲われて消滅したという噂のミムルですか?」


「ああ、そうだ……そのミムルだ」


「だとすると、その時に情報が失われてしまったのかも知れませんね……。リュージーンさんはその時の生き残りと言う事なんですか?」


「いや、襲われた時、俺は街を離れていたんだ」


「そうだったんですね……あ、すみません……、嫌な事を思い出させて」


「いや、大丈夫」


「記録も見つからないので、新規登録の新人と同じ扱いとなります、申し訳有りません……」


「いや、わざわざ手間を掛けさせてすまなかったな。どうせ、前の街でもFランクだったんだ」


「え、4年もやっていてFランク? って、すみません失礼な事を……」


「ああ、構わない、実はギルドマスターに嫌われていてな、昇格させてもらえなかったんだよ」


「ああ……時々聞く話ですね。このギルドは公平・公正、そのような不当な扱いはないですから安心してください! ただ……」


「ただ?」


「この街独自の制度なのですが、新人の方は、研修を受けてもらう事になっていますが、よろしいですか?」


「おお。ミムルでも初級冒険者のための学校のような制度をやっていたんだ。そこで講師もした事があるんだよ」


「講師をされるほどベテラン冒険者だったのですね。そういう方でも、全員研修を受けて頂く決まりになっているのです、申し訳ないのですが……」


「ああ、問題ないよ、もう一度勉強させてもらえるのはありがたい」


「…………はい、これで冒険者への登録は受付完了です。これがギルドカードです」


受付嬢はすぐに身分証明書ギルドカードを作って渡してくれた。


「通常、冒険者はFランクからのスタートですが、研修を卒業するまではGランクとなります。Gランクは街の中での活動のみ許可されます、街の外での依頼は受ける事ができませんのでご注意下さい。


研修を卒業するとFランクに認定され、街の外で活動できるようになります。


ただ、研修卒業までに早い人でも数週間、長い人だと一年以上かかる人もいるのですが、経験者の方ならすぐ卒業できると思います」


「試験でもあるのか?」


「試験をする事もありますが、決まっているわけではなく、教官が卒業と認めたら、と言う事になりますね。


研修を嫌って他の街で登録するという方もいらっしゃるんですが、初心者の冒険者が無理をしてすぐに亡くなってしまうケースが多いんです。


でも、当ギルドの研修を卒業した方達は、その後もほぼ全員が生き残って活躍されていますので! 是非、この街で研修を受ける事をお薦めいたします」


「ああ、大事な事だな」


「ご理解頂いてありがとうございます。ベテランの方でも、知らなかった事や改めて気付かされることなどがあるかも知れませんよ」


「そうだな。楽しみにしておくよ」


「では、早速明日から受講されますか? …そうですか、では朝8時にここに来てください。研修は裏の訓練場で行っています、他にも参加者がたくさんいらっしゃいますよ。では頑張って下さい」


笑顔の受付嬢に見送られながらカウンターを離れたリュー。


研修は明日からとなると、今日は暇である。なんとなく依頼ボードを眺めていると、声を掛けてくる男が居た。


「おう、おめえ、見ねぇ顔だな。新人か?」


「……ああ、さっき登録してきたところだ」


足先から頭までリューを眺めて冒険者は言う。


「登録したばかりじゃ、依頼クエストは受けられんだろうが。ってか大丈夫かぁ? おめえみてぇな貧弱な身体じゃ、クエスト以前に研修で落ちこぼれるんじゃねぇかぁ?」


「…お前には関係ない、放っといてくれるか?」


「なんだてめぇ、先輩が親切に言ってやってんのに、口の聞き方も知らねぇガキか?」


「親切? それは悪かったな、そうは聞こえなかったもんでな。それに、俺は再登録だ。それなりに経験はあるんで心配は無用だよ」


「なぁにぃ? 再登録~? 本当かぁ?」


見定めるように真顔でジロジロ見る男。


「ははん」


男はニヤッと笑った。


「見栄張って経験者だって嘘つく奴は多いんだよぉ。だが、実力もねぇのに嘘ついて粋がっても、後で泣きを見るだけだぞぉ?」



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


今日は暇だ、少しからかってやろうか


乞うご期待!



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