第27話 ダンジョン踏破
ボスモンスターを倒した事で、部屋の奥に、次の階層への階段が現れる。
ドラゴンの死体を亜空間に収納し、リューは先に進んだ。
階段を降りた部屋にはダンジョン脱出用の魔法陣があり、この部屋にはモンスターは入ってはこない。
その先はさらにいくつか階層があり、トロールやオーガ、ミノタウロスなど凶悪なモンスターが出てきた。ボスモンスターはその上位種や変異種など、高ランクの危険なモンスターばかりであった。
もちろん、どれだけ高ランクの危険な魔物が現れても、リューの前では魔石を抜き取られて即死するだけなのであったが。
(リューの力をもってすれば、肉弾戦で戦っても余裕で勝てるだろうが、魔石を抜き取ってしまうのは楽すぎてやめられないのであった。)
そしてついに最下層、ダンジョン全体のボスモンスターはヒュドラであった。
ヒュドラは毒竜とも言われる多頭竜のモンスターである。その毒は凶悪で神をも殺すと言われており、またとてつもない回復能力を持っており、首をひとつ切り落としてもすぐに再生してしまう。
そして、このヒュドラはドラゴンでありながら、知能が低いのか凶暴すぎるのか、おそらくその両方なのだろう、リュージーンにも従う事はなく、戦闘になった。
毒殺を避けるため、リュージーンにはあらゆる毒が無効とされているため、ヒュドラの凶悪な毒は特に問題はなかった。
これまでのボス戦同様、まずは魔石を抜き取ってみたが、なんとヒュドラはすぐに魔石を再生してしまった。(ある意味、魔石を何度も回収できる美味しい相手とも言えるかもしれないが。)
ヒュドラは一説によると、全ての首を同時に切り落せば死ぬと言われているらしいが、実際にはそれだけでは死なない。結局すべての首が再生してしまう。
それも、単に再生するだけでなく、切った首が二股に別れて再生し、首が増えてしまうのだ。そして、その再生の速度が異様に速い。一つ首を落として、もう一つ首を落とす間に、前に斬った首が再生してしまう。しかもその度に首が増える。首が増えれば、その口から吐き出される毒のブレスも増える事になる。しかも、その動きは巨体に似合わず、普通の人間ではついて行けないほど速いのである。
だが、リューには再生阻害の能力を持つ“魔剣フラガラッハ”がある。フラガラッハを手にしたリューは、一撃でヒュドラの首のひとつを切り落とす。並の鋼鉄製の剣ではヒュドラの硬い鱗は傷ひとつつかないが、フラガラッハの斬れ味は世界最強クラスである。
だが、確かに斬られた場所からは再生しないのであるが、残った他の首が、斬られた首をさらに根本に近い部分から食いちぎり、そこから首が2つ、再生してしまった。
なるほど、フラガラッハによる治癒しない傷について、そんな対処法があるのかと関心するリュー。なかなか厄介な相手である。
結局、リューの時間加速能力をフルに発揮させることとなった。リューが時間の流れの影響から逸脱していき、周囲の時間の流れが遅くなっていく。その能力が最高レベルまで発揮された時、時間は停止する。
停止した時間の中で、全ての首を切り落とした。回復阻害の剣ですべての首を同時に斬られたため、食いちぎって復活することはできないだろう。だが、毒竜は、今度は自分の爪を使って首を切り落とした。話が通じない相手だが、実は知能が高いのか?
リューは慌てて再度時間を止め、再生した首と爪がついている腕も切り落とした。一応念の為、後ろ足も切り落としておいた。
だが、時を動かすと、胴体だけになりながらも当然生きている。そして、ブレスを吐き出してきた。ブレスをどうやって吐くのか、その身体的構造はよく分からないが、首の断面からブレスが吹き出し、切断面を焼いた事で、再び首が再生する。
リューは再生した首を切り落とし、魔石も抜き取り、胴体もバラバラに切り刻む事で、やっと毒竜を倒す事に成功したのであった。
なかなか面倒な相手である。恐らく、普通の冒険者では、たとえAランクでも歯が立たないのではなかろうか。この世界に十数人しか居ないというSランクの冒険者なら可能かもしれないが……リューはSランクの者と会ったことがないのでなんとも言えないのであったが、Sランクと言えども苦戦は免れないのではないかと思えた。
現状では、このダンジョンを踏破する事は不可能に近いと言えるだろう。
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ダンジョンのボスを倒した後、空間把握で周囲を確認すると、奥の壁のそのまた奥に小さな部屋があるのが分かった。
入口はないので、壁を魔剣フラガラッハで切り裂くと、壁はひび割れ粉々に崩れていった。
中には台座があり、その上にメロン大の球体が半分台座に埋まった状態で置いてある。ダンジョンの核である。
この核を破壊するか持ち去ると、ダンジョンは死に、ただの洞窟となってしまう。
リューはダンジョンの核を手に取ると、亜空間に収納してしまった。
資源としてのダンジョンはなくなってしまうが、そもそも、領主による破壊命令も出ていたのであるから、何も問題ない。
素材はリューの亜空間収納の中に大量に入っている。それを小出しにしていくだけで、また当分は素材の流通に不自由はしないだろう。
この街の規模では、ドラゴンの素材は数匹買い取るだけで予算オーバーとなってしまう。しかし、リューの亜空間収納の中には、まだ百匹以上のドラゴンの素材、そしてダンジョンボスだったヒュドラの素材も保存されているのである。
ダンジョンでの狩りはできなくなるが、これから小出しに売っていくだけで、素材の流通には当分困らないであろう。
実は、最近の狩りとその素材の売却だけで、リューは一生働かなくとも暮らしていけるだけの大金を既に手にしていたのであった。
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リューは冒険者ギルドに戻り、ダンジョンを踏破した事と、ビッグ達「赤い流星」がダンジョンで死んだ事を報告した。
報告を聞いた職員が慌ててギルマスのダニエルを呼びに行き、騒ぎになった。
「リュー、お前まさか!ビッグ達を殺したんじゃないだろうな?!」
「酷いな、俺が置き去りにされたと言った時は、証拠がないと言って認めなかったのに、今度は証拠もなしに俺がやったと言うのか?」
「……っ、お前がやってないという証拠もない。」
「やってない証拠を出せって?どうやって?じゃあまずはギルマス自身がビッグ達を殺してない証拠を出してみせてくれないか?」
「…くそ、屁理屈をこねるな。」
ダニエルは諦めて執務室へ引っ込んでいった。
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次回予告
ざまぁ!ギルマス降格!
乞うご期待!
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