そして錬金術師へ、無限の先の到達点を。

おとも1895

前章 ー錬金術師へー

プロローグ 《人ならざる者》たちと

(ここは、どこ? どうして私はここにいるの?)


 

 

 黒髪の少女が、どこまでも真っ黒に塗りつぶされた空間を歩いていた。

 そんな彼女が、自信に問いかけて思い出す。



(そうだ、私は彼を探していたんだ)



 

 そこはどこなのかわからない。本人ですらわからないのだから。

 それが暗闇の中だからではない、ということを本人がよくわかっていた。




(人の単位で一年前に観測されたのは乱すもの……、一瞬過ぎて観測しにくかったけど間違いなくあれの力が発動していた)


 

 それで、彼女は考える。



(知る者の私。壊すもの、あるいは上に立つものと呼ばれている力の一端を持ち合わせているのは流起友野、……匂いだけなら早見守にも)


 

一般人には到底理解できないであろう単語をスラスラと。

 かつ、何か考えるような仕草をしながら。



(創造するものは残り香すら存在しない……と。まぁ、あれはこっちにはいないか)


 



 少女の目的は何なのか。はっきりさせよう。

 

 力の回収、あるいは力の収束だ。



(世界が運命の道レールから外れた。なんてわかりきってること。はるか昔に破壊神がそうした)


 

 語られない神話。

 語り継がれてはいけないくらいに悲惨な末路。



(でも、少しずつ、少しずつ。最悪のレールが近づいてきている)


 

 少女は考える。



(だから今度こそ、本当に道を壊さないと)



『……そのためには四柱の神の力の集結が必要、か。面白いことを考えるな、貴様は。』


(?!、誰。ここに何か用?)


 

 突然周囲に声が響き渡った。



『久しく見ていなかった神の雰囲気があったからこっちにやってきただけだ。誰という質問に対してはこう答えていれば分かるか?


 

《決定する者》、と』



(あなたが? じゃぁ今度はいったい何の姿をしているの? 全回行ったことを踏まえて私はまだあなたを許しているわけじゃない。言葉次第によっては……)



『殺す、か? 無理だよ貴様には』



 突然入り込んできたその声は、高笑いを抑えようとしているようだった。



『ましてやこんなところに閉じこもっている間はな。それに勘違いしないでおくれ。これは宣戦布告』



そして告げる。

あまりにも平和な、そして浮世離れした言葉を。




『物語の始まりにはちょうどいいと思わない?』




(物、語って?)


『そう、物語』



 肯定が一つ。

 


『あなたはずっと《錬金術師》を探している』



さながら、少女の考えを読んでいるかのような口ぶりで。

自身の心のうちを、否、その上部だけを定型文のように語る。



『そして私は《錬金術師》を殺したい。これが物語にならないなんてどうにかしてると思うな』



そこに、感情は介入しない。

むしろ、感情というものを感じるのならば不思議に思ったかもしれない。



『まぁ、目標を私は見つけたし、一歩リード、かな?』




(舐めないで、私だってもうそれくらいは見つけてる。まさかこんな過去に一度きりだったなんて考えもしなかったけど)



 予想外だ、とでもいうように黒髪の少女の方が答えた。




(……とりあえず絶対にあなたには負けない。ここは譲れない)


 

 

二つの声が暗闇の中で交差し、そして対立する。




『ハハハ、それでいい。……ああ、そういうことか』



 何か納得したような声がしたが、それを肯定するなんてことを黒髪の少女はしなかった。


『今日は絶好の日だ。彼を私たちの《交差世界クロスワールド》にいざなうには。たかが人間一人のためにもったいないくらいにはな___ジジッ』



 雑音が混ざってさらにそこに舌打ちも混ざる。



『ここへの干渉はここまでか。せいぜい死なないように頑張るんだな。この時代の人間はみんな脆いから』


 


 そういうと、もう一つの声は消えてしまった。

 恐らく逃げたわけではないだろう、と黒髪の少女は本能的に感じた。




(分かってる。おそらく今日が一番の日ってことくらい。この機会を逃すほど堕ちた覚えはない)


 


 一人の少年に大きな運命が宿ったのはこのときか、もしくは、この後のことだろう。その少年____言野原 進は、死なずしてこの世界を去ることになる。



 ただあとちょっと、平和なプロローグは嵐を押さえつけているのだった。



《あとがき》

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