第6話「現状」

 正気を失った人々の乗る列車の中で、無意識に瞬きをした次の瞬間。


 満員に人が乗っていたはずの、椅子も何もない粗悪な車両内には、いつの間にか誰もいなくなっていた。ガタン、ゴトンと列車が揺れる音の他には、もう、何も聞こえなくなった。


 意味の分からない呟きも。

 どこか生臭い鉄の臭いも。

 まるで夢だっかのように、消えてしまった。


 この時は、とうとう私も狂い始めて、幻覚でも見たのかと思ってた。けどこの不思議な世界―――『クレイドル』は私を優しく迎えてくれた。全てを吐き出して、泣きついてもいいと思える声で、世界だった。


「ようやく落ち着いてきたようだな」


 呆れたようなこの声も、今はどこか安心する。

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