得手不得手

 ラミッタが両手を広げて一回転すると、無数の火の玉が辺りに現れた。


 それらをヴィシソワに向かって飛ばしながら、低空飛行で距離を詰める。


(多分、昔の私だったら今のラミッタには負けていたな)


 マルクエンは空を飛べること以外にも、魔法が更に進化しているラミッタに感心した。


 ラミッタは自由に空を飛び、あらゆる方向からヴィシソワに斬りかかる。


 その合間にも魔法の炎、雷を飛ばし、翻弄しようとした。


「ふむ、良いでしょう」


 ヴィシソワの声で攻撃を止めるラミッタ。


「それでは、お互いに戦いを見て良かった点と改善点を上げてみましょうか」


 まずはマルクエンが話し出す。


「そうですね……。ラミッタは空を飛べるようになり、機動力が上がったのはもちろんですが。魔法も以前より強くなっていると思います」


「ふん、当然よ!」


 宿敵からの評価に照れ隠しをしつつ、胸を張るラミッタ。


「ただ、改善点を上げるとするならば、攻撃の一打一打が軽いですね。その分手数で勝負しているのは分かるのですが」


 痛い所を疲れてウッとなるラミッタ。


「宿敵は、まぁ力が強いのは分かるわ。速さも速くなっている」


「そ、そうか?」


 マルクエンは思わず照れた。


「だけど、あの光の刃を使った遠距離戦と距離の詰め方は甘いわね」


「そうだな……。魔法は使った事が無くてからっきしだ」


 二人の会話を聞き終えると、ヴィシソワが言う。


「お二人は、まさに強みも弱みも正反対。互いを師として教え合い、戦いで補い合えば良いでしょう」


「確かに……。おっしゃる通りです」


 マルクエンが言うと、ヴィシソワは二人に背を向けた。


「さて、私の出番はここまでです。明日、お二人で私と戦って頂きます」


「ご指導ありがとうございました」


 頭を下げるマルクエン。ヴィシソワが部屋の奥へと消えて行き、残された二人は特訓を始める。


「さてと、どうしたものかしらね」


「私に魔法の戦い方を教えてくれないか?」


 マルクエンの申し出にラミッタは頷いた。


「えぇ、宿敵は……。魔法の出し方はまだまだだけど、魔法を使った戦い方はそれなりね」


 元々戦いのセンスがあるマルクエンだったが、戦場でラミッタ以外にも魔法兵や魔剣士と戦っていたので、彼等の戦い方を真似てみたのだ。


「魔法を撃って同時に自分も距離を詰めるって基本の戦いは出来ているわ。ただ、出すタイミングや魔力の込めすぎが悪いところね」


「タイミングと、魔力の込め過ぎ……か?」


「えぇ、常に最大出力でやろうとするから疲れるのよ」


 ラミッタは右手の指を二本立てて説明する。


「アンタが魔力を使う場面は大きく分けて二つ。身体強化の為と光の刃を飛ばす時」


 マルクエンは元から筋力があるが、戦いの際は魔力を使った身体強化で力を何十倍にもしていた。

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