第14話 再びギルドへ

 朝ごはんを済ませ、少し休んでから今日の予定を考える。


 ベッドの上で本を読みながらごろごろしているアレルリアが仕事だったなら、ギルドでの仕事探しも話が早く、幾分か楽だったのだが、休みというなら仕方ない。


「ギルドの登録申請はもう通っているんだよな?」


「んー?そうだねぇ、昨日の夜には終わってたと思うよ」


「なんで思う、なんだ」


「だってー、ボクはあくまで窓口であって、そういう書類周りは事務さんの仕事だもん」


「そういうことね」


「もしかして今日ギルドいくかんじぃ?」


「いつまでも無職の穀潰しでいるわけにはいかないからな」


「いいんだよ? しばらく借りっぱなしでもー」


「それが一番嫌なんだよ」


「えー」


 借りを作るというのもそうだが、中身の年齢で言えばきっと俺のほうが年上だ。

 いつまでも年下の子の脛をかじっているわけにはいかない。

 その為にも、早く仕事を探して、自立しなければ……。


「まずは受付にいって、登録証を貰えばいいんだよな?」


「そだよー。それとね、昨日のうちに、レイちゃんのことは受付のみんなにはある程度共有はしてあるから心配しなくてもへーきだよぉ。記憶喪失だから、変なこと言っててもフォローしたげてねーって」


 にひにひと口角をあげあがらルリアが言う。

 ありがたいのだが、何か余計な事まで言ってはいないか不安になるのは何故だろうか。


「んじゃ、行ってくる」


「あ、待って待ってー。これ、貸してあげるー」


 早速家を出ようとする俺を、ベッドから慌ただしく起き上がってルリアが引き止める。

 そして、昨日俺に貸してくれたものとは別の、古びた焦げ茶色のショルダーバッグを胸元に突き出してくる。


「中に飲み物とぉ、銀貨一枚と、銅貨十枚位入れてるから、帰りに市場で服を買ってくるといいよー。あとぉ、このカバンはあげる。むかーし使ってたんだけど、今は使ってないやつだから。」


「昨日に引き続き、悪いな。助かる」


「貸してるだけだからぁ、出世払いでよろしくねぇ」


「耳を揃えて返させていただきます」


 俺は社交界の人がやるようなイメージの礼のポーズを取って見せると、それをみてルリアが『にはは』と笑った。




 ペリにもいってきますの挨拶をしてから、ギルドの方角へと歩いていく。


 今日も食堂の前では、昨日逃げられた少女が箒を持って店前を掃除している。

 また逃げられるかもしれないと思いつつも、一応今はご近所様であることには違いないと、一言だけ、なるべく爽やかに声をかける。


「おはようございます」

「っ……」


 少女は店の中へと消えていった。

 ……そんなに、俺は不審者顔なのだろうか。

 泣きたくなる気持ちを抑えつつ、改めて目的の方角へと向き直った。



 ギルドに着くと、昨日ほどでは無かったが、冒険者風の人が多く、相変わらず酒場の方では酒を昼間から引っ掛けている連中が騒いでいた。


 受付はあまり混んでいなかった為、近くのカウンターに向かい声をかける。


「あの、先日ルリアという方にギルドの登録申請をしていただいた、レイジ=クライという者ですが……」


「はい、クライ様ですね。登録証は既に完成しておりますので、お渡しいたしますね。少々お待ち下さい」


 そう言われて1分くらい待っていると、すぐに受け付けの人は戻ってきた。


「こちらがギルド登録証、つまり会員証になります。クライ様は、今のところ実績がありませんので、最低ランクのGランクの会員証となります。実績を積むことで、ランクがアップし、様々な依頼が受けられるようになったりと、特典が増えます。特典の詳細は、その時にお伝え致しますが、お気になるようでしたらいつでもお聞き下さいませ」


「いえ、今は大丈夫です」


「かしこまりました。また、会員証はGランクですと、1年ごとに更新が必要となりますが費用はかかりません。但し、紛失した場合は銅貨10枚にて再発行となりますので、お気をつけて下さい。それから、Gランクの場合ですと、1ヶ月の間に1度もギルドを通した仕事をしなかった場合、ギルド会員の資格が剥奪となりますので、その点もご注意下さいませ」


「なるほど……。どんなに少なくても、1度は何かしらの仕事を受けていれば問題ないというわけですね」


「その通りです。ランクが上がっていくにつれて、その期間が長くなる場合もございますが、これもその時になりましたらご説明させていただきます」


 ギルドに来るまでは、アイツが出勤していた方がと思っていたが、今はむしろ休みで良かったと感じていた。受付嬢はこんなにも話がスムーズに進むのかと少し感動する。


「分かりました。ご丁寧にありがとうございます」


「いえいえ、これが仕事ですから」


 受付嬢さんが、顔を少し右に傾けながら、満面の笑みを見せる。


 に煎じて飲ませてやりたい言葉だな……。

 そう思いながら、ギルド会員証を受け取った俺は、それをカバンにしまい込み、仕事が掲載されているであろう掲示板の前へと向かった。





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