73.配信休止=彼女は思わぬニュースに衝撃を受ける。
復活配信を終え、体調も完全に回復した頃。次の配信は何をしようかなと考え、準備に動いていた私の目に信じられない情報が飛び込んできた。
〝大手Vtuber事務所、あーるくらふと所属のタレント、漆黒ゆうぐれが活動休止!?原因は過去のトラブルか?噂では男の影も……?〟
「なにこの記事……漆黒ゆうぐれが活動休止って……一体、なんで……?」
意味の分からない……分かりたくない記事を前に私は呆然と呟く。
あの漆黒ゆうぐれが、最強Vtuberたる彼女が、過去のトラブルなんかで活動休止する筈がない。
こんなのはただのゴシップ記事……デマに決まっていると、ネットニュース、SNS、あらゆる媒体で漆黒ゆうぐれの名前を検索するが、憶測が飛び交い、とてもではないが、まともな情報を探す事はできなかった。
「こんな時はどうしたら……そうだ、直接白崎さんに連絡を取れば――――」
動揺しながらも、自分が連絡先を持っていた事にようやく気付き、慌てて電話を掛けるが、一向に出る気配はなく、電波が届かないか、電源が入っていないという電子音声だけが私の耳に響く。
っ電話が駄目って事はたぶん、その他の手段でも白崎さんと連絡を取る事は叶わない……こうなったら一か八か――――
現状、私には白崎さん本人以外に彼女の近況を知れる手段がない。そもそも、まだまだ駆け出しの個人Vtuberが大手事務所である〝あーるくらふと〟所属の漆黒ゆうぐれと接点があるのがおかしいのだ。
だから私の連絡が取れる範囲であーるくらふと関連の伝手もあるであろう人物の番号を呼び出し、電話を掛ける。
「――――オリィちゃん!ゆうぐれちゃんのニュースは見た!?」
数コールもしない内に目的の相手……ノーみりん先生が電話口に出て、開口一番、大きな声でそう聞いてくる。
「……その事でノーみりん先生に電話したんです。白崎さんに連絡しても繋がらなくて……先生ならもしかして何か知ってるんじゃないかと思って」
一縷の望みに掛けて問い返すけど、電話越しで一瞬、ノーみりん先生が言葉に詰まった事に気付き、駄目だった事を悟ってしまう。
「…………ごめん。私もさっきニュースを見て連絡を取ろうとしたんだけど駄目で……そしたらちょうどオリィちゃんから電話が掛かってきて、もしかしたらって思ったんだけど……やっぱりゆうぐれちゃんの反応はなかったんだね」
「…………ノーみりん先生はこのニュースに書かれてある事は本当だと思いますか?」
「……分からない。けど、あれだけ配信していたゆうぐれちゃんが最近ずっと休んでるのは確か……なにか事情があるのは間違いないと思う」
ずっと漆黒ゆうぐれの配信を追っていたわけじゃないけど、言われてみればここ最近、配信している姿を見ていない。それどころか、よくよく考えればコメント欄でも彼女を見かけない。
あれだけ私の……礼嬢オリィの配信に入り浸っていたにもかかわらず、だ。
配信や提出物が忙しいからだと思っていたけれど、あんな記事が出た以上、コメント欄に顔を出す事もできない程に追い詰められていた可能性だってあった。
「っノーみりん先生、何か他に連絡を取る方法は――――」
「オリィちゃんの気持ちは良く分かったよ。これから時間はある?」
奥歯を噛み、感情のままに言葉を吐き出しかけた私を止め、ノーみりん先生がそう尋ねてくる。
「……一応、夜に配信をする予定でしたけど、状況が状況なのでリィメンバーの皆様に謝ってお休みするつもりです」
「分かった。じゃあ、三十分後くらいに駅前で待ち合わせしよう」
「待ち合わせ……一体、どうするつもりですか?」
「……ゆうぐれちゃんと連絡が取れないなら確実に事情を知っているところ――――あーるくらふとの事務所に直接乗り込む!」
☆ ☆ ☆
73.配信休止をご覧くださり、誠にありがとうございます。
いつも通りに配信準備をしている最中、突如として飛び込んできたニュースに動揺する礼嬢オリィ。果たして彼女達はどうするのか……?
今後が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録とグッドボタン……もとい、フォローと評価の方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「……この時は本当に驚きましたわ。何の前触れもなくあんなニュースが飛び込んで飛び込んできたのですから」
「本当にそうだよねぇ……ゆうぐれちゃんは美人だけど、スキャンダルとは無縁だと思ってたから本当に驚いたよ」
「……本当なら内容について語るべきなんでしょうけど、あんまりお話するとネタバレになりますし」
「まあ、その辺りは上手くやるしかないんじゃないかな~本編が暗い分、ここで少しでも明るくしていこっ」
「……そうですわね。内容にも少し触れつつ、盛り上げる……頑張りますわ!」
「…………本当、オリィちゃんは真面目だねぇ」
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