68.お絵描き中=彼女は過去の夢から覚め、今と向き合う。


 ずっと長い夢を見ていた。私と彼女……白崎朝陽が出会い、過ごしてきた日々の記憶。今となってはもう懐かしさを感じる程に過去の出来事だ。


「…………あの頃は私も、あの子も、今と全然キャラが違ったなぁ」


 ベッドから身体を起こし、夢と現実の境界が曖昧なまま、静まり返った室内で一人呟く。


 たぶん、オリィちゃんのアーカイブを見た後、昔の事を思い出しながら横になったからあの頃の事を夢に見たんだと思う。


「……まあ、色々あったけど、なんだかんだで楽しかった……かな。あの頃のゆうぐれちゃん……ううん、朝陽ちゃんはちょっとアレではあったけど、可愛かったし」


 寝ぼけ眼を擦り、ぐ~っと伸びをしながら笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がる。どうやら外はもうそこそこに日が昇っているらしく、外からは人々の生活音が聞こえ始めていた。


「ん~……なんか昔の夢を見たおかげか、すっきりとした気分かも……よし、今日は朝から頑張ろうかな」


 歯を磨いて顔を洗い、お湯を沸かしてお茶を入れたところでもう一度伸びをし、気合十分に机へと向かう。


「……依頼されてた分は昨日の内に進めたから、並行してモデリングと動作チェックをして……うん、このペースなら今晩辺りに目処が立ちそう」


 請け負っていた依頼を終わらせつつ、少しずつ進めていたとある作業の方にも取り掛かり、一気に完成へと近づけていく。


ふふっ……これを知ったらあの子達も驚くだろうな……うん、今から楽しみかも。


 鼻歌交じりに作業を進め、お腹が空くまで集中してやり続けた結果、思いの外、夢中になってしまい、気付けば日が暮れ始めていた。


「うえっ……ちょっとやり過ぎちゃった。お腹も物凄く減ったし……ああ、そうだ。オリィちゃんにも連絡しないと…………」


 辺りが薄暗い事に気付いた私は慌てて立ち上がり、空腹を満たすよりも前に連絡する事を優先する。


 本当なら……というか、別に急ぎの連絡でもないし、それ自体を後回しにしても良かったのだけど、空腹よりも、オリィちゃんにを伝えたいという想いの方が勝った。


 そして連絡を終え、今度こそ空腹を満たすために、何があるかキッチンを物色するも、目ぼしいものはなく、作るのも面倒くさいという結論に至り、最終的に何かを頼もうと決めて、注文画面を開く。


「うーん、どうしようかな……定番のピザとかでもいいけど…………うん、やっぱりここは中華にしよっと」


 夢を見ていた影響か、無性に中華……それも餃子が食べたくなってニンニクたっぷりで美味しいお店を選んで注文したものの、後になって次の日、人と会う約束をしていた事を思い出して私は物凄く後悔する羽目になるのだった。







  ☆ ☆ ☆


68.お絵描き中をご覧くださり、誠にありがとうございます。


長い過去の夢から目覚めた彼女は改めて今と向き合い、大切な娘を巻き込んで進めるとある準備とは……?


この先が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録……もとい、フォローの方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!


「まさかの夢オチですの……あれ?でもそうなるとここでの会話は……」

「まあまあ、そんなメタ的なお話は置いておいて、ここは私のとある準備についてを……」

「……とある準備なんて勿体つけているけど、ようはママが――――」

「はーい、ちょっと黙ろうねゆうぐれちゃん」

「むぐぅ〜!?むぐぅ〜!?」

「……笑顔でゆうぐれ様を落とそうとするお母様……いつもより怖いですわ」

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