第17話

 宇留美の実母・桃代は言霊に長けた家系の出身だった。桃代の実母・菊代きくよは長崎県佐世保させぼ市の繁華街・京町にて路上占い師として活動、宣言通りの未来を幾人もの顧客に与えてきた。佐世保市は夫の生まれ故郷だった。

 娘である桃代自身は跡を継がなかったが、言葉の力を絵本に活かす道に進んだ。それ以来、桃代は絵本作家として生計を立てていた。

 宇留美の実父・青柳直広なおひろとは、桃代が作品を展示した佐世保市展会場にて出会った。直広はこれといって絵本に興味があるわけではなかった。芸術鑑賞は定期的な気分転換に過ぎなかった。いつもどおり気まぐれで出向いた美術館にて、偶然桃代の作品を見つけた。桃代は作品への反応を偵察に来ていた。直広は芸術論ができずとも、直感で桃代の柔らかい絵と言葉のコンビネーションが好きになった。言葉を失い作品を見入る姿が、桃代の歓喜となった。現場の学芸員が直広に紹介したことで、桃代との出会いを果たした。

 二人の交際は自然と結婚まで進み、子宝に恵まれた。

 宇門と宇留美の双子は、大人たちから祝福されて生を受けた。

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