正体不明の美少女
第11話 美少女×メイド服
間違いない。突然現れたこの美少女は、「学年の三大美少女」の一人のキラだ。
ただ、どうして会ったこともなかったキラが俺の紹介でここへ来たんだ……? ああ、もしかすると姫野が言っていた知り合いっていうのはキラのことだったのか。
「キラ……?」
深恋が首を傾げる。キラの噂を知らなかったのか。
「やあやあ歓迎するよ! さあ、入って」
汐姉のテンションが上がるのも無理はない。この場所には三大美少女のうち2人も揃っているんだから。
俺達は席に着いた。俺の目の前にはキラ。
まさか本当に実在するとは思わなかった。白い肌にキリッとした目元。笑顔はなく、まさにクールビューティと言った感じだ。
「改めて、私はこのメイドカフェの店長である黒木汐だ。お嬢さんはキラっていうのかな?」
「……はい」
キラはそう答えた。
「そうか。亮太の紹介で来たって言っていたけど、メイドとして働いてくれるってことでいいのか?」
「はい。メイドが好きなので」
キラは無表情のまま言った。その答えに汐姉はガタッと立ち上がった。
「そうかそうか! じゃあ早速、深恋とキラにはメイド服を試着してもらおうかな。大体は用意してあるから、どんなメイド服がいいか言ってごらんよ」
「わ、私はリボンとかが付いた可愛い感じのがいいです……」
「一番丈が長いもので」
2人は答えた。
「分かった。更衣室へ案内しよう」
そう言って汐姉が店の奥に入って行くと、2人も立ち上がって後に続いた。背を向ける間際、キラが俺にチラっと視線を向けたのが少し気になった。
10分ほどして、3人は戻ってきた。
「やっぱりすごく似合ってるなぁ! 亮太もそう思うだろ?」
汐姉は俺に顔を向けて満足そうに言った。
深恋は、黒より柔らかい印象を与える茶色と白のメイド服。首元の大きなリボンと膝上丈のふんわりと膨らんだスカートが深恋の可愛さをより引き立てている……というか! 可愛すぎて目のやり場に困るんですけど!
半袖のメイド服から伸びる細い腕も! 白いニーハイも! ちょっと恥ずかしそうにしてるその表情も! 萌え情報過多でキャパオーバーなんですけど!?
キラは、王道の白黒ロングメイド服。ほとんど装飾のないシンプルでいて上品なデザインが、キラの凛とした雰囲気とよく合っている……ってもちろんそれだけじゃなくて!
表情も相まってクールな印象なのに、肩回りの白くて大きなフリルがいい意味でのミスマッチ感を演出していて、ギャップ萌えみたいな!? おいおい可愛いかよ!
「亮太君……どう、ですか……?」
「亮太、感想は?」
そう言って2人は俺に一歩詰め寄る。今でさえ自分というキャラが崩壊しそうなのに、そんな凶悪な恰好でこれ以上近づかれたら、
「フンっ!」
俺は自らに
「ギャア!」
「亮太君!?」
「何やってるの?」
暗闇の中で深恋の悲鳴のような声とキラの呆れたような声が聞こえる。自分の目を犠牲にしても、己の理性だけは保つことが出来た。
「俺は他にもスカウトしないといけないから学校に戻るよ。それじゃあ」
手探りで出口を探して、何とかその場を脱出した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
店長さんが「必要な書類を持ってくる」と言って部屋を出て行って、その場には2人きりになった。私は隣の彼女に顔を向けた。
「あ、あの……姫野晶さん、ですよね?」
「なんだ、気づいてたんだ」
そう言って彼女は綺麗な黒髪を軽くかき上げた。
「だって、髪形しか変わっていませんし……」
モデルさんのような体型も、印象的な泣きボクロも、クールな話し方も、クラスで見る姫野さんと変わらない。
「このウィッグもすごくよく出来ていますね。とっても綺麗です」
くせっ毛でふわふわ広がる私の髪とは違って、艶やかで真っ直ぐな黒髪が羨ましい。吸い寄せられるように手を伸ばして、一束すくった。
「これは地毛。いつもの髪型の方がウィッグ」
「ひゃ!? す、すみません……!」
私はパッと手をひっこめた。
「別にいいよ。でも髪型だけなのに、私の友達は別人だと思ってるみたいだけどね」
姫野さんはお店の入り口に顔を向ける。亮太君はおかしなことをして、出て行ってしまった。
「亮太君には教えてあげないんですか?」
私の言葉に、姫野さんがこっちを向く。
「うん。面白いから教えてあげない。一ノ瀬さんも協力してくれる?」
そう言って人差し指を口元に立てて、いたずらっ子のように笑った。
「ふふっ、分かりました」
「その代わり、私も一ノ瀬さんの可愛いところは、学校の人には秘密にしておくよ」
私と姫野晶さん改めてキラさんは秘密のアルバイト仲間になりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます